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島は鳥とともに

小豆島に住み始めて驚いたこと。
それは、常に鳥の声が聞こえることだ。

都会で聞こえるようなハトやカラスの声はあまり聞かない。
(そもそも都会でよく見るドバトを見ない。キジバトをたまに見かける程度)
代わりに、スズメやメジロ、イソヒヨドリ(※1)にツバメ、ヒタキ類など、季節や場所に応じて様々な鳥が鳴いている。

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<イソヒヨドリ>

朝はさえずる鳥の声で目が覚めるし、家の外で友達と電話していたら背後の鳥の声を普通に拾って「どこで電話してるん?天国?」と聞かれることもしょっちゅうだ。
最近では鳥の声が聞こえすぎて環境音みたいになっており、意識しないと鳥の声を認識していない事まである(ぜいたくな悩み!)。


小豆島で出会える鳥たち

これは瀬戸内海の他の島にも言えることかもしれないけど、小豆島は鳥の種類も豊富だ。
都会ではついぞ見かけないような鳥に日常的に出会える。

SUPで海沿いを進んでいると、岸に突き出した岩の上にちょこんとたたずんでいるチドリと出会ったり。
大きな鯛をがっしり掴んで悠然と飛ぶミサゴを見上げたり。

キジと出くわすこともある。
キジは比較的出会う機会のある鳥で、道路を横切ったりするのに出くわしたり、田んぼの真ん中でぼんやり突っ立っていることが多い。
オリーブ畑の中で、メスを二羽従えてハーレムデートをしているキジも見た事がある。
その時のオスは胸を反らせ、堂々たる風格でオリーブの木々の下を歩いていた。あの勇姿を見ると、チーム桃太郎にスタメンで参加できたのもなんだか納得できる。


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ぴょこぴょこと歩いてはピタッと立ち止まる姿が可愛いツグミ。
草むしりをしていると、近くの木に止まってじっとこちらを見つめているヤマガラにジョウビタキ(人に驚いて飛び出してくる虫を狙っている)。
同じ枝にぎゅうぎゅうしながら止まって文字通り「目白押し」状態のメジロ。
冬になると水辺に姿を現す有象無象のカモさん達。
などなど…。

とにかく遭遇する鳥の種類が豊富で、生活しているだけでバードウォッチングを楽しめる環境なのである(2008年までは小豆島に孔雀園があり、そこから逃げ出した孔雀の末裔が今も島内に生き残っている、らしい。僕はまだ出会っていないけど)。


これだけ鳥が身近にいると、彼らの暮らしや生態について俄然興味が湧いてくる。
そんな時に僕の好奇心を満たしてくれるのは、やはり本だ。
そんな鳥にまつわる本で面白いものがいくつかあるので、僕が読んで面白かった本の紹介をしたい。


①鳥に興味を持ったらまず読んでおきたい本
『鳥ってすごい』(樋口広芳、山と渓谷社)

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鳥の飛行についてはもちろん、羽毛やくちばしの構造、信じられない距離を移動する渡りや、カラスを筆頭とした鳥類の高い知能についてなど、鳥にまつわる様々な事象を、最新の研究結果も駆使しつつ分かりやすく教えてくれる本。
新書サイズでありながら、口絵やイラストも豊富で読みやすい上、鳥を鳥たらしめている様々な特徴について丁寧に教えてくれるので、鳥について知りたい人の初めの一冊に最適だと思う。



②島と鳥との関係を面白おかしく描く
『そもそも島に進化あり』(川上和人、技術評論社)

さて、これまでの文章を読んでいて「鳥」(とり)と「島」(しま)を見分けるのが少し大変だったのではないだろうか?
それもそのはず、「島」は元々「㠀」と書いていたのだ。
つまり、「鳥」の下に「山」がのっていたのである。
鳥が山の上に乗っている事から「島」という漢字が作られた。
そう考えると、島は鳥と共にある、ともいえる。

そんな島と鳥との関係について書かれた本がこちら。

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小笠原諸島にて調査・研究を行なっている鳥類学者の川上さんによる、島という特殊な立地で生物がどのように進化し、多様化していくのかについてまとめた本。
川上さんは鳥類学者でありながら、(大阪生まれの血が騒ぐのか)面白い文章を書いてしまう人(※2)なので、専門的な知識がなくても楽しく気軽に読めるのが良い。
というか「こんなにふざけてて大丈夫ですか…」と読んでてたまに心配になるけど。

それでも流石は鳥類学者。
島というニッチな環境が生き物の多様性や進化にどう関わってくるのかをきちんと教えてくれる。



③一家に一冊常備しておきたい
『子どもと一緒に覚えたい 野鳥の名前』
(山崎宏監修、マイルスタッフ)

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そもそもそんな田舎にいないから、鳥なんてあまり見かけないよ…?
という方にオススメなのがこちら。


【子どもと一緒に覚えたい 野鳥の名前】
タイトルに「子どもと一緒に」と付いているが、大人でも充分に楽しめるしっかりとした内容。
都会でも比較的見つけやすい鳥32種類が豊富な写真と美しいイラスト付きで紹介されている。その上、1種類当たり4ページかけてその鳥の生態や特徴、似ている鳥との見分け方などを記しており、さらには二次元バーコードを読み取ると鳥の鳴き声まで聞けるという丁寧さ!
子どものいる家庭はもちろん、そうでなくても家に常備しておくと何かと楽しい本だ。



④言葉と絵で楽しむ野鳥観察
『草木鳥鳥文様』(梨木香歩、福音館)

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『渡りの足跡』(※3)などで鳥への深い愛を描いた梨木果歩さんと、鳥を描くイラストレーター、ユカワアツコさんの美しい共作エッセイ。
梨木さんがこれまでに出会った鳥たちについての文章と、その言葉を彩るユカワアツコさんの絵。

幼い頃の思い出や山での出会い、意図せぬ遭遇など、それぞれの鳥と梨木さんとの出会いを味わいながら、描かれた鳥をじっと眺めるうちに、いつしか自分とその鳥との出会いまでもが想起されてくる。
まさに、家にいながらにして味わえるバードウォッチング。

ちなみに、一番初めに紹介した本の著者、樋口広芳さんが文中に登場していて、こういった予期せぬ偶然(セレンディピティ)があるのが本の良さだな、と思ったりもした。


野鳥観察という身近な自然の楽しみ方

コロナのせいで散歩が習慣になった人もいるかもしれない。
そんな人は、散歩の合間に鳥を探してみるのも楽しいと思う。

意識して目を凝らし、耳を澄ませてみれば、身近な所で意外な鳥との出会いを楽しめるかもしれない。



※1:イソヒヨドリは僕が小豆島に来て一番好きになった鳥。
美しい青色とオレンジ色の体色。
屋根に止まりながら尾羽をピョコピョコさせたりする可愛らしい動き。
そして何よりその美しい囀り!
朝に彼らの鳴き声で起きることの何と幸福な事よ。
(イソヒヨドリの鳴き声はこちら↓で聞くことができます。
「サントリー 日本の鳥百科 イソヒヨドリ」 )

※2:川上和人さんの著書はだいたいどれも面白いが、鳥類学者という立場で恐竜への愛を綴った『鳥類学者無謀にも恐竜を語る』や、火山にジャングル、無人島などで研究を続ける理系蛮族の日々を描いた『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』などは特におすすめ。

※3:梨木さんの透明感があって内に秘めた凛とした強さを感じられる文章や、作品を通して感じられる全ての生きものへの暖かい眼差しが好きで色んな作品を好んで読んでいるが、鳥に関しての本ならこの『渡りの足跡』がオススメ。日本へやって来る渡り鳥達の足跡を訪ねて知床や諏訪湖を訪れる。”渡り”という本能で紡がれる冒険。世代をまたいで連綿と繰り返す鳥たちの意思を越えた生命の強さに触れるエッセイ。

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