冬はワンちゃんをどこで飼ってる?(ショートショート)【音声と文章】
山田ゆり
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※note毎日連続投稿1800日をコミット中! 1706日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む。どちらでも数分で楽しめます。#ad
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
冬はワンちゃんをどこで飼ってる?(ショートショート)
をお伝えいたします。
「あ、ヤバい!」
けい子が雪道で滑りそうになった。
反射的に隣の恵美子の腕を掴もうとしたが、すんでのところで届かず、けい子の手が宙を舞う。
恵美子は瞬間的に腰に力を入れてけい子の腕を掴みけい子は転ばずに済んだ。
普段は靴底の凸凹が深い、実用的なブーツをはいているのだが、今日は初詣だからちょっとだけおめかしをしていて、それに合うヒールのあるブーツを履いていた。
「あははははー」
二人は奥歯が見えるくらい大きく口をあけて笑った。
二人とも白い歯が印象的だ。
ここは笑ってごまかすのが一番。
シーンとしていたらかえって恥ずかしいから。
歩くたびに白い息が漏れる。
手袋を持ってくれば良かったと反省しながらふたりは歩いていた。
あるお宅の前を通ったら、そこには透明なボードで作られた畳1枚くらいのスペースの犬小屋があった。
それはまるで、ペットショップで犬を見せているのを真似ているようだった。
そこにハンドタオルほどの小さな毛布をお腹のあたりに置いて丸まって寝ている犬がいた。毛が少ない品種で見るからに寒そうだった。
今、雪は降っていないがしかし、道路にも家の塀にもお隣との堺の垣根にも雪が積もっていた。
「もうー!何考えてんだかこの家の人は!」
けい子は怒り出した。
「どうして雪が積もっている真冬に、ワンちゃんを外に置いておくの!この季節、凍傷寸前のワンちゃんを連れてくるお客さんが必ず数人、あるんだよね。ばっかじゃない?冬場は寒いんだから家の中で飼えよ!」
動物病院に勤めるけい子は早口でまくし立てた。
怒りが抑えられないようだった。
「そうだよね。」
恵美子は大きく頷いた。
恵美子は犬を飼ったことは無い。
でも、お母さんが子どもの頃に犬を飼っていた話を聞いたことがある。
昭和40年代の頃は、犬を家の中で飼う家庭は少なかった。だから通常は外で飼うのが常識だった。
しかし、雪が1m以上降り積もる冬になると大きな玄関の中で飼っていたそうだ。
お母さんが小さい頃は藁ぶき屋根の大きな家に住んでいた。
そして、土間の外戸口と中戸口があり、それぞれ6畳くらいの広さがあった。
冬になると犬小屋は外戸口に持って来てそこで育てていた。
そこに家族の使い古しの毛布や田んぼから出た藁をたっぷり敷いて飼っていたと聞いたことがある。
藁は見た目以上に暖かいそうだ。
動物だって家族の一員だという考えだから。
今目の前に見える犬は良く見ると小刻みに震えていた。
可愛そう。
ここのお宅は何を考えているのだろうか。
家の前にペットショップのようなコーナーを作って他人に見せる余力があるのなら、もっと犬を労わってあげたらいいのに。
これは虐待にしか見えない。
そのお宅の垣根を隔てたお隣は小さな損害保険会社だった。
その窓には大きく
「ペット保険」と書かれているのが皮肉に思えた。
今回は
冬はワンちゃんをどこで飼ってる?(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。
私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+
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おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
冬はワンちゃんをどこで飼ってる?(ショートショート)
をお伝えいたします。
「あ、ヤバい!」
けい子が雪道で滑りそうになった。
反射的に隣の恵美子の腕を掴もうとしたが、すんでのところで届かず、けい子の手が宙を舞う。
恵美子は瞬間的に腰に力を入れてけい子の腕を掴みけい子は転ばずに済んだ。
普段は靴底の凸凹が深い、実用的なブーツをはいているのだが、今日は初詣だからちょっとだけおめかしをしていて、それに合うヒールのあるブーツを履いていた。
「あははははー」
二人は奥歯が見えるくらい大きく口をあけて笑った。
二人とも白い歯が印象的だ。
ここは笑ってごまかすのが一番。
シーンとしていたらかえって恥ずかしいから。
歩くたびに白い息が漏れる。
手袋を持ってくれば良かったと反省しながらふたりは歩いていた。
あるお宅の前を通ったら、そこには透明なボードで作られた畳1枚くらいのスペースの犬小屋があった。
それはまるで、ペットショップで犬を見せているのを真似ているようだった。
そこにハンドタオルほどの小さな毛布をお腹のあたりに置いて丸まって寝ている犬がいた。毛が少ない品種で見るからに寒そうだった。
今、雪は降っていないがしかし、道路にも家の塀にもお隣との堺の垣根にも雪が積もっていた。
「もうー!何考えてんだかこの家の人は!」
けい子は怒り出した。
「どうして雪が積もっている真冬に、ワンちゃんを外に置いておくの!この季節、凍傷寸前のワンちゃんを連れてくるお客さんが必ず数人、あるんだよね。ばっかじゃない?冬場は寒いんだから家の中で飼えよ!」
動物病院に勤めるけい子は早口でまくし立てた。
怒りが抑えられないようだった。
「そうだよね。」
恵美子は大きく頷いた。
恵美子は犬を飼ったことは無い。
でも、お母さんが子どもの頃に犬を飼っていた話を聞いたことがある。
昭和40年代の頃は、犬を家の中で飼う家庭は少なかった。だから通常は外で飼うのが常識だった。
しかし、雪が1m以上降り積もる冬になると大きな玄関の中で飼っていたそうだ。
お母さんが小さい頃は藁ぶき屋根の大きな家に住んでいた。
そして、土間の外戸口と中戸口があり、それぞれ6畳くらいの広さがあった。
冬になると犬小屋は外戸口に持って来てそこで育てていた。
そこに家族の使い古しの毛布や田んぼから出た藁をたっぷり敷いて飼っていたと聞いたことがある。
藁は見た目以上に暖かいそうだ。
動物だって家族の一員だという考えだから。
今目の前に見える犬は良く見ると小刻みに震えていた。
可愛そう。
ここのお宅は何を考えているのだろうか。
家の前にペットショップのようなコーナーを作って他人に見せる余力があるのなら、もっと犬を労わってあげたらいいのに。
これは虐待にしか見えない。
そのお宅の垣根を隔てたお隣は小さな損害保険会社だった。
その窓には大きく
「ペット保険」と書かれているのが皮肉に思えた。
今回は
冬はワンちゃんをどこで飼ってる?(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
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