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【cinema】母よ、

2週間ぶりの映画館での鑑賞。とにかく私の脳は映画を欲しすぎていて、早く満たさなければ、この空っぽな感じをどう埋めるべきかと考えた挙句、久しぶりに1日で3本観に行く選択に至りました。普段なら見ても2本なんだけどね。それでは足りないと思い。そして、その第1本目がコレだったのです。

「母よ、」か。「母よ」でもなく「母よ。」でもなく。含みある邦題だなぁと思ったのが第一印象。そして、兄役のナンニ・モレッティと主人公であり、妹役のマルゲリータ・ブイのくぐもった泣きそうな表情のポスターに惹かれて。

ストーリーとしては、老いた余命いくばくもない母の看病と自身が映画監督として、作品で扱っているテーマ然り、ハリウッドから招致した出演俳優とのやりとり然り、また別れた夫に引き取られた娘の扱い然り、全てにおいて正念場である女性マルゲリータの物語。

ナンニ・モレッティ自身の半生を投影させているとのことなんですが、だからか、ちょっとした違和感を感じるんです。モレッティ自身が経験したであろう苦悩がさらけ出されていて、観ている側は居心地の悪さを感じてしまうのもあるのかもしれません。ときにヒステリックになり、誰かに当たってしまう彼女にとって、母の存在は心の拠りどころであると同時に、足かせでもあるのだと。

とにかく終始不穏な空気が漂っていて、大事件が起こるわけでもないけれど、観ている人も今ではなくてもいつか対峙するかもしれない様々な問題を一気に抱えた彼女が180度方向転換したり、思考回路を劇的に変えることなく、物語は進むんです。

と書いたら、つまんないの?と思われるかもしれないのですが、決してそうではなく、何だろう、身につまされるものはあるなと思わせられる。マルゲリータは決して「イヤな女」じゃないけど、いつも自分のことばかりを中心に考えているから今の彼女があるんだと気づくからです。

若い頃には言えなかった、聞けなかった、知らなかった母の想いや姿を、彼女の病状が進行していくにつれて目の当たりにするマルゲリータの全ての疑問はラストに凝縮されています。

「母さん、何を考えているの?」
「明日のことよ」

泣きそうになった。

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