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【roots】青年期 《11章》小さな炎

朝7時に起きて、2人で朝食をたべ。
ルビーは道路向かいの花屋へ出掛ける。
僕は家で、掃除洗濯。
そしてこの旅を書き続けている。

お昼過ぎ、電話が鳴った。
「ハロー」
「ドレイク書房ですが、デイビッドさんで?」
「はい!僕です」
「読みました。なんだか不思議な話ですね。続きはあるんですか?」
僕はドキドキが口から溢れて聞こえてしまうんじゃないかと胸に手を当てて深呼吸した。
「はい、今も書いてます」
出来るだけ落ち着いて返事をすると
「あと、どのくらいのボリュームです?」
「えっと…かなり長くなると思います。実は…」僕自身の話だといいかけて飲み込んだ。
「はい?なんですか?」と出版社の人に言われて
「実は、どんどん書けてしまって」とごまかした。
「なるほど。では続きを読ませて頂いて。本にするかはそれから決めましょう」
「え?ほ、本ですか?本当に?」
僕が慌てているのをよそに出版社の人は慣れているのか
「持ってきますか?取りに行きますか?」と言った。
「行きます!すぐに!!」僕は約束をして机の上の2度目のペリカンまでをごっそり持って靴を履いた。

アパートの前の信号に立つとルビーが花屋から気がついて手を振った。僕が弾んで横断歩道を渡ると「どうしたの?どこに行くの?」心配でたまらないお母さんのよう。
「ドレイク書房の人が電話をくれて、続きを持っていくんだ!」
「すごい!!」ルビーが僕の腕を取って飛び跳ねた。「行ってくるよ」喜んでくれて嬉しくてニッコリと笑顔を向けた。
「気をつけて…あ、あのデイブ」何か言いかけて花屋さんから声が掛かった。僕は
「行くよ。お仕事頑張ってね。夜はペリカンの店に行こう!迎えに寄るよ。」と早口で言って手を振って走り出した。
ルビーはブンブン手を振って店に入って行った。
*****
ドレイク書房のドラゴンさん(あだ名)はエイデンさんと言う名前だった。小さな炎。やっぱりあのドラゴンなんじゃないかと心の中で思った。
小さな眼鏡を上げ下げして話すエイデンさんと仲良くなれる気がした。
「ずいぶんと持って来ましたね。」原稿の束を見てこれはコーヒーがいるなと立ち上がった。
「待ちます?帰ります?」と聞かれて、僕は読んでいるエイデンさんを見ていたくて
「待っていてもいいですか?」と言った。
「じゃあ、コーヒー入れて来ます」と優しく言ってくれた。
ペリカンの後はすぐにドラゴンだ。ドラゴンさんが出てくる!!僕のワクワクは声に出てしまいそうだった。
一枚、二枚と読み終えた原稿を横へと置いて行くたびにエイデンさんの表情が気になった。
一度もこちらに目を向ける事なく読み終えた。
エイデンさんは目を閉じてフゥーと大きく一息ついた。
「デイビッドさん、今ルビーと一緒に?」と言った。ルビー。まだ名前が出てない!
「やっぱり!エイデンさんはあのドラゴン?」
眼鏡をはずしてうなづいた。
「いつから?わかってたの?」と僕が興奮して言うと「このドアを開けた時からさ」と言った。
「また会えて嬉しいよ!あの花園で別れて以来だよね」僕の興奮は抑えきれなくなった。
「エイデン!!ずっと話したいと思ってたんだ。君のおかげで小さな世界に閉じこもっていては何もわからないと知ったんだよ。君からワクワクを持つ喜びを教えてもらったんだよ!!」と泣きそうになりながら話すと
「読んだよ。あんな風に書いてくれて嬉しかったよ。ここで君を待っていて良かった」エイデンが僕の肩をたたいた。その重さがジンと響いた。
「エイデンともこれが何度目かなんだね」
「世の中は不思議なもので、大切な人とはずっと繋がっているもなんだ。その1人になれて本当に嬉しいよ」エイデンが言ってくれたその言葉にまた感動した。
「これを本にするってどう思う?」
「良いファンタジーだよ。美しい風景が浮かぶ」
「長いけどね」と笑うと。
「知ってる」と笑い返してくれた。
もう一度読み返して、数日中にまた会う約束をした。
ドレイク書房を出てドアを閉めた。
このドアを開けた時に、もう僕だとわかっていてくれてたなんて…胸が熱くなった。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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