あなたが守りたいものは何か
感想文「ハームリダクション実践ガイド」を読んで
今回は割と真面目な感じの話です。
※つむは専門家でもなんでもない一般人なのでこの記事は感想と私見の域を出ません。
こちら主に薬物、酒などで実生活に支障が出ている依存症患者向けにQOL向上を目指すための治療方針に関する本となります。
こういう本、好きなんですよね。
専門書のようなのですが、
自分自身に直結してはいなくとも、内容を読んでいくとかなり興味深い。
所々、得るものが多くありました。
長いので目次を付けてみています。
アルコール依存症は周囲に”普通”に存在している
つむはこれまでの人生で、アルコール依存症患者と見られる人々を多く見てきています。
毎日お酒を飲まないと一日が終わらない。
そう、つむの父や祖父の時代などは”男とはそういうもの”という風潮だったからです。
休肝日を取ることは物凄く偉いことのように言われていたのです。
彼方のお母さん、此方のおばさん、其方のお婆さん、みんなが夫の酒癖についてしばしば愚痴を吐露する。
特に私の生家は田舎なのも手伝って、それが割とスタンダードだったのですよね。
そして男の社会においては、むしろ酒を飲むのはカッコいいくらいの感じ。
つむは詳しいことは知りませんが、そんな雰囲気はヒシヒシと感じました。
酒に弱いと笑われる、なんて不思議な文化もあったとかなかったとか。
酒との付き合い方・新しい時代の到来
お酒を飲まない人が増えてきたのは、アルコールのアレルギーをお持ちの方や生まれつき極めて耐性の低い方が居ることが知れ渡り、
強引に飲ませることは危険として注意喚起が強くされるようになったからでしょうか。
お酒を飲まなければいけない圧力に辟易していた方、お酒を飲むと後々辛い思いをしていた人々の解放の時がやってきました。
これは本当にいい傾向だと思います。
アルコールを毎日摂取し耐性を獲得してしまうと、
酒量が増えて依存が進行していきます。
「飲み慣れれば強くなる」なんて言いますけど、依存症に移行していっているだけなんですよね。
沢山飲む人ほど当然依存リスクは高くなります。
ザルと言われる人は酔わないので水のように飲めてしまいますが、これは危険です。
それならば水を飲みましょう。
ザルのあなたにとっては水も酒もただの液体です!
コスパがいいですよ!
依存が進行するとかなり危険ですし、
依存してしまうとなかなかやめられません。
社会全体が人を壊すような危険な行為を奨励しているというのは非常に悪い。
同調圧力で飲みたくもない、旨くもない酒を頑張って飲んで病気になる方々を増やしてしまいます。
辛いだけだ!最悪だ!
二日酔いってお盆にビー玉を載せてコロコロ転がす感じに似ていると思いませんか?
私は割とそれだけで酔ってきます。
アルコール依存症患者は溢るる
アルコール依存症の人って、別に酒を脇に抱えてずっと飲む見るからにそう、という人たちだけではないんですよ。
酔っ払って酩酊するまで飲んでしまう。
酔っ払って誰かに迷惑をかけても毎日飲まずにはいられない。
だけど仕事は当然素面で行き、問題なく熟す。
私の子供の頃なんかは大なり小なりこんな話は彼方此方にあり、家族にも本人にも病識なんてなかったんですよね。
これ、依存症です。完全に依存症。
飲みニケーションなんて言葉もありましたね。
お酒を飲んでいい気分で話して絆を強める的な。
そう思う方も居たのではないでしょうか。
皆が皆、”お酒”が好きなわけではない。
この多様性が認められ、お酒が弱い人が無理して耐性をつけようとして依存症に罹るリスクを減らせたことは、
ここ15年程での社会の大きな進歩と言えるでしょう。
本題のハームリダクションについて
さて、前置きが長くなりましたが本題のハームリダクション。
これは「害を減らす」ということを目的とした治療方針です。
こちらはあらゆる依存性の対象と依存による行動に対して
どのように向き合うかというマインドセットと無理のない行動の抑制を行なっていきます。
こちらの本、本当に凡ゆる依存に対して有効な根本的な考え方と
周囲の誤解、そして依存症患者によく見られる性格特性についても書かれているのです。
依存症患者によく見られる性格特性
序盤でまず依存症に罹っている人のケースを紹介しています。
そこがまず興味深いものでした。
その状態になってしまう方というのは、元々が強い自立心と責任感を持った努力家である方が多いそうです。
彼らは決してダメな人たちなんかではない。
全くチャランポランな人々ではありません。
そして心に孤独感や人間関係のトラウマを持つことも多いです。
彼らは尊敬すべき優秀な性格特性や、実際に業績を持っていたりします。
強い自立心や責任感などによって、
孤独やトラウマに打ち勝つための努力として
自己治癒のために酒や薬を使用して飲み込まれていってしまうのです。
こういう方々は人に頼ることが物凄く下手だとも言えます。
人はそれぞれ苦しさや辛さを抱えているものですよね。
明るく笑い、談笑している相手が何も抱えていないということはそうそうあり得ず、
多かれ少なかれ嫌な事辛い事をなんとかかんとか右往左往しつつ乗り越えて生きていたりします。
しかし乗り越えることが出来るのは、友人や家族などの関わる人々から安心感を得る事ができるからというものです。
しかし、もし支えるものが何もない状態だというなら大変なことです。
1人で抱えるには人生というものは荷が重すぎる。
過剰なほどの責任が振ってくることすらあるのです。
人間関係にトラウマを持つ人々は他の人に開示して助け合うことに苦手意識を持っているために、
これを1人で背負う事を選択してしまう場合があります。
また、「人」への苦手意識により日常を孤独に過ごすよう選択しがちなので、
そもそも「人」がおらず人に頼る選択肢がなくなります。
そして自己治癒の方法として依存対象の何かを使用し、
気がつけばそれ無しにはいられなくなります。
依存の対象は身近なところでは酒や煙草ですが、他にもカフェイン錠剤、痛み止め、市販の咳止めなんかもありますね。
それと日本では珍しい方かと思いますが違法薬物も。
あとは窃盗、性交渉などの精神からくる依存も含まれます。
この辺は犯罪に発展する可能性が極めて高いので、対処は迅速に行うべきですね。
ちなみに仕事中毒の方はなんらかの依存症に罹る傾向が高いそうです。
ストレス過多の状態に陥りやすい為ですね。
また仕事って脳の報酬系に働きかけやすい、ゲーム性があるものなのですよね。
依存症は依存性物質が脳の報酬系に働きかけることにより起こります。
常に刺激を欲し、刺激なくしてはいられなくなってしまうのです。
なので定年後や介護、家庭の事情などにより仕事と切り離されてしまうと、
なんらかの依存症となってしまう方は結構いらっしゃるようです。
これは仕事中毒のために趣味や交友に興じる時間が余りにも足りなかったことも原因の一つです。
本来の目的を見つめる
この本の序盤では、依存常の方の「あなたが守りたいもの、実現したいことは何か」を明確にし、マインドセットを行っています。
必ず当初、なんらかの目的の実現のために依存対象を使用しようとしたはずなのです。
使用したくなる状況をはっきりとさせることで、苦手な状況がわかりやすくなります。
それから苦手な状況に対処するための代替案等を探すというわけです。
このハームリダクションという治療方針では、
乱暴に断酒!断薬!など言いません。
実際、依存症と言われるまで進行してしまう方は既に多量摂取を行なっています。
その多量摂取がノーマルである状態からいきなりやめてしまうことは、強い禁断症状を引き起こすため極めて危険なのです。
禁断症状を起こさぬように、
こういった依存性物質についての
減酒、減薬、そして適切な摂取の方法やタイミングを学びます。
だからこそ重要なのが「守りたいもの、実現したいことは何か」なのです。
守りたいもののために今まで頑張ってきた。
実現したいことのために力を注いだ。
そのために必要であった自己治癒のための依存対象。
既に依存症になってしまっていれば、
もはや依存対象や常に良くない体調を優先して、
当初の目的は後回しになってしまっているはずです。
なので原点となる自らの理想や目的をよくよく思い出し、
今後どうしていきたいのかを考えるようこの本は促しています。
それが悪影響を及ぼす依存対象と距離を置くための第一歩だからです。
罪悪感を感じないように
そして既に依存症ともなれば、依存していること自体に対して罪悪感を覚えています。
特に依存症の方々は元々がとても努力家で1人で様々なことを乗り越え、それだけにプライドだって持っています。
すると、もう耐え難いほどの罪悪感であったりします。
それなのにやめられないので、また罪悪感を深めて依存対象に逃げ、泥沼にハマっていきます。
本当は酒を飲もうが薬を飲もうが、そんなことは害がないレベルであれば問題ありません。
本人の健康的な生活を取り戻すことこそが第一なのです。
ですので、「害」自体に着目し、「罪悪感」を感じなくていいように持っていきます。
自分を責めたって辛いだけで良いことはありません。
周りの支援としては、責めることも幇助することもなくありのままを受け止めてセーフティラインを越えることがないよう見守る、といったところでしょうか。
自分を閉じ込める特性の改善
治療では害がないレベルでの使用を促すためにメンターを配し、カウンセリングを行うそうです。
その過程は過剰な努力や孤独に抱える傾向を和らげていくことも目的としています。
そして「周囲の人々との情的で健全な関係を構築すること」が出来るように育成していき、
酒や薬物の過剰使用に繋がるリスクを低減していくというわけです。
これって、病気とは診断されていないまでも、
きっかけさえあれば依存症になり得る性格傾向の方には必要なサポートですよね。
しかも結構みんなそんな性格だったりするという。
日本人とは難儀なものよ…
様々なものに対する社会の過剰な圧力は人の活力を奪ってしまう。
おわりに 依存症、メンタル不調を防止しよう
対岸の火事とだけ思わずに、
誰しもが自分の目的を今一度振り返り、
マインドセットすることは一つ、良いことだと思います。
「あなたの守りたいものは何ですか?」
もし「こんなはずではなかったのに」と思う時、
本当に守りたいものを再認識し、その実現のために何をするか、
そして長期的に成し遂げるためにはどのような行動方針が必要なのかを自分自身と相談しましょう。
そして助けが必要であれば、友人や家族、そして専門家に相談してみましょう。
助けが必要なサインは考えると「頭を抱える」「辛くなる」「出口がないように思える」などではないかと思います。
私はそんな感じになると人を頼ります。
そして気がつくと関係ない雑談をしています。
しかし、良い意見や体験談も聞けるかもしれません。
背負いすぎると人間、壊れてしまいますからね。
社会が望むほど、そんな強靭な人間もいないということ!
ハームリダクション実践ガイド、なかなかいい本でした。
ちょっと長くて真面目くさった説教くさいような記事になってしまいましたが、最後まで読んでくださったことに感謝!
共に病気とは縁がない人生を歩むため、ゆるく楽しく生きましょう。
★今日のラッキーカラーは🩷です
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