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【roots2】 《5章》前を向いて

「ただいま」ルビーが玄関を開けると靴が何足も並んでいた。デイブかトトトとやってきて嬉しそうに「おかえり!タイラーたちが来てるよ」と言った。
「あら!久しぶりね」とルビーも元気に答えて中に入って行くと、何やら色々広げて話していた物を急いで片付けている最中だった。
「いらっしゃい!留守にしていてごめんなさいね」と駆け寄ると見えないようにとばかりに3人は片付けた。
「ルビー、今日は夕食何にする?みんなで食べようか?」ルビーが後ろからする声に振り向くとデイブはニッコリ笑っていた。何だか聞いてはいけないよと言われている気がして
「何にしようか?ティムは何が好物?」と切り出した。「グラタンかな」と言うので
「OK!」と元気よく答えて台所へ向かった。
デイブがついてきて「ルビー、心配しないで。後で話すからね」と優しく言ってくれた。うんうんとうなづいて手を洗った。見えないってこんなに不安になるものだなんて…デイブに悟られないようにしていたもののルビーは寂しさを感じていた。

マカロニグラタンときのこのスープを5人で食べて、沢山笑って3人は帰って行った。
「突然に3人も来ていてごめんね」とデイブがお皿を運びながら言った。
「楽しかったわ。しばらくは新居にお客様が来ると思って、食材を用意しておかないといけないわね」とお皿を洗いながら答えた。
「ありがとう」デイブはお礼を言って手伝うわけでもなくただ隣に立っていた。

デイブは話が得意な方じゃ無い。だからいつも私が見て理解していたのに…それが出来ないなんて…デイブの言い出しにくさが伝わってルビーが先に声を出した。
「いいわ、無理に話さなくても。私。全部知らなくても大丈夫よ」と言うと
デイブはびっくりして「ルビーらしくないな!」と言った。
「らしい方が良いの?」と泡だらけのスポンジをお皿にキュッキュッ言わせながら聞いた。
「そりゃあそうさ。元気なルビーじゃなくちゃ、僕の元気もなくなる」と笑った。

「じゃあ聞くけど。どうして3人は何か隠してたの?」真剣にデイブを見上げた。
「さすが!見てたね」デイブは言うとパタパタと走って寝室へ行き取ってきた紙を広げて見せた。
「ジャーン!!頑丈な家がもうすぐ完成です!」
大きな紙いっぱいに書かれた家の図面だった。
「ここは?出来たばっかりなのに?」
「ここはダミーで、こっちが本当に生活する家なんだ。鉄骨造だから時間がかかって、先に出来た方に越したんだよ」
ルビーはお皿を洗う手を止めて話を聞いた。
「ここと地下で繋がっていて。こっちの家に行くんだ。あまり地上を出歩かないようにするためにね。設備も最新で防犯がバッチリなんだ」
「そうしなくちゃ、いけないくらいなのね。」
デイブはルビーをちゃんと見て
「その方が安心なんだ」と穏やかに言った。
ルビーはその声のトーンがやけに胸に響いて
「近代的でオシャレな暮らしになりそうね」と明るく言った。デイブはそんな思いには気付かずにホッとして
「全てを管理されていて警備が万全なんだ。みんなもここに越してもらう予定で作ってある。賑やかに暮らすよ」と嬉しそうに言った。
「え〜っ!2人きりが良かった」とふざけてルビーが言うと「嘘ばっかり。泣いてたろ?オスカーと離れて寂しいって」とデイブも笑って言った。
返事のように、うんうんとうなづいて。
「みんな一緒が安心よね」
「まだ、あと少しは2人だけどね」
「いっぱいわがまましーよお!」
「みんなといてもわがまま言うでしょう」
と2人で笑った。
そっか。今回の旅は本当に今までとは違う。
覚悟をしなくちゃ。私もデイブを守らなければ。ルビーは両手を拭きながら、見えない事を恨んだ。

この家になってデイブはテラスに出ることは無かった。
夜風に当たるのが好きだったのに。
窓の近くに寄ることも無かった。
ただリビングのソファーから揺れるカーテンを静かに眺めている。ルビーはコーヒーを淹れて持って行った。
「新聞のコラムはどうするの?」
ぼーっとしていたデイブは「あぁ、そうだね。忘れてたな」とゆっくり我にかえった。
「気分転換になるんじゃない?」
「書く事で何か変えられるかな?」
「ペンで戦うのね!カッコいい」ルビーがわざとらしくノリノリで答えると「そう?じゃ、やってみようか!」
とデイブも乗っかって2人で吹き出した。
なんだか、らしくなくて。
気を遣い合う自分たちが可愛いく思えた。

「今日ね、オーウェンにあったの」
「心配かけてごめんね」デイブは下を向いた。
ルビーが隠さずに言ってくれた事で申し訳なさを感じた。
「いい調子ね!私、弱虫でいて欲しいのよ。6歳のままでね」とルビーは明るく言った。
「そうもいかないけど…努力する」
「弱虫でいて欲しいのよ」ルビーはもう一回、声を少し硬くして言った。
「知ってるよ」デイブは静かに微笑んだ。
「いられない何かが起きているのね?前みたいに?」とルビーが聞くと
「僕じゃない誰かが狙われてゆく。それを助けられるのは僕だけなんだ」と心がずしっと沈むように重く答えた。
瞬間!
グラグラっと家が大きく揺れた。
「地震⁈」ルビーが思わず立ち上がると、デイブは座らせて「すぐ収まるよ」と抱き寄せた。
小さいけれど揺れは続いている。
チェイスが不安を煽って陥れようとしている。
もうすぐ行くぞとわざわざ言って闇に連れて行く準備を見せつけ始めた。

to be continue…



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