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ショートショート

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「こうだったらいいな」「ああなりたいなぁ」「もしもこうだったら怖いなぁ」たくさんの「もしも」の世界です。
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すべてお見通し(ショートショート)【音声と文章】

※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1572日目。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも短時間で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は すべてお見通し(ショートショート) をお伝えいたします。 角2の茶封筒を抱えながら私は社長室へ入った。 PCの電源を入れ今日の状況を見ようとした。 「社長、おはようございます!」 事務のけい子がドアをノックし勢いよく入ってきた。そして湯飲み茶わんを静かに置いた。 今日はやけに張り切っているな。 「社長、予てからの書類がやっとできました。赤い付箋の箇所に法人の実印をお願いいたします。」 けい子が深々とお辞儀をして社長室を出て行った。 そうか、それがあったな。 私はポケットから鍵を出し机の引き出しを開けた。 その中から金庫の鍵を出し、自分の胸辺りまでの高さの金庫を開けた。 中には社判と法人の実印、銀行印が収められている印箱があった。 私はそれを取り出し、捺印マットを使いながら法人の実印を押していった。 30か所くらいはあっただろうか。 社長は印鑑を金庫にしまって内線でけい子を呼んだ。 「これ、終わったから。後はないか?私はこれから隣の市の〇〇銀行に行きます。今日はあと、帰ってこないから。」 「はい、かしこまりました!お気をつけて。」 けい子は元気に答えた。 ちょろいものだ。 俺を尊敬しているといつか言ってたな。 彼女はまっすぐで、人を疑う事を知らない世間知らずだ。 だから、私はやりやすい。 おっと、急がなくては。 ここと、ここを印刷しよう。 社長室のPCは事務所の複合機と繋がっている。 複合機がプリントしだしてそれと同時に社長が複合機に近づいてきた場合、誰も複合機には近寄らない。なるべくそちらを見ないようにしている。 それは、資金繰り表や人事関係をプリントアウトすることがあるから周りの皆さんは複合機に近寄らないように気を使っている。 出てくる紙を引っ張るように取り出し私は封筒に入れた。 これでよし。 時間は大丈夫だ。さぁ、出かけよう。 私はPCの電源を落とし、今プリントした書類が入った封筒を脇に抱えて社長室を出ようとした。すると経理部長が近寄ってきた。 「社長、お出かけですか?A商事様がお越しになるのは明日の朝10時です。よろしくお願いいたします。」 彼女はそう言ってニヤリとした。 こいつは気を付けなければいけない。 気が利いて全てそつなくできる。その笑顔の下に何を考えているのか分からないもう一つの顔があるやつだ。 「あぁ、分かっている。じゃぁ。」 私は軽く右手を上げ会社を出た。 経理部長はその後ろ姿を見送ってから複合機に近づいた。 そして、画面をタッチしてある書類を出力した。 それはプリント履歴である。 これは彼女にだけ許される操作だった。 「やっぱり」 その履歴の最後は 競馬情報のプリントが続いていた。 今日も社長は銀行に寄るのは口実であり、その後ほぼ一日を競馬場で過ごされるのか。 誰にもバレていないと社長は思われているが残念でした。 私には全てお見通しなのだから。 新聞と封筒を大事に抱えて出ていくときはほとんど、馬か船か玉。 そして予想外に早く戻られた時は負けた時。 すべてお見通しなのだ。 今回は すべてお見通し(ショートショート) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

自分を「駄目な人間」と言っているのは他人ではない(ショートショート)【音声と文章】

※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1575日目。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも短時間で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は 自分を「駄目な人間」と言っているのは他人ではない(ショートショート) をお伝えいたします。 「お母さん、〇〇叔母ちゃんに対して、 あんなに自分の事、悪く言う必要ないよ」 のり子は娘に言われた。 最初、その言葉の意味がよく分からなかった。 自分では普通に姉に接しているつもりだから。 「お母さんは叔母ちゃんに対して自分をへりくだることで相手に対して敬意を表しているけど、そのへりくだる程度が強すぎると思う。 お母さんはそんなに自分を謙遜する必要はないよ。 叔母ちゃんは確かにいい人だけれど、お母さんは叔母ちゃんにないたくさんのいいものを持っているんだから。 もっと、普通に叔母ちゃんに接した方がいいと思う。二人の会話を聞いていると少しイラっとしたから。」 のり子は姉が好きだし尊敬している。 それを素直に表現しているつもりだったが、 娘に指摘されて自分の行いを振り返ってみると 姉を褒める時、姉の良いところを褒めるよりも自分のことを悪く言って、つまり自分を卑下することに注力していたと気づいた。 ああ、そうか。 知らず知らずの内に自分を「駄目な人」と言いふらしているようなものだ。 本当はそうではないのについ、誇張して自分を下げてしまっている。 自分にはそんな潜在意識があったのか。 そして、必要以上にへりくだるのり子を見る娘の気持ちを思うと 「これはいけない。私、改めよう」 のり子はあまりにも自分を卑下していると内省した。 自分にはもっといいところがあるのに。 思ってもいないへりくだった言葉で 自分を「駄目な人」と洗脳していた。 自分を陥れるのは他人ではなく自分だ。 言葉には気を付けよう。 潜在意識の改革を意識しよう。 今回は 自分を「駄目な人間」と言っているのは他人ではない(ショートショート) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

AIが仕事を奪っているのではない (ショートショート)【音声と文章】

※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1576日目。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも短時間で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は AIが仕事を奪っているのではない (ショートショート) をお伝えいたします。 「どうやら寝不足のようだね。」 健康管理部長に突然、肩を叩かれた。 またやってしまった。 勤務先は健康管理を宣言している会社で、従業員一人一人に腕時計型の機器が配布された。 それは体温・心拍数・血圧・歩数などが測れ、医療機器ほど正確ではなくてもある程度の目安にはなっていた。 この機器にスクワットの回数を計れるように俺は設定している。 トイレに行くたびにスクワットを10回するようになってから、ふくらはぎやももの辺りに筋肉がついてきたような気がして密かに喜んでいる。 この機器、そんな良い面もあるが、自分にとっては不都合な点もある。 それはこのシステムを統括している画面が健康管理部長のデスクにあり、ひとりひとりの状態がリアルタイムで映し出されるのだ。 そして、その人が眠くなるとアラームが点灯するようになっている。 その時、昨夜どのくらい寝たのかも計測される。 その居眠りアラームは4回までは許容範囲とされていた。 昨夜はネットをブラブラしていて面白い動画をみつけ、気づいたらあっという間に日付が変わっていた。 慌てて寝たが、数時間後には眠い目をこすりながら出勤した。 その内、会社の給料だけでは暮らしていけなくなるかもしれない。 会社の業績が思わしくないからということで二年連続、昇給がなかった。 しかし、噂によると社長の親族だけ昇給したそうだ。 ったく。 いやいや、それよりもこの眠い状態を何とかしないといけない。 俺は共用のコーヒーを何度もいれにいったり、トイレに立ち、スクワットを何度もしてみた。 それでも椅子に座って作業を開始すると途端に脳内のシャッターが蛍の光のBGMと共にゆっくり閉じてしまう感覚があった。 何度かうとうとした。 まだ仕事が始まって1時間も経っていないのに、俺は眠くて仕事にならなかった。 そして、健康管理部長に肩を叩かれた。 近寄ってくる気配も感じないほど俺の神経は閉じかけていた。 「どうやら寝不足のようだね。」 その一言で、さーっと血の気が引いて一瞬で目が覚めた。 皮肉なものである。 「寝不足は酩酊状態と同じなのだといつも言っているから分かるよね。酔っぱらっている状態で良いパフォーマンスは発揮できない。 岩崎さん、今日はもう帰りなさい。」 あぁ、またやってしまった。 今月はこれで3回目になる。また有給休暇が減る。 昇給や賞与の時の人事査定にも影響するだろう。 もしかして来年も昇給が無いかもしれない。 俺は腕から機器を外しそれを眺めた。 こんなものがあるせいだ。 従業員の健康管理のために支給されたこの機器は逆に俺の首を絞めることになった。 全てがAIで管理されている時代。 うまくやっていかないと俺はAIによって仕事を奪われてしまう。 「はい、ありがとうございます。それでは明日の午後1時にお会いできることを楽しみにしております!」 俺と同期のKの電話をしている声が突然聞こえた。 Kはいつも生き生きとしている。 同じ入社なのに彼はもう係長になっている。 俺はまだ主任止まりだ。 Kは運がいい。 いや、それは違う。 Kが生き生きと働いているのは彼が特別幸せだとか運がいいとかではない。 彼は月に本を数冊読んでいて、努力家なのは知っている。 たまに一緒に飲みに行くと、彼の口から出てくる話の内容は俺の知らない事ばかりだ。 彼は昨日と違う今日を意識して行動していると言っていた。 その時は他人事のように聞いていたが今さらのように彼の言葉が脳裏に浮かんだ。 「昨日と同じことをして、今日、突然凄いことが起きるなんてありえないんだ。 僕はより良い将来を作りたくて今、頑張ろうと思っている。」 そんなことを言っていた。 そうなんだ。 俺はAIに仕事を奪われていると思っているが、AIは関係ないのだ。 それ以前の俺の行動が問題なのだ。 1年前、俺は何をしていか。 会社と家の往復だけ。夜遅くまでネットをブラブラして終わる毎日だ。 そこに明日を良くしようという行動はなかった。そして今も同じことをしている。 毎日、なんとなく過ごしてきた。 1年前にそうだったから今の自分があるのだ。そして、今も同じことをしていたら1年後も同じ状態になるのは当たり前だ。 そして、俺も含めて勘違いしていることがある。 今と同じだったら、それでいいじゃないか、と。 自分は一年前と変わらない。 しかし、世の中は劇的に変化をしている。 自分が「現状維持」している状態は、変化を続けている現代から見ると「変わらない」のではなく「衰退」しているのだ。 「現状維持」は「今のまま」ではなく、「今よりも劣った状態になる」ことを意味する。 そんなこともKは言っていた。 今の自分の行いの結果が明日になるのだ。 このままではいけない。 今のまま、同じことをしていたら同じ結果しか生まれない。 宝くじが当たるとか、突然良いことが転がり落ちてくるなんてそんなに人生甘くない。 仮に、努力しないで偶然良いことが起きても、それは砂上の城にしか過ぎない。 AIが仕事を奪っているのではない。 昨日と同じことをしているその思考が自分の明日を狭めていっている。 生まれ変わろう。 変わりたいなら今と同じことをしていてはいけない。 昨日と違うことをしよう。 今を変えよう。 俺は机周りを片付けて会社を出た。 今回は AIが仕事を奪っているのではない (ショートショート) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

あの失敗が分岐点(ショートショート)【音声と文章】

※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1577日目。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも短時間で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は あの失敗が分岐点(ショートショート) をお伝えいたします。 あの日、俺は集金を終え、駐車場に停めてある車に近づいたところで携帯電話が鳴った。 俺はとっさに持っていた集金の封筒を車の上に置き、胸からメモ用紙とボールペンを出し携帯電話を開いた。 大手ゼネコンのA様からだった。 昨日の工程会議のあと、変更点が出たとのことで、詳しくは図面をメールに添付されたということだ。 電話はなかなか終わらなかった。 相手が相手だしこちらから切るわけにもいかない。 これは座って話した方がいい。 俺は車のドアを開け中に入った。 話は3日後のゴルフコンペの話に移った。 会費は既に経理課が振り込んでいるはずだ。 コンペの協賛品も先日お届けした。 一緒に回る他の3人のメンツはしっかり調査済みだった。 全ては抜かりがない。 やがて、先方の電話が終わり、俺は車のエンジンをかけ、お気に入りのCDを聴きながら会社に向かった。 会社に戻ったらA様からのメールを早速確認しなくては。 そう思いながら会社に近づいたその瞬間、思い出した! 集金のお金は! 助手席に置いたカバンの中を探った。 ない! そうだ、あの時、車の上に封筒ごと置いたのだった。 サーッと全身が寒くなった。 俺はもう一度あの場所へ戻ってみた。 しかし、あの封筒はどこにも見当たらなかった。 封筒はATMコーナーによくある、一般的な封筒で、自分の勤務先名やそれが分かる何かは書いていなかった。 今日は集金の日で、それを集金してきたのだ。 金額は370,125円。 何度周りを見てもその封筒はなかった。 もしも誰かがそれを見つけて交番に届けても、それが自分のものであるという証拠がない。 俺はダメもとで先ほど通った道をゆっくり走って帰ったが、それらしい封筒は見当たらなかった。 会社に戻り、経理部長にそのことを話した。 部長は目を大きく見開き驚いていた。 やがて社長に呼ばれ事の経緯を聞かれた。 俺は嘘偽りなく答えた。 370,125円。 結局、その金額は、なんと、俺に対する【短期貸付金】ということになった。 つまり、俺が会社からお金を借りたという形で、それを会社へ返済しなければいけないということだった。 つまり、俺が「失くした」ということを信じてもらえなかったということだ。 俺が使い込んだとでも思ったのだろう。 俺は納得がいかなかった。 もちろん、集金してきたお金を失くした俺に全責任はある。 しかし、それを俺が全額負担するのはうまく説明できないが違うと感じた。 確かに俺は仕事中、時々さぼる癖がある。 ちょっとの休憩のつもりで車の中で寝たら、寝過ごして商談をすっぽかしたことがあった。 たまたま、メモ用紙がなくて、打ち合わせの日時を間違えたこともあった。 会社の駐車場でバックした時に後ろをへこませ、人から言われるまで数日間、「いつどこで凹んだのか気づかなかった」としらを切ったこともある。 それでも集金の370,125円は絶対に車の上に置いたのだ。 俺はその短期貸付金を払わずにいた。 その後、年利率3.000%、2.550%、2.6125%, 2.6100%と、毎年利率が変わりながら、短期貸付金に対する認定利息が計上され俺に対する短期貸付金は増えていった。 決算時に毎回、俺に催促が来たが俺は一切払わなかった。 数年後に370,125円は認定利息を含め430,000円を超えるようになった。 俺はその数年後に退職し会社から貸付金の催促が来た。 俺はそれを拒否し黙って都会へ出た。 田舎へはもう20年以上帰っていない。 430,000円の為に20年以上、身を隠していることになる。 その金額のために俺は田舎を捨てたのだ。 俺はあれから心を入れ替え今の会社に入った。 最初は社長のお抱え運転手だった。 俺の仕事は車の清掃と整備が主だった。 俺はどんな仕事でもいいと思っていた。とにかく与えられた仕事を一生懸命やると決めた。 社長の運転手の仕事は不定期だったが、空き時間がたくさんあり、それを俺は有効活用した。 空きの時間はもっぱら読書に費やした。 先人の教えを頭に叩き込んだ。 また、社長がお会いする方がどのような人物で会社とはどのような関係性なのかを手書きのノートに逐一記入していった。 そのノートが5冊目を迎えた頃に運転手としての任務を解かれ、俺は総務部の広告宣伝課に配属された。 既に関係会社の上位役員の名前やプロフィール、その会社の強みと弱みは頭の中に入っていたから交渉はうまく行った。 本来の口の上手さも幸いした。 高層ビルが立ち並ぶ窓を眺め、時々、あの頃のことを思い返す。 今の私の役員報酬は勿論、あの短期貸付金の額を遥かに超えている。 あのことがあったお陰で今の私がある。 あの失敗が私の人生の分岐点だったと思う。 だから困っている私に塩対応してくれた当時の会社に感謝している。 「専務、お車の準備ができました」 秘書からの内線電話で我に返り、私は鞄を持って部屋を出た。 今回は あの失敗が分岐点(ショートショート) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

一年限定のお試しひとり暮らし(ショートショート)【音声と文章】

※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1578日目。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも短時間で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は 一年限定のお試しひとり暮らし(ショートショート) をお伝えいたします。 えっ、どうしよう。 味噌が無い。 野菜を入れて後はみそを入れるだけなのに。 スーパーはもう閉まっている。 ガスコンロの前でどうしようかとのり子は 考えた挙句、昆布だしをもう少し入れて塩味のお吸い物にした。 野菜に塩味は合っていた。小皿からズズッとすすりながら舌に感じるうまみに一人悦に入っていた。 のり子は家から駅まで徒歩6分、電車に6分乗り、徒歩5分で勤務先に着くという、好条件の実家暮らしだった。 このまま、ずっと実家暮らしでいても良かったが、跡継ぎの兄がその内結婚したら私は家を出た方がいいだろう。 独身の私が家にいたら、お嫁さんが居づらいだろうから。 でも、私は自分のお給料だけで暮らしていけるか。また、きちんと部屋を片付けて綺麗に暮らせるだろうか。のり子は一人暮らしが不安だった。 のり子にお付き合いをしている人はいなかった。もともと結婚願望が無い。 そこでのり子はひとり暮らしを試してみようと思った。期限は一年。 「1年間だけひとり暮らしをテストしてみる」と決めた。 のり子は早速、住むところを探し始めた。数か所、内覧し、学生街にある、2か月後に完成予定のワンルームマンションに決めた。 そこは会社まではバスかまたは徒歩30分位のところで、東と南に窓がある明るい部屋だった。 住む場所が決まったところで、可愛い食器や使いやすそうな鍋などがいっぱい飾られている夢がいっぱいの売り場を見て回った。 あれもこれもと買い物かごに入れ長財布の中を覗きながらレジに向かう途中、ふと、冷静になった。 何もかも新しいもので始めるのは嬉しい。でも、それはどうしても買わなければいけないものなのか。 実家にあるもので足りるのなら、買わずにいよう。そう思い直し、一つずつ商品を売り場に戻した。 お茶碗と汁椀、そして箸、その3点だけ購入した。 寝具類は実家のいただきものの中から分けてもらった。 テレビは見ないから要らない。 冷蔵庫と洗濯機は1年契約でレンタルし あとは自分のPCを持ち込んだ。 ベッドは置かず、布団を上げ下げした。食事兼勉強用の机は、PCを使うため、しっかりしたものが必要だった。 このテーブルは実家には無かったので家具屋さんから購入した。 のり子は毎朝、1合のご飯を炊いた。それを一日で食べきって夜にお米を研いでセットする。この何気ないことでも、「自分の生活を自分でしている」という実感が湧いてきて、嬉しかった。 玉ねぎはスライスして冷凍庫へ。ほうれん草も湯がいて小分けにして冷凍庫へ。お味噌汁は日高昆布で出汁をとり、その使い切った昆布も軟らかく煮ていただいた。 ひとり分の食事はおままごとをしているようで楽しかった。 ある日、珍しくチャイムが鳴りドアを開けたら女性二人が立っていた。それは宗教団体の方だった。 悩みはありませんかと聞かれた。 のり子は特定の宗教に偏る気持ちはなかったのでやんわりとお断りした。 しかし、数日後、また勧誘に来た。 要らぬ勧誘を断るにはどうしたらいいのかと同僚に相談したら、「そんな時は男性の靴を玄関の見えるところに置けばいいのよ。女性の一人暮らしだと思って相手は強気に出てくるんだから」 なるほど。 のり子は早速、兄にその話をした。兄は喜んでビジネス用の革靴を貸してくれた。 その大きな革靴をピカピカに磨いて玄関の見えるところに置いた。 すると、それを見られてからは勧誘がぱたりとなくなった。効果てきめんである。 ただ、何も知らずに突然訪問してきた母に信じてもらうには時間がかかり冷や汗をかいた。 せみ時雨が終わり 庭の木々が綿帽子をかぶり そしてまた新しい年を迎えた。 今年も早咲きの桜はすでに散ってしまい リンゴの白い花が満開になった。 ひとり暮らしを始めて一年になろうとしていた。 小鳥のさえずり。 軽トラでシジミ貝売りの声がのんびり走り去る。 東側の窓から朝日がふわりと入ってくる。 のり子はこの一年でいろいろな事を学んだ。 そして、自信が無かったひとり暮らしにも慣れた。 自信がないからできないと足踏みしているよりも、まずは行動をしてみる。 自信は最初からあるのではなく、行動することで自信が生まれるということをのり子は知った。 人と比べず、自分の判断で生きていく。 この一年、たくさんの選択する場面に遭遇し、その都度、落胆したり、自己嫌悪に陥ったり、迷い、惑い、どうすればいいのか悩んだ。 相談できる人もできた。葛藤は大きいほどそれを乗り越えた時の自信は大きかった。 そして、結婚観も大きく変わった。 ワンルームマンションののり子の部屋はお味噌汁の匂いに包まれていた。 のり子は今朝も朝ごはんの支度をしていた。 お米は2合。 テーブルには大小2つの茶碗と汁椀、そしてお箸。 「おはよう。ご飯できたよー。」 「ウーン」 布団の中から大きく伸びをした腕が飛び出た。 一年限定のお試しひとり暮らし。 のり子はその自分との約束を守った。 「ひとり暮らし」は一年だけという約束を^^ 今回は 一年限定のお試しひとり暮らし(ショートショート) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

会社に貢献したいのにできない私が変われたきっかけ(ショートショート) )【音声と文章】

※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1579日目。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも短時間で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は 会社に貢献できていない私が変われたきっかけ(ショートショート) をお伝えいたします。 「Aさん、支払いの相殺チェックをお願いします」 「はい」 けい子の直属の上長はけい子のお願いが終わるか否かというタイミングで、けい子の言葉を遮るような形で返事をした。 いつもそうである。 今は事務所にリュウジさんがいるからそれでもいい方だ。女性だけしかいない時は 「早く言って」とか「分かってるから」とあからさまに嫌味を言われる。 なぜかけい子だけ彼女に嫌われていた。 パートのB子さんにでさえ優しい言葉をかけるのに、正社員のけい子には冷たかった。 また、最近になってけい子の仕事がどんどんなくなっていった。 これまで任されていた資金繰り表は経理部長がされることになった。 また、従業員の福利厚生の会の事務局を10年以上続けてきたがそれも新年度から別の方になった。 更に、業務改革推進委員会のメンバー交代と言う事でその任務も解かれた。 どうして私だけそうなのだろうか。 私の能力が特別劣っているとは思えない。 私が辞めるように仕向けているとしか考えられない。 けい子は以前から専務に嫌われていた。それは専務の言葉の端々に感じられた。 その専務が新社長になられた。社長になられてからその傾向は顕著になってきた。 色々な仕事が自分の手から離れていった。 それは新社長の命令だった。 けい子は会社に貢献できていない自分が惨めだった。自分の存在の意味はあるのか。忙しそうに仕事をしている同僚たちが羨ましかった。 私のどこがいけないのだろうか。 けい子は毎日自分と対話をしていた。 どうやらこれらはAさんの意向らしいと、先日、社内の情報に詳しい営業のBさんがこっそり教えてくれた。 Aさんは以前からけい子には辛く当たっていたが、Aさんが主任から係長になられた頃からその度合いは強くなってきたと感じる。 だから今は電話応対・郵便物の管理・弔電の手配・振替伝票の起票がメインで、これではどうしても時間が余ってしまう。 他の事務係は毎日のように残業をしているのに自分だけは時間通りにあがっていた。それが申し訳なく思い、「何かお手伝いすることはありませんか」と上長にお聞きするが「ありません。上がって下さい。」と冷たい言葉が返ってくるだけだった。 小腹が空いたリョウコさんがカップスープをすすっていた。彼女も残業か。 皆さんが残業している中、一人だけ時間通りに上がる自分が暗に能力がない人と言われているようで惨めだった。 「すみません。お先に失礼します。」 けい子は皆さんにお辞儀をしながら事務所を出た。 更衣室で自分のロッカーを開ける。ほうれい線が目立つ冴えない女性が映っていた。 その目をじっと見つめ、そして自分を励ますように目に力を入れて微笑んだ。 さっ、帰ろう。 「お先に失礼します!」 けい子がどんな時期でも定刻に上がるようになって一年が経った。 彼女は今日も一人、定時であがった。 最近、皆さんは月59時間すれすれに残業されているようだった。 残業代も結構な金額になるだろう。 それに比べてけい子の毎月の時間外手当はゼロだった。 今年も昇給がなかったから2年続けて手取りは同じになる。昇給しなくても社会保険料率は微妙に上がっているため手取り額は下降気味だった。 こんな状態ではこの先、昇給は望めないだろう。 それほど業績が悪いわけではないと肌で感じているが、賞与は以前よりも少なくなった。 けい子は残業なしであがるようになって最初は韓流ドラマにはまり夜遅くまでそれを見ていた。 独身で一人と一匹暮らしのけい子は誰かのために何かをする必要はなかったから帰宅した後は時間を持て余していた。 飼い猫のミーだけが話し相手だった。 最初はそれで楽しかったがその内けい子は虚しさを感じ始めた。 こんな生活をしていてはいけない。もっと建設的な事をしよう。 けい子はその後、見よう見まねで自分のHPを立ち上げた。 少しずつ出来上がっていく様子が嬉しくて、帰宅時間が待ち遠しくなった。 HPの作成は未知の世界であり、時間がたっぷりあるけい子にとって、HPは喪失感を埋めるのにちょうどよかった。 数日でHPは出来上がった。 HPには飼っている猫の写真や動画を毎日投稿した。 その他にX(Twitter)、youtube、Instagram、スタンドエフエム、その他、恐る恐るチャレンジしていった。 HPに訪問して下さる方が増えるようになり、「私もけい子さんのような素敵なHPを作ってみたい」と言う方が現れた。 けい子は喜んでその方に作り方を教えた。 口コミが口コミを呼び、けい子はHP制作の指導を有料でするようになった。 また、会社で差別を受けたことにより、行動心理学などの書籍を読み漁り、それについての記事を投稿したら、「私もそうでした」とか「けい子さんの言葉に勇気をもらいました」と言われるようになり、心の相談もするようになった。 会社では相変わらず仕事が一人だけない状態だった。 でもけい子はもう落ち込んだりはしない。 自分には胸を張って言える特技がある。 私を必要としている人がいる。 マズローの5段階説によると、人間の欲求は5つの階層がある。 低い階層の欲求が満たされることによって次の段階の欲求を求めるようになる。 まずは「生理的欲求」。 人が生きていくための本能的な欲求だ。 この「生理的欲求」が満たされると次に「安全の欲求」を満たそうとする。 3番目の「社会的欲求」は、何かの集団に所属したり仲間を得たいという欲求だ。 けい子は会社という集団に所属していたが仲間外れにされ、会社ではこの欲求は満たされていない。 しかし、自分のビジネスでは同じ思いをした仲間を得、「社会的欲求」はビジネスの方で満たされた。 「社会的欲求」が満たされると4つ目の「承認欲求」を望む。 これは「所属と愛情の欲求」とも呼ばれる。 他者から認められたいと願う欲求だ。 これもけい子はビジネスで満たされていた。 5つ目が「自己実現欲求」だ。 自分が自分を満足できるようになりたいという欲求だ。 けい子はさらなる努力を続け、もっと上を目指そうと考えている。 5段階の欲求を満たしたら6段階目の欲求がある。 それは「自己超越」。 世界平和・地球温暖化対策などに対して行動することだ。そこまで到達してみたいものだ。 直属の上長達は相変わらず今日も残業をしていた。 人は生理的欲求と安全の欲求を満たしたら会社においては社会的欲求を満たしたいと思うものだ。 その欲求が湧いてこないようにけい子から仕事を取り上げてしまった会社の考え方は間違っているとけい子は感じている。 誰でも誰かのお役に立ちたいと思っている。 そしてお役に立てたら嬉しい。 会社は気の合う仲間だけで運営するものではない。 いろいろなタイプの人間がいて、それぞれ足りないところはお互いに補いながら成長していくものだと思う。 会社に貢献したいのにできないけい子が変われたきっかけは、HP制作だった。 そして自分のビジネスを立ち上げ小さな実績を積み重ね、欲求の階段を一つづつ登ってきた。 「私は自分の好きなことに時間を使い自分らしく生きていくわ。」 けい子は今日も一人、定時でタイムカードを打刻した。 今回は 会社に貢献したいのにできない私が変われたきっかけ(ショートショート) ) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

二週間限りの指輪(ショートショート)【音声と文章】

※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1584日目(4年超)。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも短時間で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は 二週間限りの指輪(ショートショート) をお伝えいたします。 「帰りたい!日本に帰りたい!」 リョウスケは泣きながらスーツケースの中のモノをゆう子に向けて投げた。 二人は昨夜結婚披露宴をし今はシドニーのホテルの一室だった。 大きなダブルベッドがあり、 リョウスケはスーツケースを全開にして中のものをゆう子めがけて投げつけていた。 至近距離からだからゆう子にあたってもいいものだが、それらは一つとしてゆう子には当たらなかった。 あたらないように手加減しているリョウスケの気持ちをゆう子は感じていた。 それがリョウスケのまだ残っている愛だと感じていたからゆう子はリョウスケの気の済むようにさせていた。 話は結婚披露宴前日に戻る。 夜、リョウスケからゆう子に電話が来た。 「俺はこれから旅にでる。探さないでほしい。」 リョウスケは言うだけ言って電話を切った。 はぁ? どういう事? ゆう子はあまりにも一方的な話に驚いた。 そんな、明日は結婚式なのに。 今さら、キャンセルなんて、そんなこと親戚や友人たちの手前、絶対できない。 ゆう子はリョウスケに電話をした。 その電話を待っていたかのようにリョウスケはすぐに電話に出た。 「リョウスケさん、旅に出るなんて嘘でしょ?」 「いや、俺は本気だ。」 「何いってんの!明日はどんな日か知ってるの?」 「あぁ、知っている。だから旅に出るんだ。」 もう、何が何だか分からない。 「お願い、話をしたいの。会いたいの。」 結局、ゆう子はリョウスケの車に乗り、あてもなく車を流し、山の中でグランエースを止め、二人は話し合った。 リョウスケとはお見合いだった。 どんなことを言っても「はっはっは」と笑い飛ばす彼にゆう子は頼もしさを感じた。 話はトントン拍子に進み、出逢って3か月後に挙式となった。 結婚式当日、リョウスケが何事もなかったように現れ、結婚披露宴まで滞りなくお開きになった。 リョウスケは来賓の皆様に終始笑顔で応えていた。 「これなら大丈夫」 ゆう子は内心、安堵した。 披露宴が終わりに近づいた頃、リョウスケがゆう子に顔を近づけてきた。 「えーっ!皆さんの前でキスされるのぉ。」ゆう子は嬉し恥ずかしかった。 リョウスケはニコニコしながらゆう子の耳元で囁いた。 「俺が今、どんな気持ちでいるか分かるか!」 「えっ?」 ゆう子は耳を疑った。 リョウスケは満面の笑みを周りの方々に向け、ゆう子から離れた。 「何?今のは?」 その後、リョウスケはいつもと変わらぬ態度でいた。 新幹線の中でも、シドニーについてからも、リョウスケは他人が周りに居る時は終始笑顔でいた。 しかし ホテルで二人きりになるとこれまで抑えていたものを一気に吐き出すようにイライラして怒り出した。 「さっきのボーイに対してどうしてあんなに笑顔を振る舞うんだ?」とか 「昼食の時、お俺のことを馬鹿にして見ていただろう」とか 「俺が英語ができないのを良い事に、タクシーの運転手に、俺の悪口をいっていただろう?」と 全く見当違いな疑念をゆう子はかけられ、なじられた。 そして、冒頭の「帰りたい」になった。 それは旅行中、毎晩繰り広げられた。 ゆう子は彼の二重人格にとても困惑した。 「リョウスケはきっと、短期間でいろいろなことが進んでしまい、それに気持ちがついてきていないからこのようなことが起きているんだわ。 日本に帰ったらきっと落ち着くと思う。 大丈夫よ。」 そう、ゆう子は自分に言い聞かせた。 しかし、リョウスケの嫉妬深さは帰国してからも消えなかった。 ゆう子が突然の残業になり帰宅したら 「どこかの男と会っていたんだろう」となじられた。 たくさんの被害妄想をゆう子にぶつけたリョウスケは数日後、実家に泊るようになり、二人の部屋には帰ってこなくなった。 そして、忘れもしないあの日、突然、大きなトラックがやってきて、リョウスケの家財道具一式が運ばれた。 ゆう子は突然のことで目を丸くするだけだった。 車の助手席から降りたリョウスケがゆう子の前に来た。 そして、全ての荷物を詰め込み、 「じゃぁな」と片手をあげてリョウスケは部屋を出ていった。 その顔は、彼に初めて出会った時のあの清々しい笑顔だった。 ゆう子はその笑顔に惚れたのだと思いだした。 しかし、結婚式が近づくにつれ、リョウスケの笑顔は薄くなり、イライラすることが多くなっていった。 彼にとって結婚は何だったのだろうか。 分かっているのはもう、結婚指輪を外してもいいということだけ。 僅か二週間だけの結婚指輪。 「じゃぁっなて、何よ。」 ゆう子はその指輪を見つめつぶやき テーブルの上に指輪を無造作に置いた。 今回は 二週間限りの指輪(ショートショート) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

俺のせいではない(ショートショート)②

前回までの物語はこちらです。 ↓ 俺のせいではない(ショートショート)① https://note.com/tukuda/n/nc54afe680490?from=notice 数日後、彼女が亡くなったと人づてに聞いた。 残業中に誤って転び、打ち所が悪くて亡くなったということだった。彼女の死は、単なる本人の不注意で転んだということになっていた。 まさか亡くなるなんて思ってもみなかった。彼女は確か二人のお子さんをもつシングルマザーなはず。上のお嬢さんは社会人になったば

俺のせいではない(ショートショート)①

何も良いことは無かった。 10数年間勤めた会社を俺は5日前に退職した。残りの有給休暇を使い切る形で退職したから2週間前から会社には出勤していない。 転職活動はうまくいっていない。退職が決まってすぐに受けた会社は、自分としてはかなりレベルを下げたつもりだった。だから採用間違いないと思っていたが、ダメだった。 その後数社に履歴書を送ってみたが、全て断られた。今は会社に行かなくても給料がもらえるからいいが、来月からは厳しくなる。 そろそろ車検が近づいてきている。 車の任意保