物悲しい
朝は寒い。
布団が肌から離れるからか、ほんの少しだけ窓が開いているからか。
慌ててプルオーバーパーカーを着て、テレビを付ける。
少し落ち着いた身体を起こしてキッチンへ。
鍋でお湯を沸かす。
私は料理をしない。
料理上手な母が買ってくれた、マルチ鍋はお湯を沸かす為だけに使われている。
誕生日に貰った、おしゃれなコーヒーメーカーに残っているコーヒーをシンクに流す。
「私コーヒー嫌いなのに」
カフェオレボウルにコーンスープパウダーを入れてお湯を注ぐ。
そして、私の申し分の無い朝食が湯気を立て出来上がる。
ようやく暖まった身体に昨夜の跡を見つけて、心が震える。
でも、それは一瞬のこと。
部屋を見回せば、ベッドの周りに私だけの洋服。
空気の入れ替えに開けられた窓の隙間。
自分の為の誕生日プレゼント、
コーヒーの残り。
昨夜、買って来て盛り付けただけの、サラダとローストビーフを、食べた後の食器はそのまま。
「もう!」
怒ってみたけれど、私の家で朝食として食べていったのは、その時間まで側にいてくれた事の方に喜び、気持ちが変わる。
そんな全ての事が、物悲しい……
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?