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私の明日はどっちだ?2-①

これまでのお話は、こちらからどうぞ。

やっと面接の連絡がきた!

データ入力にお弁当の盛り付け、本当にできるかどうかもわからない機械の組み立て…もういくつ応募したかわからない。いっそ黙々と手を動かしていたほうが気がまぎれるのではとも思う。不器用さには自信があるけれど。

(私は社会からもう必要とされていないのか…)そんなことすら思えてきたある日。スマホに電話がかかってきた。登録されていない番号だ。

(うわ、これ出ていい電話なの?マズいやつ?)しかしまだ結果の出ていないものがある以上、もしや、ということもある。ずっと待たせるわけにもいかない。エイッとばかりに通話ボタンを押すと、

「あー、もしもし、こちら薮田さんのお電話でしょうか?」年配の男性の声だった。(ううっ、直接断るって丁寧なのか意地悪なのか…)

「はい、薮田でございます」

「あー、有限会社 ウーエルカルム人事部のタカケンと申します。この度は、あー、弊社の求人にご応募いただきまして、誠にありがとうございます。つきましては、あー、来週月曜、7月6日に面接を行いますので、弊社までお越しいただけますでしょうか?」

(やった!行きます行きますもちろんOKです!)「かしこまりました。7月6日でございますね」

「あー、ありがとうございます。あー、その際にはですね、履歴書と、薮田さんが一番好きな食べ物をご持参ください」

「承知いたしました。履歴書と一番好きな食べ物で…(え?一番好きな食べ物?何それ?でもそう言ったよね)あの、一番好きな食べ物と言いますと…」

「あー、はい。薮田さんが一番好きな食べ物を一つお持ちください」

「???」

「あー、では当日お待ちしております」

(あれ?時間は?)「あの、大変失礼ですが、お時間のほうは…」

「あー、はい、そうですね。お時間言ってませんでしたか、じゃあ午後2時ではいかがでしょう?ちょうど眠たくなってくる時間ですので、何か用事があったほうがいいですね」

「??」

「あー、ほかに何かご質問は?」

「は、はい、特にございません」

「あー、では当日お待ちしております、失礼いたします」

「ご、ご連絡ありがとうございました。失礼いたし…」

プーップーップー…切れた。

とにかく面接までこぎつけた、面接なんだ、と自分に言い聞かせようとした。が、嬉しいという気が全く起こらない。何だ?食べ物って。フォアグラが一番好きなら買って来いってことなのか?そもそもどうやって持っていけばいいのだろう。いや、おかしいでしょう。ご質問だらけですよ、タカケンさん!私を採用しようかなんて考える会社は、やっぱりきっとどこか変なんだ。これってどうなの?もし受かっても行っていいところ?

こだわりを捨ててガンガン応募していたので、何がどれだかわからなくなっていた気もする。そうだ。『有限会社 ウーエルカルム』って言ってた。これは何してるところだったっけ。ええと…。関係書類の山からメモを引っ張り出す。

『資格不要!初めてのかたでもラクラク応募♪ の~んびりとお散歩やおしゃべりにおつき合いするだけ!』

ヘルパーさんかと思ったけど、資格要らないっていうから出してみたんだっけ。大丈夫かな。でもまあ怪しいところではなさそうか。あれこれ言ってる場合じゃないしな。でも、食べ物って…。食べ物ってどうしよう?

何とか拾ってくれそうなところが一つはあったということだけれど、こんなに嬉しくない知らせもあまり経験がない。料理を作ったりするんだろうか。その腕前を見たいとか。そうじゃなければ、持ってきたものから価値観とか判断するんだろうか。いや、そんなものが求められる仕事内容とも思えないし。

何だか奇妙な面接まであと4日。4日しかない、というべきか。とにかく何か探さなくては。私という人材を存分にアピールできるアイテムを!!







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