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【cinema】ロストックの長い夜

6/25鑑賞。EUフィルムデーズにて。
よく覚えてたな…

冒頭からひたすらモノクロで綴られるストーリー。日々、無為無策に生き、そのやるせなさを増え続ける難民、移民の存在に当てつけ、怒りを増幅させる旧東独の若者たちの心の中はずっとこんなグレーだったんだろう。

だけど、暴徒と化したドイツ人住民たちが過激な抗議行動を起こし始め、シュテファンはその最中、気になる女性と関係を持ち、景色は突如としてカラーになる。それは、シュテファンの心象風景を表しているんだろうか。何に対しても無気力、無関心だった自分は、過激なことに手をそめることで「生きている」と感じ、活力が湧くという…。

これは今から14年前の1992年8月24日、旧東ドイツのロストックという町で起きた移民(難民)に対する暴動を基にした映画です。欧州情勢がシリア難民受け容れで揺れる今こそ、見るべきテーマだと思います。欧州に限らず、全世界の人々が見るべきテーマだと思う。

展開としてはよく出来ていて、始終目が離せません。若者たちはみんな強い信念(ここでは、信念と言うより偏った思想と言うべきかな)を持っているようで、それは常に危うさを孕んでいる。大人たちは何が正しいとかこうすべきだということを子供たちに明確に教えることができずにいる。それがこのロストックの暴動にまで発展した経緯だと思います。

ロマの人々が大勢押し寄せ、騒がしく、周りを汚し、自分たちの国にはびころうとしている。いや、今きちんと仕事を持って定住するアパートもあるベトナム難民の人々に、自分たちの仕事は盗られたんじゃないか。ロマも彼らも同じ––––。今じゃ珍しくない発想の転換だと思うんですが、共産主義が崩壊した直後の東独ではものすごい脅威だったんだと思う。

この映画はシュテファンという父親が政治家である意味とても恵まれた環境にいる青年が主人公ですが、彼はその現状に全然満足していない。また、ベトナム難民の女性やシュテファンの仲間たち(あまり裕福でない過激思想の持ち主もいる)など、様々な若者にフォーカスして、暴動に至るまでの数日が描かれています。誰の目を通して見ても明るい未来は想像できない。だけど、皆、そんな日々を生きていかなければならない。見ていて本当にツライです。だけど、こんな事件があったんだと知ることに意義がある映画。あの頃、これを起こした若者たちは今どうしているんだろう。それがとても気になりました。

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