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【cinema】いつまでも一緒に

2017年43本目。EUフィルムデーズ2本目。
リトアニア映画🇱🇹

両親と娘の一見普通の3人家族。同じ家で暮らしているのに、それぞれが自分の世界に住んでいるかのよう。外科医の母とB級映画のスタントマンとして長期間家を空ける父。ほとんどの時間を独りで過ごす娘は虚言癖がある。互いに理解し合おうという意志さえも感じられないこの家族の間で、他愛のない嘘が深い傷を生み、とある事件をきっかけに母は家族を再び一つにしようと決心する。深い孤独を抱える3人は打ち解けていくことができるのか…。(公式サイトより転記)

自分に当てはまるシチュエーションに一切ないのに、なぜかものすごく、この母親役の女性に感情移入してしまって、やるせない気持ちになってしまった。

言わば彼女は、才色兼備のお嬢さんママ(←こんな言葉あるっけ?)なんです。自分は外科医でバリキャリウーマン。娘がジャンクフードを食べるのを許さず、夫が(あまりお上品でない)仕事仲間とつるむのも良しとしない。世間体を気にしすぎ、自分の思いどおりに事が進まないと気が済まない質の完璧主義。

そんな彼女に同情なんて、と思われるかもしれないけれど、女って誰しも程度の差はあれど、自分のことより、自分の近しい人を俯瞰して見て、もっとこうした方がいいのに、きっともっと良くなるのに、ということを思うんです。自分のことのように。それがすごく押しつけがましくなってしまう。彼女はその典型で、わかっていても、やめられない。夫も娘も家にいると全然安らげないし、彼女の見ていないところでは、好き勝手して生きている。

そんな彼らが一つになることなんて、一切なくて、居心地の悪さだけがどんどん募っていき、観ている方はドキドキする。この家族は一体どうなってしまうのかと。くっついては離れ、離れてはくっつき。娘が失踪して、自ら警察に行き、母に会いたくないと言わしめたのは、まさしく母である彼女のせい。カウンセラーの言うがままに、3人が交互にハグするシーンがあるけれども、そのぎこちなさと言ったらない。これでも一緒に暮らしてきた家族なんだろうかと。

人の気持ちってホントに難しいよな、と思う。どんなに相手のことを想ってしたり、言ったりすることが、全くの見当違いだったり、逆に相手を追い込んだり、苦しめたりしている。何気ない一言が、相手を傷つけているなんて、ザラなんだろうなと。家族だったら尚更。

ラストのキモは、大型商業施設の屋根崩落事件です。自分は突然水浸しになった家の片付けに1人で追われて、夫と娘を外に避難させるんです。あの商業施設に行けば、朝早くても開いてるでしょ!と2人を追いやって、ここでも「自分一人でカンペキに」片付けようとする。そんな彼女は彼女のまま。そこで流れたニュースが、例の屋根崩落事件。(余談: あ、これ、4年前くらいに起きたよな、と思って調べたら、実際はリトアニアじゃなくてラトビアの事件でした。たしか私がバルト三国行った直後に起こって、結構本国では問題になりました。自分が訪れた国の事件だったので、記憶の片隅にあったのかも)

幸い二人は事件に遭うことなく無事だったんですけど、彼女は二人の無事な姿を見つけて、号泣するんです。もう今まで抑えていた感情を一気に爆発させて。でもそんな妻、母の姿を二人はつゆ知らず。

妻業、母親業ってこんなもんじゃないんだろうけど、私はそのどっちにも携わっていないけれど、それでも痛いほど、彼女の気持ちがわかってしまって。理屈なんて抜きに。それは、自分が女だからなんだろうなって。あと、私が彼女と同世代だからなのかもしれない。私がもう少し若ければ、また違った感想を抱いたのかもしれない。夫や娘の気持ちに寄り添うことになるのかも。でもそれは出来なかった。

タイトルも泣ける。この三人は「いつまでも一緒に」いることができるのかな。皮肉にしか思えないけれど。ある意味、そうであってほしい、という願望を込めてなのかな。

久々に見たリトアニアの映画は、結構心にグサリと、ズシリとくる内容でした。

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