【roots】少年期
《序章》花の教え
むせるような甘い香りに目を開けると花に囲まれていた。
夜は明けていて、明るい陽射しに朝露が草花を喜ばせている。
軽やかな笑い声があちらこちらから聞こえていた。
「ちょっと。踏んでる!」
頭の上から声がして見上げると、見たこともない美しさの真っ白な大きな花が怒った顔でこちらを見ていた。
驚きと美しさにたじろぎながら
「す、すみません!」と言って
乗っかっていた大きな葉から体をずらした。
花は葉をパンパンと自分の茎に打ち付けて土を払う。
「僕は何故ここに…」
花は呆れた口調で。