2.紫陽花ゼリー〜赤の塊と青のシロップ〜
小さい頃から実験が好きだった
色の変わる薬品、かけたら溶ける物体…
親からも気味悪がられていたし、友達もできたことなかったけれど、家の横に作ってもらった私だけの実験室、ここが居場所だった。
青海に出会うまでは。
彼女は同じ理科研究部の部員だった
私以外にこの部に入る人がいるとは思ってもいなかったしどうせ来なくなるだろうと思っていた。
が、青海は毎日来た。
そして、様々な昆虫や花、小動物を標本にしてはコレクションしていく。
私たちはどこか似ていた。
今まで沸いたことない感情が私の中で混ざっていく気がした。
高校2年生の夏、理科研究部のある第二校舎が点検工事のため3ヶ月の休部を要された
そのまま休部してもよかったのだが、私は親すら入ったことない自分の実験室に、初めて人を招いた。
青「大豪邸じゃん…自宅横に実験室?しかもこの広さ?赤琳って相当お嬢様なんだね…」
赤「お嬢様、かどうかはわからないのけどパパもママも私のこと毛嫌いしてるし、ここが私の居場所なの、好きに使って。標本を作るならそこの台、解剖とか溶かしたりしたいなら流し台の近くでね。薬品を触りたい時は一声かけて、鍵がかかってるから」
青「解剖とか興味ないので大丈夫です。とりあえずここのスペース借りるね。」
赤「溶かすのも見ていて楽しいのに」
青「私は形に残したいの、って薬品オタクの赤琳に言ってもしょうがないか。」
初めてできた大切な人
他の誰かのものになるなら溶けてなくなってほしい。 この感情に名前をつけるなら、執着?依存?
…恋?
いずれにせよきっと叶わないであろう感情ごと、薬品に混ぜ込んだ。
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青「そんなこともあったよねー、3ヶ月も赤琳の実験室借りれて大助かりだった」
赤「卒部してからでもいつでも来たらいいわ。」
青「それは普通にありがたいな」
青海の黒黒とした瞳、溶かしてしまいたい
その髪も、その指も、その唇も_
ぼーっとかき混ぜた薬品の渦を眺めていると
今日は赤琳が書いてね、と日誌が渡された
この日誌を書くのも後何回なんだろう。
青海と一緒にいれるのも…
青「あ、赤琳の家、論文の紫陽花育ててるでしょ?あれ見に行かせてよ」
赤「…えぇ。いつでも」
この感情は私の中で溶かしたい。
青海にはきっと強すぎる。酸化した気持ち。
理科研究部日誌
記入者 神崎赤琳
5/16(火) 雨
あっという間に5月も半ばです。
論文用の紫陽花、満開になるのが楽しみです。
今まで化学ばかりに目を向けていましたが花を育てるのも面白いと感じました。色々な種類の花を育てて、薬品をかけて溶け方を比べたりしたいなと思いました。
今日行ったこと 青海が標本作りに失敗したカエルを塩酸で溶かす
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次回 7/7 3.紫陽花ジェラート〜甘みを抑えた青と紫の上に赤い花びらを添えて〜
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MoonCalmと申します.
僕は、自分の脚本や小説に出す人物の名前にとてもこだわりがあります.
例えば今回の 神崎赤琳 と 玉城青海 はアルカリ性、酸性、そして宝石の名前をイメージしています.
赤琳は琳という漢字が宝石の意味を持ちます.
また、赤色の紫陽花はアルカリ性を示します.
青海は青玉、青い宝石のことです.
酸性の紫陽花は青色になります.
また、これは書き始めてから知ったことなのですがホルマリンは酸性だそうです.
交わりそうで交わらない、似ていながらも非なるもの、そんな2人を名前でも表現しているつもりです.
さて、次回からは話が終わりに向けて進んでいきます.
Prologue、Epilogueを除くと4話しかない短いお話ですが、最後まで楽しんでいただけたら幸いです.
今度は長編小説や、星新一さんのショートショートみたいな小説にも挑戦してみたいです.
どうぞよしなに.
では、またどこかで.
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