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空談②

 ひとりになった部屋は案外広いと思ったが、断捨離したから広く感じるのかも。
 もう、百華もいない。
 いつも家に来る時は面倒だと思っていて、でも私からは何も話さなくていいから楽だと思っている。

 聿は今の時期は忙しいらしい。
 聿だけが愛される人間に育ったその分を、私は愛される事なく過ごすのが当たり前と思っていた。
 その罪悪感で聿は自由を失う。
 可哀想という言葉だけが頭に浮かぶが、心は伴っていないと感じる。

 逸は何をしているのか私は知らない。
 大切な人がいると聞いた事がある。
 それも私は知らない。
 その人にどんな風に笑って、どんな風に触れるのか…知らない。
 逸も見つけてしまったから、義務のように私に関わりを持っている。
 だから私の身体を見ても奮い立つ事もない逸に、嬉しくなる私がいる。

 今ひとりの私は、誰かの為にお礼もしない、私好みのはちみつ紅茶も無い。何も無い安心の中にある。


 無意識のうちにTVをつけると、小さい頃に観た映画がやっていた。
 子どもは親を想い、小さな身体で辛い生活を強く生きる。
 親は子どもを想い、どうしようもない自分と向き合う。
 そんな、よくあるような感動を促す映画だ。
 私には無い世界に没頭して観ていれば、ラストには涙を流している。
 涙が出れば、それに抗うことなく声を我慢する事なく泣けばいい。
 理由なんて要らない。
 ただ、人には泣く事が必要だと思う。
 自分の為に泣けないのなら、自分とは関係の無い造られた世界で泣けばいい。
 どんなに泣いても涙が枯れないのなら、定期的にそれをする。
 もちろん笑う事も同じようにしている。

 でも、どうしても怒りだけは出せないまま、身体に溜まり続けている。
 きっとこのまま溜め続けた怒りが脳を侵して、心を侵して私を壊してくれるかも。
 それを私は待っているのかもしれない。

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