#04 とんでもございません
間違った日本語というものには、よく遭遇する。
月猫はいま、某通販サイトのコールセンター業をしており、「正しい日本語」を叩き込まれている真っ最中なわけだが。
今回のタイトルの言葉も、無意識につかってしまっているひとは多いのではないだろうか。
これは、間違った日本語にあたる。
間違った日本語、というと、よく慣用句などがとりあげられるが、わたしは少し違う角度がら切り込みをかけたい。
「アシンメトリー」。
この言葉についてのお話。
きっかけは、パートナーとの何気ない会話だった。
「靴下、左右の色違ってたよ」
「え、まじ?」
洗濯物をたたんださいに、黒と青の靴下をセットにしてしまった間違いに、わたしは冗談めかしてこう続けた。
「まあいいじゃん、アシンメトリーってことで。オシャレオシャレ」
そのセリフに、パートナーの顔色がかわった。
「アシンメトリーって、形の左右非対称のことをいうのであって、色では使わないだろう」
「うそ、使うよ?色が左右非対称のときにもつかえるでしょ」
Webで早速調べてみる。
ううむ。なかなか広義な説明。
わたしは広義な言葉だから、色にも使えるはずだと力説。
しかし、納得しないパートナー。
他サイトでは、「ファッションでは主に、左右のシルエット・長さが違うデザインのことを指すが、色が左右非対称、大きさが左右非対称のものに対しても使う。また衣服に限らず、左右で髪の長さが違うヘアスタイルなど、髪型に関することも使われている」などとの記載もあり、みせてはみたが、それは勝手な解釈であって正確とはいえない、との反撃。
ならばと広辞苑を検索してみた。
いやいやいや。
さらに曖昧な感じ。
「デザインなどで色が左右違う場合とか、アシンメトリーっていうじゃん」
「いや、そもそも色が左右非対称ってどういうこと?」
議論は終わらない。
「色が左右非対称ということがありえない。アシンメトリーとは形状にもちいるべき言葉だ」
と、パートナーの主張はこう。
「なら、左右非対称な色がどんなものか見れば腹落ちできる?」
わたしは再度ネット検索をした。
そして、この画像をみせた。
「ほら、これ!左右の形は同じだけど、色のパターンが違うでしょ」
すると、パートナーはこう答えた。
「なるほど、色が違う、ではなく、色の配置が違うという意味か」
つまりは、こういうこと。
色というのはそもそも、匂いや音のように、感覚的な概念であり、かたちがないもの。
ゆえに、左右非対称という、形状を表現する言葉で、色、を表現するのは誤りであるということ。
デザインなどの意味合いでつかうのならば、正確には「色のパターンがアシンメトリー」「配色がアシンメトリー」と用いなければ意味が通らないということだ。
なるほど、確かにそのとおりだ。
我々ふたりはよくこうやって、認識の違いについて議論をすることがある。
理屈っぽいだの、面倒くさいだの思われそうだが、月猫は結構すきな時間だったりする。
自分の当たり前がそうではないと指摘されれば、新しい価値観を知る機会になるし、今回のように言葉の意味を調べるきっかけにもなりうる。
ただ、同時にこうも思う。
言葉は生き物。
間違っていても、誤用であっても、言葉というのは時代とともにかわっていくものだ。
今回は細かい認識を確認することになったわけだが、究極的に、言葉はつうじてなんぼ。
正しさよりも、意志疎通ができればよいと月猫は考えていたりもする。
ただまあ、今回のように認識に差があることは、認識すべきところだろう。
伝わらなかったり、間違った意味で伝わる可能性があることを、脳裏においておく必要がある。
というところで。
月猫、たまにはいい話をするじゃないか。
などといわれたあかつきには(注:勝手に言ってますw)、こうやって正しい日本語で答えることで、タイトルのセリフを正しく案内しておわりにしたい。
「とんでもないことでございます。」
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