見出し画像

先の見えない世の中に

家に帰ってきて気がつくと寝ていた。寝不足のせいだ。

夜中に携帯がなって、慌てて着信を見ると、息子からの電話だった。こんな夜中に…嫌な予感が一瞬であれこれ浮かんだ。「どうしたの?」「こんな時間に悪いね」声は元気そうなので安心する。すぐに浮かんでしまったのは、熱が出て具合が悪いとか、何か外出先でのトラブルとかだったけれど、違ったようで、ほっとする。

「今日中に決めなければならないことがあって迷っているんだ。」家を離れて学生生活を送る次男は、来年の研究室を選択する時期だと言う。第一希望で出した研究室に入れなかったことで、困っていた。理系の学部に進学したものの、それほど研究したい何かがあるわけでもない彼は、大学院進学ではなく、就職する道を考えていた。だから、比較的就職の道を選びやすい研究室を希望した。ところが予想してなかった落選である。まだ空いている研究室から、次に選ぼうとすると、選択によっては大学院進学が前提で、研究の多忙さから、就職活動が思うようにできないかもしれないらしい。

「場合によっては院に行くことになるかもしれないけれど大丈夫なのかな、つまりお金のこととか」確かに、大学進学で理系を選んだ時点では院に行くものと思っていた。でも、その後選んだ学科が就職する人の多いところだと聞いて、正直ほっとする気持ちもあった。親としても、就職が2年先に延びると言うことは大変なことだ。それでも、せっかく難しい勉強をして(文系の私にはそう思えた。)入った学部なのだから、専門的な知識を身につけて卒業して欲しい、という気持ちもある。そんなことも電話で伝えた。

あれこれ話をしていくうちに、息子の本音がポツリポツリと出てくる。「オレってあまり就職活動得意じゃないみたいなんだ。実際インターンもあまり行けてないし。」今時の就職活動は3年の夏ごろからインターンに参加して、それが内定に結びつくというシステムらしい。息子はいくつか夏からのインターンにエントリーしたが、うまく行っていなかったようだ。これから本格的になる就職活動への不安が出てきたらしい。

しかも、このコロナ禍である。1年後の就職どころか、院に進学してさらに2年後の求人状況など想像もできない。ただ、世界の感染状況と経済への影響を考えると、あまり良い想像は浮かばないことは確かだ。

先が見えない世の中だが、これからは自分の力で歩んでいくしかないのだと思う。今夜のように、話ならいつでも聞いてあげることはできる。一時間ほど話しているうちに、何となく息子の気持ちは決まって来たようだ。そう、自分で決めて自分で進んで行くのがいい。



いただいたサポートは、本の購入に使わせていただきます。