余命宣告された弟【音声と文章】
山田ゆり
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※途中、咳が出てすみません。
※今回はこちらの続きです。
↓
https://note.com/tukuda/n/n3c0436897708?from=notice
「検査の結果、緊急入院することになりました。ご本人には連絡済みです。病状の説明をしますので、ご両親、こちらに来てください。」
地震などの緊急速報を話されているアナウンサーのような、少し慌てた感じで大学病院の先生はおっしゃった。
弟が入院?
それも緊急に?
何それ?
のり子は日時と場所をお聞きして電話を切った。
最近、眠れないと弟は言っていた。
我慢強い弟が弱音を吐くくらい身体に異変が起こっているのだろうとは想像していたが、緊急に入院だなんて。
それを両親に話をしているうちに弟が家に帰ってきた。
すぐに入院してくださいとの電話が会社に入ったとのことだった。
弟は自分の部屋に行き、入院の準備をした。
普段、遠征試合などで宿泊は慣れていたから大きなナイキのスポーツバッグに必要なものを入れてそして家を出ていった。
突然のことである。本当はもっとじっくり吟味して持ち物を確認したかっただろうとのり子は思った。
しかし、さすが弟だと感心した。
急なことが起きても慌てず人に頼らず自分で全て準備した。
ここで愚痴の一つも言いたいところだが、弟は自分に何が起こっているかを冷静に見つめ、その為に今自分が何をすべきかを判断し、ただそれをしているだけだった。
年下ではあるが、そういう弟の内面をのり子は尊敬していた。
弟を尊敬しているなんておかしいかもしれないが、人づきあいが良くて友達が多く、会社でも皆さんから慕われていて、弟はのり子が持っていないものをすべて持っている人だった。
それは天から贈られたものではなく、これまでの人生で弟が努力して手に入れてきたものだと知っているからである。
弟は自分で荷造りしたスポーツバックを持ち「じゃぁな」と言って我が家の玄関から出ていった。
弟が我が家にいるのはそれが最後だとはその時、誰も思ってもみなかった。
数時間後に大学病院へ両親とのり子は出かけた。
最終学歴が尋常小学校の両親に、大学病院の先生がおっしゃることを理解できないかもしれないからお前も付いてきてほしいと言われたからだ。
大学病院へ着き、まずは弟の病室を訪れた。
弟は6人部屋の入り口に一番近いところにいた。
弟は腕に点滴をして読書をしていた。弟らしいとのり子は微笑んだ。
やがて医師がやってきて両親とのり子は別室で医師の話をお聞きすることになった。
「息子さん(弟)の状態は極めて危険な状態です。今、自分で歩いているのが奇跡としか思えないほどです。」
T部長がおっしゃった。
えっ!危険な状態ってどういうこと?
両親ものり子も、先生のおっしゃることが分からなかった。
隣のN医師が話を続けた。
「息子さん(弟)は、○○(病名)です。そして病状にはいろいろな段階がありますが、息子さんは既に最後の段階に来ています。」とおっしゃった。
その病名はのり子でも知っている、あまりにも有名な病名である。
テレビドラマでもヒロインがその病気にかかり最期は亡くなるというのが定番の病気だ。
その病気は「不治の病」と当時はされていた。
丁度一年前に、有名な女優さんがその病気にかかり、お亡くなりになっていたのだ。
まだ結婚してそれほど経っていない若い女優さんだった。
のり子は最初、医師のおっしゃることが理解できなかった。
だからのり子は医師に質問した。
「おっしゃっている意味が分かりません。弟はあんなに元気なんですよ。今日だって自分の車を運転してここまで来たんです。何かの間違いではないでしょうか。」
するとT部長は
「そうなんです。このような最悪の状態になっているのに歩いているなんて奇跡としか思えません。しかし、検査の数値を見ると極めて危険な状態です。
余命は1か月、長くみても3か月です。」と話された。
はぁ?
余命?
なんのこと?
まだ27歳の弟に「余命」という言葉は、全く無縁のものだったからのり子も両親も、医師のおっしゃることが理解できなかった。
「余命とは、あとどのくらい生きられるかということでしょうか。
あんなに元気なのに、弟は死んでしまうということでしょうか?」
のり子は医師に食って掛かった。
27歳の野球バカの弟が死ぬなんて信じられない。
医師に質問しながら、その自分の言葉を耳で聞き、それを頭の中で反芻し、心の中で言葉をかみ砕いた。
「そうです。今すぐ亡くなってもおかしくない状態なのです。」
医師はそうおっしゃった。
「本当に、本当にですか。間違いではないのでしょうか。」
「はい、残念ながら」
N医師の隣に座っていた女性の医師はずっとうつむいたままだった。
T部長、N医師、佐々木医師。
3人の医師に向かってもう一度のり子は質問した。
「弟はあとどれくらい生きられるのですか?」
「あと1か月、長くて3か月です。」
何度聞いても答えは同じだった。
「長くてあと3か月」
両親ものり子も、その言葉を受け入れるのに時間がかかった。
長くなりましたので続きは次回にいたします。
※note毎日連続投稿1900日をコミット中!
1813日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む。
どちらでも数分で楽しめます。#ad
~余命宣告され弟~
ネガティブな過去を洗い流す
※今回はこちらの続きです。
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https://note.com/tukuda/n/n3c0436897708?from=notice
「検査の結果、緊急入院することになりました。ご本人には連絡済みです。病状の説明をしますので、ご両親、こちらに来てください。」
地震などの緊急速報を話されているアナウンサーのような、少し慌てた感じで大学病院の先生はおっしゃった。
弟が入院?
それも緊急に?
何それ?
のり子は日時と場所をお聞きして電話を切った。
最近、眠れないと弟は言っていた。
我慢強い弟が弱音を吐くくらい身体に異変が起こっているのだろうとは想像していたが、緊急に入院だなんて。
それを両親に話をしているうちに弟が家に帰ってきた。
すぐに入院してくださいとの電話が会社に入ったとのことだった。
弟は自分の部屋に行き、入院の準備をした。
普段、遠征試合などで宿泊は慣れていたから大きなナイキのスポーツバッグに必要なものを入れてそして家を出ていった。
突然のことである。本当はもっとじっくり吟味して持ち物を確認したかっただろうとのり子は思った。
しかし、さすが弟だと感心した。
急なことが起きても慌てず人に頼らず自分で全て準備した。
ここで愚痴の一つも言いたいところだが、弟は自分に何が起こっているかを冷静に見つめ、その為に今自分が何をすべきかを判断し、ただそれをしているだけだった。
年下ではあるが、そういう弟の内面をのり子は尊敬していた。
弟を尊敬しているなんておかしいかもしれないが、人づきあいが良くて友達が多く、会社でも皆さんから慕われていて、弟はのり子が持っていないものをすべて持っている人だった。
それは天から贈られたものではなく、これまでの人生で弟が努力して手に入れてきたものだと知っているからである。
弟は自分で荷造りしたスポーツバックを持ち「じゃぁな」と言って我が家の玄関から出ていった。
弟が我が家にいるのはそれが最後だとはその時、誰も思ってもみなかった。
数時間後に大学病院へ両親とのり子は出かけた。
最終学歴が尋常小学校の両親に、大学病院の先生がおっしゃることを理解できないかもしれないからお前も付いてきてほしいと言われたからだ。
大学病院へ着き、まずは弟の病室を訪れた。
弟は6人部屋の入り口に一番近いところにいた。
弟は腕に点滴をして読書をしていた。弟らしいとのり子は微笑んだ。
やがて医師がやってきて両親とのり子は別室で医師の話をお聞きすることになった。
「息子さん(弟)の状態は極めて危険な状態です。今、自分で歩いているのが奇跡としか思えないほどです。」
T部長がおっしゃった。
えっ!危険な状態ってどういうこと?
両親ものり子も、先生のおっしゃることが分からなかった。
隣のN医師が話を続けた。
「息子さん(弟)は、○○(病名)です。そして病状にはいろいろな段階がありますが、息子さんは既に最後の段階に来ています。」とおっしゃった。
その病名はのり子でも知っている、あまりにも有名な病名である。
テレビドラマでもヒロインがその病気にかかり最期は亡くなるというのが定番の病気だ。
その病気は「不治の病」と当時はされていた。
丁度一年前に、有名な女優さんがその病気にかかり、お亡くなりになっていたのだ。
まだ結婚してそれほど経っていない若い女優さんだった。
のり子は最初、医師のおっしゃることが理解できなかった。
だからのり子は医師に質問した。
「おっしゃっている意味が分かりません。弟はあんなに元気なんですよ。今日だって自分の車を運転してここまで来たんです。何かの間違いではないでしょうか。」
するとT部長は
「そうなんです。このような最悪の状態になっているのに歩いているなんて奇跡としか思えません。しかし、検査の数値を見ると極めて危険な状態です。
余命は1か月、長くみても3か月です。」と話された。
はぁ?
余命?
なんのこと?
まだ27歳の弟に「余命」という言葉は、全く無縁のものだったからのり子も両親も、医師のおっしゃることが理解できなかった。
「余命とは、あとどのくらい生きられるかということでしょうか。
あんなに元気なのに、弟は死んでしまうということでしょうか?」
のり子は医師に食って掛かった。
27歳の野球バカの弟が死ぬなんて信じられない。
医師に質問しながら、その自分の言葉を耳で聞き、それを頭の中で反芻し、心の中で言葉をかみ砕いた。
「そうです。今すぐ亡くなってもおかしくない状態なのです。」
医師はそうおっしゃった。
「本当に、本当にですか。間違いではないのでしょうか。」
「はい、残念ながら」
N医師の隣に座っていた女性の医師はずっとうつむいたままだった。
T部長、N医師、佐々木医師。
3人の医師に向かってもう一度のり子は質問した。
「弟はあとどれくらい生きられるのですか?」
「あと1か月、長くて3か月です。」
何度聞いても答えは同じだった。
「長くてあと3か月」
両親ものり子も、その言葉を受け入れるのに時間がかかった。
長くなりましたので続きは次回にいたします。
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1813日目。
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