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実家のトイレにいるお友達

実家のトイレ扉といえば、木目調になっているお宅が多いのではないだろうか。

かくいう私の実家も、薄い茶色の扉に木目の模様が並々と描かれている。

『実家のトイレにいるお友達』というタイトルをみて、お?心霊系の話か?とワクワクして覗きにきてくれた方には申し訳ないが、私の友達はオバケではない。

木目に浮き上がる顔(のようなもの)である。

トイレの扉に限らず、保健室の天井や学校の机などにも顔を見つけることはあるが、途方のない時間を過ごした実家のトイレがやはり1番愛着を感じるものだ。

主に辛い時、架空の顔を目でなぞって気をそらす。

「こんにちは」なんて頭の中で呟いて、自分がいかに追い詰められているかを察して冷や汗をかく。

さながら子供の頃、歯医者に行った時に持たされたアンパンマンのぬいぐるみのような役割だ。

実家を出て現在住んでいる家のトイレ扉には”お友達”がいない。模様がつるつるで、顔になりそうにもないのだ。

まぁ、大人になって想像力が欠如しただけかもしれないが。

しかし大人になったぶん、痛みのバリエーションも把握してきたし耐えられるようになってきた、と思う。

ただ、これからも「いっそのこと殺してくれ」と半狂乱になりながら”お友達”探しをするような状況に陥らないことを切に祈っている。

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