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【roots2】 《6章》泣き虫オスカー・2


次の日、出張していたオースティンも飛んで帰って来たので。今後どうするのが良いのか6人で話し合う事になった。

「広い世界で働けるようになってるんだな」
オーウェンがオースティンに言った。
確かにデイブの今までの旅ではこの街が精一杯だ。
オスカーの旅は別の世界が広がっているのだろうか。なら、そちらへ行くのが安全じゃないのか?
デイブは思った。オスカーは僕の弱点だ。チェイスが狙うならトコトンするはず。こんなものじゃ済まされない。
「オースティンの知っている土地で暮らしやすい場所があったら、2人はそこで新生活を始めたらどうだろう」デイブが言うとすぐさまオスカーが反論した。
「どうして僕を遠ざけようとするんだよ!!僕は父さんといたいんだ!!いたいんだよ!」
と言って拳を強く握り自分の膝を叩いた。
「僕の旅ではこの街でしか動けないのに、オースティンを見ると広く動けているようだから。オスカーの事業を拡大するチャンスだと思ったんだよ」とデイブが諭した。
「別に僕は稼ぎたくない」オスカーがふてくされた。
「あら、オスカー。父さんはどこにいても、どんな時でもあなたの味方なのよ。わからない?」とルビーが言うとシャーロットがクスっと笑った。
40歳近い男が20そこそこの若者にすがってワガママを言う姿が不思議でいつまでも小学生のままに見えて。
つい笑ってしまった。
「笑ったらいけないよ」デイブが優しくたしなめた。
「仕事は大事だぞ。オスカーの旅では必要がないかもしれないけど。デイブといたいなら稼いでくれる方がありがたい。なんせ、コイツは無職だからね」とオーウェンがデイブを見て笑った。
「バレてた?」
「コラムを受けようとしてたのよ、ね。」とルビーが助け舟を出した。この隙にと、オースティンがおそるおそる口を挟んだ。
「あの…状況をもう一度説明してもらっても良いですか?」
「そうだな、何が起きてるのか。整理しようか」
オーウェンが話し出した。

まず、
○今回の旅の始まりで起きたチェイスの攻撃でデイブが大火傷を負った事。
○チェイスの力が増していてデイブに対する恨みから何をするかわからない事。
○旅の中にドラゴンが出て来なかった事。
○ルビーが記憶を見られない事。
○デイブが前を忘れていないので大人な事。
そして、
○チェイスがデイブの周りに危害を加えると宣言している事。
○チェイスの目的はデイブを乗っ取り、全てを自分の意のままな世界にしたいという事らしい。
○チェイスを地中に一度沈めた事で地熱が高く、地震が起きている事。

○昨日、オスカーの庭を陥没させた。

「こんな事になって本当にすまない。僕が皆といたいばっかりに…巻き込んでいるんだ…」デイブが頭を下げた。その頭をぽんと叩いてオーウェンが続けた。
「これで済むとは思えない。とりあえず、2人を遠いどこかで商売が出来るようにしてくれないか」
「だから!!」オスカーが言うのをシャーロットがいさめた。
「デイブを苦しめないで。オスカー、私たちに出来る事をしてデイブを助けましょうよ」
オースティンは「すぐ手配します。実はアリソンに会ってきたんです。2人に会いたがってた。まずそこに行きます」と言った。
「それは素晴らしいな。オースティンよろしく頼むよ」とデイブが言った。オスカーは不満げだ。
「オスカー、明日行こう。とりあえずだ。そんな顔してんなよ」オースティンが言っても尖った口はそのままだった。
「オスカー、デイブが一番お前を大切に思ってる。だから、チェイスが狙うんだ。弱点はここには置いておけない。行くんだ。わかるな」オーウェンが強い口調で言った。オスカーはますます拳に力を入れて下を向いた。

デイブは仕方ないなと一つため息をついて
「僕とルビー、オーウェンとディランも新しい場所に移るよ」と言った。オスカーは顔を勢いよく上げると「引越すの?」と驚いた。
「じゃあ、僕らも一緒がどうしてダメなんだよ!!」と怒鳴った。
デイブは悲しそうな顔でオスカーをみると
「オスカー夢はどうしたんだ。アリソンに食べてもらうべきだよ。僕は沢山の人にオスカーのパスタを食べてもらいたい。死ぬかもしれない旅に同行はさせられないよ」と言った。
「死って…僕が助けにならないとでも?」
オスカーが泣き出した。
デイブはオスカーの横へ座り肩をさすった。
「僕はオスカーに会いたくて。会いたくて会いに行ってしまった…あの日会いに行かなければ巻き込まないで済んだのかもしれないな。オスカー。僕らは子どもを持った事がないんだ。君はね。僕とルビーの大切なたった1人の息子なんだよ。
これ以上、危険な目に遭わせたくない。
シャーロットと生きてくれ。生きていたらまた会える。僕の手紙を忘れたのか?」
オスカーは顔を手で覆ったまま首を振った。
デイブはそれを見て小さな子をあやすように頭を撫でた。
「オスカーが守るべきものは一つだけ。シャーロットとオースティンと一緒に自分の旅を大事にしなさい」
オスカーは堰を切ったように頭を抱えて泣きじゃくった。

to be continue…
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今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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