見出し画像

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第24話


結里子ー横顔

お式の帰り道。
ケイの運転する車の中
カメラの画像を覗き込みながら
とても良いお式だったねと
振り返って話していた。

カメラに収められてる幸せなみんなの笑顔。
やっぱり、上手いなぁ。ケイの撮った写真はどれも心を感じるいい写真。

あっ。
その中の何枚かに私の顔が写っている。
微笑む自分の横顔。自分で言うのも変だけど
すごくいい顔している。
ケイがかけた魔法でカメラの中の私は
キラキラ輝いて見えた。

そっと視線を移して見た。
運転するケイの横顔は瞳の色がすごく綺麗な薄いブラウン。顎のラインと耳にかかる髪。
風になびくたび、前髪も揺れる。

「今日の弾き語り、すごくよかった。
ケイがこんなに歌が上手いなんて知らなかった。ピアノまで弾けるなんて、すごいね」
「そう?ちょっと緊張しちゃったけど
心を込めたつもり」
「ピアノ、習っていたの?」
「うちの母親がピアノが趣味で、昔は近所の幼稚園で園児対象に教えに行ったりしてたんだ。
俺も一緒に行って、弾いてた位なんだけどね」
「そうなんだね。歌声も高音がきれいでいいなあって思った。私、声低めでコンプレックスあるから」
「え?そうなの。俺はリコの声。落ち着いていて、いいなあって思ってたけど」
「ここでも、無いものねだりだね」
毎朝の様に、通勤で一緒だし
同じマンションに住んでいるから
敢えて二人で出掛ける事もない。

お互いの部屋に少しだけ寄って、お茶した事もあったけど他愛無い話をするだけ。
LINEで話すし、お墓参りで送ってくれた時は
二人きりのドライブだったけど
急いで帰らなきゃ行けなかったし。

今、二人きりの時間なんだなぁって思うと、何話そうか意識してしまって、言葉があまり出ない。

流れる景色を眺めながら
ぼんやりとそんな事を考えていたら
ケイが
「今度、一緒に出掛けない?」
「あっ。今、二人だけで出掛けた事は無いなぁって思ってた」
「ははっ。そうなんだ」
「うふふ」
「ドライブが良いかな?どこか行きたい所とかある?」
「そうねぇ」
「ダブルデートじゃなくて、2人でデートだよ」
少し意地悪な言い方のケイ。
「あ、やだ。もう」
「あははは」
「私は結婚式で、ご両親にもお会いして
少しづつケイの事を、知ることが出来てたけど
私の事は、たくさんは話して無いよね」
「そうだね」
「私の実家の近くの、井の頭公園はどう?」
「良いね。案内してくれるかな?」
「任せて!」

助手席で、同じ方向を見つめながら進む会話。
心地いい風に吹かれてふと香る香水。
その時、ケイからの新しい香水のプレゼントの提案。紘太の香りを変える事は、また一つ前に進むためのアイテムになるのかな。



#創作大賞2023
#恋愛小説
#デートの誘い
#進むためのアイテム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?