ヨウコは、手間暇かけて、立派な関数を駆使して作ったExcelの表を、生データのままの状態で渡すのが嫌だった。

それは思っているより稚拙な関数を使っているとばれるのが嫌だから。

そして、費やした時間をその人に奪われてしまう感覚がするからでもあった。


だから相手が元データをそのまま欲しいと言ってこない限り、ＰＤＦに変換して表をお渡ししていた。



ある日、表作成で困っていることを尊敬する先輩に相談したら、
「じゃぁ、こんなのあるから、参考にどうぞ。」と
当たり前のように生データを下さった。


「えっ！貴重なお時間を使われて作られた貴重な関数のデータを簡単に人に与えて、よろしいんですか？」

「どうってことないわよ。それは就業中に作ったものなんだから。つまり、自分が独り占めするようなものではないから。

それであなたの仕事が捗るんだったら、うれしいことだわ。」

私は頭を打たれたような感じがした。

一生懸命作ったデータは誰にも渡さないと頑なに握りしめている自分が、どんなに小さい人間か、その時分かった。




その後、同僚や部下のために必要であれば自分の作ったExcelデータを気軽にお渡しするようにした。

すると、相手からも別の例をいただく機会が多くなり、自分が思いつかなかった使い方を知ることが多くなり、以前にも増して表作成の技術が向上していった。


欲しいと言って握っていては手には入らない。

欲しいなら今握っているその手を開こう。
手放したら入ってくる。

欲しいなら手放そう。




note毎日連続投稿1900日をコミット中!　
1882日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む。
どちらでも数分で楽しめます。#ad

ギブ＆ギブ

#６６日ライラン