【ショートストーリー】私には分かります
——うわー、来たの?
「うるさい、話しかけるな」
——お天気良いから、お散歩してるの?
「聞こえなかったのかよ、気安く声かけるなよ」
——もうご飯、食べたの?
「余計なお世話だ」
——なんか、太ったんじゃないの?
「ほっといてくれ。さっきから質問ばっかだな、おまえ警察かよ」
すみません、わたし、犬の言葉分かるんですが、おばさん、あなた、めっちゃ嫌われてますよ、と教えてあげたいが、絶対にへんな人だと思われるので、やめておく。
——やっぱり、かっこいい名前がいいよね。
——うん、でもキラキラネームはやめようね。
「賢明な判断、感謝します」
すみません。わたし、お腹のなかの赤ちゃんの考えが分かるのですが、すごく喜んでいます。良かったですね、と祝福してあげたいが、信じてくれないと思うので、そっと見守ることにします。
——どうか、合格しますように。お願いいたします。
「お願いするのはいいのだが、住所・氏名ぐらいは教えてくれないと、何もできないんだけど」
すみません。わたし、神様の声が聞こえるのですが、お願いしているのは私の息子なので、代わりにお伝えします。住所は……。