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私の買った心臓

私には妻がいた。
14も下の、若い女だ。

私の実家は近所では有名な地主だったため、
求婚の申し出も多かった中で、一際美しい女を選んだ。

決して料理が下手だったわけではない、掃除だって洗濯だって、女なりの精一杯だったのだろう。

だが、私は女を怒鳴りつける。
私の父親も、そうやって母を躾たのだ。
私は何も間違っていない。
これが亭主の威厳なのだ、と、信じて疑わなかった。

結婚してから女は、出会った頃にもまして大量に絵を描くようになった。
風景、食物、植物…その中で、美しい男の絵があった。
そいつは村1番の美少年と言われた男だった。ただ、心臓の弱かった貧弱な男だ。20になる前には死んだが。
私は許せなかった。女が私以外の男のことを考えていることが。
私の前では1度も笑わず、結婚してからずっと目すら合わせないことが、全てが許せなかった。

私は絵を捨てた。
女は黙って破り捨てられたそれを眺めていた。

ある日、女は海に身を投げた。

「私は、私の心臓を売りにゆきます。」

そう残して。

お前も、あの男が良かったのか。
あの男に心臓を売りに行くのか。


明くる日、私は朝焼けの空を見ながら女を思う。
来世では、もっと優しくしよう。
来世では、きっと私を愛してくれよう。
来世でも、また、出会えるようにと

ただ、願うばかりだ。


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お久しぶりです.
MoonCalmと申します.


前回あげたものの続編で、男目線の話になります。
愛とは難しいものですね.
僕は、僕を大切に思ってくれる身近な人を大切にできる人間でありたいです.

また、新しい作品もゆっくりのんびり執筆していけたらと思っています.
次回作が上がった時もぜひ遊びに来てください。
どうぞよしなに.

では、またどこかで.

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