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友達以上 恋人未満ならぬ、恋人より上 家族未満の人

わたしには、友達以上 恋人未満ならぬ、恋人より上 家族未満の人がいる。その人とは、4年前にマッチングアプリで知り合った。当時わたし24歳、彼32歳。24歳のわたしは毎日が退屈で退屈でたまらなく、アプリで知り合った人とおしゃべりをして、時にはセックスをするというドキドキを楽しんでいた。わたしの生活に一切関係ない人とだからこそできることだ。もちろん恋人がほしいという気持ちはあった。

彼のアプリでの印象は、ぐいぐい来る人。という感じだった。わたしが何度メッセージを無視しようと、送り続けてきた。それに対して不快感や恐怖感はなかった。むしろおもしろく感じていた。そして会う約束をした。会ってご飯を食べ、彼の家に泊まってセックスをして解散した。それから週2.3回会うようになった。すべてがとても自然な流れで、不思議な経験だった。一緒にいるとドキドキするだったり、わたしのことどう思っているのだろうとヤキモキするということは全くなかった。ただただ楽しくて、心地よく幸福だった。それから数ヶ月経ち(2ヶ月くらいだったかな)ふと、わたしたちは付き合っているのだろうか?と思うようになった。週に何度も会い、一緒にご飯を食べ、セックスをする。決してセフレという感じではなかった。モヤモヤしていたところに、彼から「彼女じゃないの?」と聞かれた。わたしは「さあ。知らない。」と答えた。「じゃあ付き合おう。」と言われた。わたしは「じゃあ」が気に食わなかったので、何で付き合いたいのか聞き、「好きだから」と言わせた。

そこから1年、恋人として過ごした。状況が変わったのは、彼が仕事を辞め、職業訓練学校に通い出したころからだ。そこで気になる女の子ができたらしい。わたしは毎日のように恋愛相談を受けた。よく分からなかった。その女の子に「好き」と伝えたという報告も受けた。よく分からなかった。彼は決定的なことは言いたくない人である。あの子に好きと伝えたが、「付き合おう」とは言わなかったらしい。そしてわたしにも「別れよう」とは言わなかった。

わたしたちは別れてからも、今までと同じように会っていた。彼はわたしからの誘いは絶対に断らなかったし、恋人よりも優先してくれていた。もちろんセックスはしていない。一時は、こんな奴とは縁を切るぞ!と自分に誓ったこともあったが、できなかった。惜しいと思ってしまったのだ。彼以上に波長の合う人がいなかったから。しかし彼女からは疎ましく思われていた。当たり前である。そのうちにわたしにも恋人ができたが、それでも今までと同じように彼と会っていた。恋人と過ごすよりもずっと楽しかった。もちろん彼の存在は、付き合う前から伝えていたし、会う承諾も得ていた。でもうまくいかなかった。分からなくもない。わたしたちは半年足らずで終わりを迎えた。彼のほうはその前に終わりを迎えていた。

お互いに恋人がいても、いなくても、わたしと彼の関係は変わらなかった。去年、わたしは都会の暮らしに疲れ、田舎に住みたいと思い、彼に地方移住を提案した。彼は受け入れた。一緒に暮らすということだ。慌ただしくあちこち見に行くなかで、わたしはふと「わたしたちの関係は一体なんなのだろう」と思った。ときどきこういうモードに入るのだ。このころ、周りの人に彼氏がいるのか尋ねられると、気分で「はい」と「いいえ」を使い分けていた。以下、彼の言葉集。

「子供ができない限り、誰とも結婚する気はない」「〇○ちゃん(私)はパートナーともなんかちがう」「ほかに好きな人ができる可能性は、〇○ちゃん(私)と付き合っていても、いなくてもある」「一緒に住む前に親に挨拶しないとだめなら、住むのやめる」

なんだか、あまりいい人には見えない(笑)
わたしは彼とどうなりたいのか自分でもよく分からない。絶対に結婚したいわけでもない。ただ一緒にいると楽しい。この感情だけでここまできたのだ。

移住のはなしは白紙になった。
それから1年が経ち、今年7月から一緒に住むことになった。わたしは今実家に住んでいる。だから無職でも落ち着いていた。しかし来月には実家を出るとなるとそうもいかない。精神が乱れ、ヒステリックになり、怯えているのだ。ならば実家にいればいいじゃないと思うかもしれないが、もう引くに引けない状況なのである。そしてまたあのモードに入るのだ。「わたしたちの関係って?」「一緒に住む先にあるものはなに?」
彼は答えた。

「一緒に住むってことはそういうこと」「お金ないから結婚なんて言えない」

わたしは涙がでた。嬉しかったのだ。一応結婚する気があるということに。彼36歳フリーター。夢はイラストレーター。お金があるのは何年後だろうか。別れてから3年、一度もセックスはしていない。

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