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会社に貢献したいのにできない私が変われたきっかけ(ショートショート) )【音声と文章】

山田ゆり
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おはようございます。
山田ゆりです。

今回は
会社に貢献できていない私が変われたきっかけ(ショートショート)
をお伝えいたします。



「Aさん、支払いの相殺チェックをお願いします」
「はい」

けい子の直属の上長はけい子のお願いが終わるか否かというタイミングで、けい子の言葉を遮るような形で返事をした。

いつもそうである。
今は事務所にリュウジさんがいるからそれでもいい方だ。女性だけしかいない時は
「早く言って」とか「分かってるから」とあからさまに嫌味を言われる。

なぜかけい子だけ彼女に嫌われていた。
パートのB子さんにでさえ優しい言葉をかけるのに、正社員のけい子には冷たかった。

また、最近になってけい子の仕事がどんどんなくなっていった。
これまで任されていた資金繰り表は経理部長がされることになった。
また、従業員の福利厚生の会の事務局を10年以上続けてきたがそれも新年度から別の方になった。
更に、業務改革推進委員会のメンバー交代と言う事でその任務も解かれた。


どうして私だけそうなのだろうか。
私の能力が特別劣っているとは思えない。
私が辞めるように仕向けているとしか考えられない。

けい子は以前から専務に嫌われていた。それは専務の言葉の端々に感じられた。

その専務が新社長になられた。社長になられてからその傾向は顕著になってきた。
色々な仕事が自分の手から離れていった。
それは新社長の命令だった。


けい子は会社に貢献できていない自分が惨めだった。自分の存在の意味はあるのか。忙しそうに仕事をしている同僚たちが羨ましかった。
私のどこがいけないのだろうか。
けい子は毎日自分と対話をしていた。


どうやらこれらはAさんの意向らしいと、先日、社内の情報に詳しい営業のBさんがこっそり教えてくれた。
Aさんは以前からけい子には辛く当たっていたが、Aさんが主任から係長になられた頃からその度合いは強くなってきたと感じる。


だから今は電話応対・郵便物の管理・弔電の手配・振替伝票の起票がメインで、これではどうしても時間が余ってしまう。

他の事務係は毎日のように残業をしているのに自分だけは時間通りにあがっていた。それが申し訳なく思い、「何かお手伝いすることはありませんか」と上長にお聞きするが「ありません。上がって下さい。」と冷たい言葉が返ってくるだけだった。


小腹が空いたリョウコさんがカップスープをすすっていた。彼女も残業か。
皆さんが残業している中、一人だけ時間通りに上がる自分が暗に能力がない人と言われているようで惨めだった。

「すみません。お先に失礼します。」
けい子は皆さんにお辞儀をしながら事務所を出た。



更衣室で自分のロッカーを開ける。ほうれい線が目立つ冴えない女性が映っていた。


その目をじっと見つめ、そして自分を励ますように目に力を入れて微笑んだ。

さっ、帰ろう。






「お先に失礼します!」

けい子がどんな時期でも定刻に上がるようになって一年が経った。
彼女は今日も一人、定時であがった。
最近、皆さんは月59時間すれすれに残業されているようだった。


残業代も結構な金額になるだろう。
それに比べてけい子の毎月の時間外手当はゼロだった。
今年も昇給がなかったから2年続けて手取りは同じになる。昇給しなくても社会保険料率は微妙に上がっているため手取り額は下降気味だった。


こんな状態ではこの先、昇給は望めないだろう。
それほど業績が悪いわけではないと肌で感じているが、賞与は以前よりも少なくなった。




けい子は残業なしであがるようになって最初は韓流ドラマにはまり夜遅くまでそれを見ていた。
独身で一人と一匹暮らしのけい子は誰かのために何かをする必要はなかったから帰宅した後は時間を持て余していた。
飼い猫のミーだけが話し相手だった。


最初はそれで楽しかったがその内けい子は虚しさを感じ始めた。
こんな生活をしていてはいけない。もっと建設的な事をしよう。



けい子はその後、見よう見まねで自分のHPを立ち上げた。
少しずつ出来上がっていく様子が嬉しくて、帰宅時間が待ち遠しくなった。


HPの作成は未知の世界であり、時間がたっぷりあるけい子にとって、HPは喪失感を埋めるのにちょうどよかった。
数日でHPは出来上がった。


HPには飼っている猫の写真や動画を毎日投稿した。
その他にX(Twitter)、youtube、Instagram、スタンドエフエム、その他、恐る恐るチャレンジしていった。


HPに訪問して下さる方が増えるようになり、「私もけい子さんのような素敵なHPを作ってみたい」と言う方が現れた。
けい子は喜んでその方に作り方を教えた。
口コミが口コミを呼び、けい子はHP制作の指導を有料でするようになった。


また、会社で差別を受けたことにより、行動心理学などの書籍を読み漁り、それについての記事を投稿したら、「私もそうでした」とか「けい子さんの言葉に勇気をもらいました」と言われるようになり、心の相談もするようになった。





会社では相変わらず仕事が一人だけない状態だった。
でもけい子はもう落ち込んだりはしない。
自分には胸を張って言える特技がある。
私を必要としている人がいる。



マズローの5段階説によると、人間の欲求は5つの階層がある。
低い階層の欲求が満たされることによって次の段階の欲求を求めるようになる。

まずは「生理的欲求」。
人が生きていくための本能的な欲求だ。
この「生理的欲求」が満たされると次に「安全の欲求」を満たそうとする。


3番目の「社会的欲求」は、何かの集団に所属したり仲間を得たいという欲求だ。
けい子は会社という集団に所属していたが仲間外れにされ、会社ではこの欲求は満たされていない。

しかし、自分のビジネスでは同じ思いをした仲間を得、「社会的欲求」はビジネスの方で満たされた。

「社会的欲求」が満たされると4つ目の「承認欲求」を望む。
これは「所属と愛情の欲求」とも呼ばれる。
他者から認められたいと願う欲求だ。
これもけい子はビジネスで満たされていた。


5つ目が「自己実現欲求」だ。
自分が自分を満足できるようになりたいという欲求だ。

けい子はさらなる努力を続け、もっと上を目指そうと考えている。



5段階の欲求を満たしたら6段階目の欲求がある。
それは「自己超越」。
世界平和・地球温暖化対策などに対して行動することだ。そこまで到達してみたいものだ。




直属の上長達は相変わらず今日も残業をしていた。

人は生理的欲求と安全の欲求を満たしたら会社においては社会的欲求を満たしたいと思うものだ。

その欲求が湧いてこないようにけい子から仕事を取り上げてしまった会社の考え方は間違っているとけい子は感じている。

誰でも誰かのお役に立ちたいと思っている。
そしてお役に立てたら嬉しい。

会社は気の合う仲間だけで運営するものではない。

いろいろなタイプの人間がいて、それぞれ足りないところはお互いに補いながら成長していくものだと思う。


会社に貢献したいのにできないけい子が変われたきっかけは、HP制作だった。

そして自分のビジネスを立ち上げ小さな実績を積み重ね、欲求の階段を一つづつ登ってきた。


「私は自分の好きなことに時間を使い自分らしく生きていくわ。」



けい子は今日も一人、定時でタイムカードを打刻した。





今回は
会社に貢献したいのにできない私が変われたきっかけ(ショートショート)

をお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。 

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。








◆◆ アファメーション ◆◆
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