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【roots】青年期 《八章》新しいくらし

目が覚めると僕の隣に寝息が聞こえた。
暗くてよく見えない。
白いワンピースが微かに見える。
ルビーだと思った。

ここはどこだろうとキョロキョロ見渡してみた。
一度目の旅では花園の後はまた廊下に戻っていた。でもあの廊下では無さそうだ。
あの古い洋館の壁紙に染み込む匂いはしない。
目が暗さに慣れてきて部屋の中だとわかった。

細く光がみえる。
側へ行くとカーテンから漏れる光だった。
そっとカーテンをめくってみると陽射しが目に鋭く差し込んで来た。
「おっと」ルビーを起こさない様にカーテンの中に入り窓から外を見た。

見慣れない街。
車、自転車が行き交い。レンガ作りの建物が並ぶ。窓につく自分の手を見て驚いた。
歳を取ってる!明らかに子どもの手では無かった。
窓に映る自分の顔をまじまじと見つめた。
20代か、30代か?背も高い。
この街のどこかで働いている?
ルビーと結婚してる?何がどうなってる??

落ちつけ。深呼吸。
この旅は僕のためにある旅なんだ。
悪い様にはならないさ。自分に言い聞かせた。

外の時計台が8時を指していた。
ルビーを起こそう。

シャーっと音を立ててカーテンを開け。ルビーの寝ている横に腰掛けた。
「ルビー、朝だよ」
ルビーは眩しそうにして目をパチパチと瞬きをしてから飛び起きた。
「デイブ⁈」「あー!驚くのも仕方ない。僕も今すんごく驚いてるよ」と微笑んだ。
寝起きで、まだ状況が飲み込めないルビーに
「デイビッドです。どうぞよろしく」と右手を出した。
「ル、ルビーです。多分。こちらこそ、よろしく」と戸惑いながら僕の手を両手で包んで
「私、大人になってる?ここはどこなの?どうなってるの?」と矢継ぎ早に質問した。
僕は大笑いして
「まるで一回目の旅で君に初めて会った僕だ」と言うとルビーはバン!と僕の腕をはたいた。
「ふざけてる場合なの?」と笑って
ルビーは肩につく長さの髪を手で整えてきちんと座り直した。
僕は「オーウェンを呼ぼうか」と言ってみた。
「そうね、困った時に助けてくれる大切な友達。こんな時でも来てくれるのかしら?」
ルビーは心配そうに自分の腕をさすった。
まずは身支度を整えて、それからオーウェンを呼んでみようと言う事になり。部屋の引き出しや棚を開けてみた。
衣類や生活用品は大体揃っているみたい。
僕はコーヒーでも入れようかと豆を探したけれど、見つからなかった。
上の棚か、下か?と探しているとチャイムがなった。「はい」ドアに向かって返事を返すと
「俺だよ!オーウェン」
僕は勢いよくドアを開けた。そこには大柄で髭もじゃで髪の毛もモジャモジャの男が立っていた。
一目でオーウェンだとわかる。
「オーウェン!!」子どもの様に思い切り抱きついた。オーウェンも強く抱き返してくれ安心感で満たされた。
「そろそろ、自己紹介してほしいね」とオーウェンに言われて体を離し、手をシャツで拭いて差し出しながら
「デイビッドです。会いたかったよ」と言った。
オーウェンは力強く握って「俺もさ」と言ってくれた。
部屋へ案内するとオーウェンは驚いて
「ルビーか⁈」と叫んだ。「2人一緒だったなんて!そうか良かった!!」と顔に手を当てて喜んで「デイブが清らかな者だって知ったんだね」と続けた。
僕もルビーも何が何だか判らないまま3人は三角形に立ったまま、まるで一瞬空気までが止まっている様だった。
「コーヒー探してたろ?」オーウェンが言ってまた空気が流れ出した。
「オーウェンは何でも知ってるんだな」と僕は少し微笑んでコーヒーを受け取った。

to be continue…

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