見出し画像

【roots2】 《6章》泣き虫オスカー

明け方、聞いたこともない爆音で目が覚めた。
鳥たちが恐れおののいて鳴き騒ぐ声がする。
「何かしら⁈」
「ルビーここにいて。ちょっと外を見てくるよ。
絶対に外に出ないで。いいね、」
とデイブがベッドから降りると
「私も行く!」とルビーが目力を全開にして訴えたのでデイブは仕方ないと手を差し出して「一緒に行こう」とルビーの手を取り寝室を出た。

外に出ても変わった様子は無かった。
朝靄の中、オーウェンがかけて来てハァハァと息を弾ませながら聞いた。
「大丈夫か?何があった?」
「わからないけど。すごい音だったな…尋常じゃない…」
デイブかそう言うとオスカーとシャーロットが転げるように凄い形相で駆けてきた。
「庭…に、にわが…」
デイブたちは急いでオスカーの家に走った。
デイブの元の家。今はオスカーの家の庭がゴッソリ全て陥没していた。立派に育て上げた畑が跡形もなく無くなり大きな穴が出来ていた。
5人は言葉もなく穴を目の前にただ呆然と立ち尽くす。
「すまない、オスカー」デイブが絞りだした声で謝った。
「お前のせいじゃないだろ」オーウェンが言うと
「デイブが背負わないで」とオスカーも応えた。
穴の深さに心がえぐられた。
野菜の葉一枚も実一つも残っていない。

横に建つ家もいつどうなるかわからないので、
とにかく大事な物を持ってデイブの新しい家に避難することにした。
オスカーもシャーロットも声も出ない。
この先の生活の全てを一瞬で失って、途方に暮れていた。
何十年もかけて土を耕し、良いものにするために心骨を注いで来たものが。全てがもう無い。
一瞬のうちに消え去った。
この気持ちをどこへ持って行って良いのかも判らず。ただ息が止まりはしないかと、たまに呼吸を意識してするくらいしか出来ない。
そんな時間がただ流れていった。
誰も一言も話さなかった。

どのくらい時間が流れたか。日が沈みかけていた。飲まず食わずただ呆然と過ごしてしまった。
ルビーが「ご飯にしましょう」と立ち上がるとオスカーも立ち上がった。
ルビーが「オスカーはシャーロットといてあげて」と優しく声をかけて台所へ1人で行った。
オスカーはまた静かに座るとシャーロットを見た。疲れ果てたシャーロットの横顔に自分の衝撃しか考えていなかったことに気付いて静かに膝に手を置いた。シャーロットもハッとして、小さく悲しい笑顔をみせた。

デイブが台所へ行くとルビーが声を殺して泣いていた。駆け寄ると「あの子が可哀想で…一途に一生懸命にやって来たのに」とポロポロと流れる涙の隙間からささやくように話した。
デイブは静かに抱きしめて優しく背中をさすった。
「ごめんなさい。私が泣いて」
「いいんだ。泣いてくれて助かった。僕もやっと息が出来る」

オスカーの好きな魚のスープを作って夕食にした。皆食欲は無かったけれど、ルビーのスープは体と心に染み渡り少しづつ皆を正気に戻してくれた。
シャーロットが「美味しい」と小さく微笑むと食卓がホッとした空気に包まれた。
オスカーが泣き出した。泣き出すと止まらない。
肩を上下にオウオウと声を出した。
「すみません!…すみません」と謝るオスカーに
「今日は泣いて、明日から考えよう」とオーウェンがオスカーの背中を叩いた。
ドンと叩かれてオスカーの顔が上を向いた。
「おかわり!」とやけくそなのか涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で元気いっぱいに言った。
ルビーが皿を手に取って「沢山入れるわね」と次々注いで、本当に皿いっぱいの山盛りになったので皆笑ってしまった。

その夜はオーウェンも一緒に泊まってくれて心強かった。

to be continue…

毎週水曜日更新📙✨

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?