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記憶力の良い男(妄想の世界)【音声と文章】

山田ゆり
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タカシは記憶力がいいとまわりから評価されている。
いつ誰がどのような会話をしたかを正確に覚えているからだ。

人は昨日のことを半分は忘れ、数日経つとほとんど忘れてしまう。
しかし、それに反してタカシはほぼ、全てを記憶することができるのである。

タカシのIQが特に高いわけではない。
実は、人には言えない秘密兵器をタカシは身につけている。

それは人との会話を瞬時に録音できる装置だ。



タカシは小さい頃からモノを分解するのが好きだった。
おもちゃの自動車、ラジオ、時計、使わなくなったPC、壊れたTVなど、ねじを回して中の構造を見るのが楽しくてしょうがない少年だった。

それが高じて、物事の成り立ちが何となく分かるようになってきて、今度は自分で色々なものを作ってみるようになった。
それは父の影響を強く受けていた。


タカシの父は科学技術者で家の中に実験室を構えている。
幼いタカシが「こういうものがあったらな」と提案したものをこれまで作ってくれた。

そんな父を真似てタカシも父と肩を並べて実験室にこもるようになった。



最新の装置は「キキマウス」だ。
瞬時に録音してそれを何度も再生して聞くことができる。
それは奥歯に設置しているから誰からも気づかれない。
舌と目の瞬きの回数で録音・再生・削除ができる。

制作過程では試行錯誤が繰り返された。
まずは完全防水であることに苦戦した。
そして、食べている時に突然誤作動を起こしたり、咀嚼音の方が会話より音量が大きくて聞こえずらかったりした。
その後、録音中は咀嚼音を拾わないように改良された。



その音声を聴く時は骨伝導で耳に届く。耳に特別な装置を付けずにできるから、他人からは何かを聞いているようには見えない。
録音されている音声を数秒遅れてそのまま話すこともできる優れものだ。

今は音だけの処理だが、ゆくゆくは録画できるようにしたいとタカシの夢は広がる。



周りに知られずに録音・録画・再生できるようになったら、プライバシーはどうなるのだろうかとタカシは考えないわけではないが、しかし、今は自分の研究を追求したいという欲望の方が理性を超えていた。


タカシは今日もキキマウスの開発に没頭している。













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記憶力の良い男(妄想の世界)

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