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しろくろコンチェルト〜第四楽章〜
ガチャ…
いつものように鍵を開けてドアを抜け室内に入る。
少し埃っぽいスタジオ…天窓からから差し込む日差しが幾筋も光の柱を作っている光景はどことなく神々しさを感じる。
そしてその中央には、今は響板を閉じられて静かに眠るグランドピアノ。
「……」
僕は時折こうしてここを訪れ、掃除をしているのだが、やはり人の気配がないとすぐに埃が積もり、黒く艶やかだったピアノもすぐにうっすらと白くなってしまう
しろくろコンチェルト〜第三楽章〜(後編)
「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作、ピアノソナタ第13番、変ロ長調、いくよ…お兄さん」
一瞬の静寂の後、カノンちゃんの指が鍵盤を走り旋律を紡ぎ出す。
今日、聴くのは都合4度目となるこの曲だが、カノンちゃん、ソナタちゃん二人がそれぞれ普通に弾いたもの、僕の欲望が凝り固まったようなブーツを履いて、僕のペニスを踏みつけながら演奏したものと4者4様、この曲の出だしの部分だけでも全く違う。
き
しろくろコンチェルト〜第三楽章〜(前編)
ある月の半ばの金曜日、時刻は午後7時を回ったところ。
週末の開放感か街を歩いているスーツ姿の人々もどこか晴れやかな表情だ。
僕はそんな人並みを会社の窓から眺めてから、キーボードを叩いて最後の一文を入力する。今日急に言われた急ぎの資料だったけど,どうにか完成に漕ぎつけた。
「あの…そろそろあがろうと思います」
殺伐として澱んだ空気の職場で僕は先輩職員に帰宅する旨を伝えた。
今日はカノンちゃんの
しろくろコンチェルト〜幕間〜
ある休日の午後。
柔らかい日差しが注ぐスタジオにピアノの音色が響いている。
一音一音確かめるように、積み上げるような正確なタッチの中に、潤いとでもいえばいいのか、弾き手の気持ちや人となりを感じさせる柔らかさを含む旋律。
「すごい…前とは全然違うね」
「そ、そうかな?」
ピアノを弾いていたのはアタシの親友にしてライバル、左神原ソナタ。
彼女は時計仕掛けのような正確な演奏が持ち味だったか、それが
#3 ヴィーゲの教え
僕がお屋敷で働かせてもらえるようになって早くももう3年経った。
お嬢様に拾われた頃は本当に学のない、小汚い子供で、お嬢様の拾った野良犬か、ままごとのお供くらいにしか他のお屋敷の使用人には思われていなかった、だが…
「頼まれていた荷物はここに置いておけばいいですか?」
「ああ、すまんな助かるよ」
最初こそ僕は靴磨きの下男だったが、お屋敷で他の人の仕事を手伝ううちに、すっかりと周りの皆に頼られる
#2 執事見習いのアルフレッド=シューメーカー
「そこは優しく指を添えて、触れるか触れないかの撫でるくらいですよ…」
「は、はい…」
「そんなに強張らずに、そう…上手ですよ…」
「……」
「んっ…そんなに強く押し込んだりしてはダメですよ、ゆっくりと、そう…前後させて」
「わ、わかりました…でも、申し訳ありませんお嬢様、何度もしているのに、その…上手くできなくて…」
「大丈夫ですよアルフ、最初は誰でも同じです、ほら、大分上手くなってき
#1 お嬢様と靴磨きのアルフレッド
すっかりと日が暮れて温かい明かりか灯る部屋、質素な使用人の服を着た少年と、仕立ての良い黒い上着とプリーツスカートの制服を纏った少女が向かい合って座っていた。
いや、正確には少年は床に直接座っており、少女はソファに腰掛けている。
「お、お嬢様…」
少年が切なげな声を発する。
少年にお嬢様と呼ばれた少女はその様子を天使のように優しげな表情で見下ろしている。
そして…
少女の白いタイツと、景色が映
princess crush #4
太陽が南の空に昇りつつある最中……木々に覆われた庭園の奥にはいまだ朝の気配漂い、
ようやく目を覚ます者、これから眠りに就く者……目には見えぬ小さな多くの命がその
朝霞の緞帳の奥に息を潜めている。
カツカツカツ……
その静寂の森を行く二つの靴音、甲高く石畳を踏みつけるその音は女性の二つ……
朝霞の緞帳が主役の登場に幕開くように晴れ渡り、靴音の主たちの姿があらわになる。
一つは黒と銀に彩られた長
princess crush #3
東の空、稜線のかなたに今日も朝日が昇る。
朝霧に包まれた深い森の闇を払うように、新しい光を投げかけ、夜鶯が追い立てられるように飛び去ってゆく。
ここはリューネブルク王国、善良で思慮深い国王を戴き、慈愛に満ちた姫が見守る小さいながらも活気に満ちた国。
早朝の王都……気の早い鍛冶屋が炉に火を入れ、教会の鐘の代わりとでも言わんばかりに景気のいい槌の音を響かせる。
その音で目を覚ました一人の少女。
princess crush#2
広大な王宮の庭を冬の訪れを告げる冷たい風が吹く抜けてゆく…
長い歴史を誇るこのリューネブルク王国の王城は拡張を繰り返しいまや庭園といえど
林を一つ飲み込むほどの規模である。
そしてここに一人の青年がいた。
名をアルフレッド、歳若いが長く王城で庭師を務めるベテランである。
幼い頃から王城付きの庭師に弟子入りし、庭師の引退後は彼がこの近隣諸国に
名を響かせる美しい庭園の管理を一手に任されている。
princess crush #1
暗い部屋…永らく使われていないのか湿ったかび臭い空気の流れるこの部屋に一人の少女がたたずんでいる。
唯一の明り取りである天窓から差し込む月光は、毒々しい赤い光をたたえ、彼女の淡い金髪に紅い色彩を添えている。
少女が紅い月を仰ぎ見る…ゆるくウェーブした長い髪がゆれ、まるで稀代の彫刻家が己の命を注ぎこんで彫り上げた
かのような、端正で…しかしどこか幼い面立ちがあらわになる。
まるでエメラルドを削り出
しろくろコンチェルト〜第二楽章〜
左神原 ソナタ(さがみはら そなた)靴のサイズ 22.0センチ幼い頃から英才教育を受けて育った秀才美少女ピアニスト。機械のように正確で狂いのない演奏で着実にコンクールで勝利を重ねている。理詰めで精緻な演奏だが、時に感情のなさを指摘されることもある。コンクールでは黒系のドレスと靴を好んで着ている。
日が傾き始めた音楽室、私はいつも日課にしている数曲の練習曲を奏でる。もう何年も何年も弾き続けた曲だか
しろくろコンチェルト〜第一楽章〜
右見野 カノン(うみの かのん)靴のサイズ21.5センチ最近流星のように現れた天才美少女ピアニスト。ピアノの経験自体は浅いが、既にいくつかのコンクールで賞を取り、直感的で感情豊かな演奏を得意とするが、ときにそれが過ぎて、アレンジ曲かと批評を受ける。
コンクールでは白系のドレスと靴を好んで着用する。
コツコツ…どこからか硬い床を踏む靴音が聞こえてくる。僕はその音の方を見ようとしたが、周囲は壁のよう
eclosion〜少女の目覚め〜
倉須 まゆ(くらす まゆ)
靴のサイズ19センチ
ストラップシューズが似合う可愛らしい女の子。
みんなに優しい性格だが、かつてうっかりと虫を踏み潰した感触に説明出来ない感覚を覚えてしまい、時折人目を盗んで虫を踏み殺している。
倉須 文香(くらす あやか)
靴のサイズ23センチ
まゆの母、おっとりとしていて清楚な優しい女性だが、かつては足だけで会社の重役も政治家も服従させたと言われる伝説的なミスト