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マッチョなアメリカにサクリと切り込む映画。

30年後の同窓会

これは紛れもなく、アメリカという国の在り方を問う作品だと思う。今も昔も何も変わっちゃいない。その狭間にあって苦しんでいる人々が多くいるんだということがわかる話。

男ひとりで酒浸りになりながらバーを営むサルと、過去を捨てて牧師となったミューラーのもとに、ある日、30年にわたって音信不通だった旧友のラリー(ドク)が突然現れる。ドクは1年前に妻に先立たれ、2日前に遠い地で息子が戦死したことを2人に打ち明け、死んだ息子を故郷に連れ帰る旅に同行してほしいと依頼する。30年前のある事件で大きく人生が変わってしまっていた3人は、ともに旅をし、語り合うことで、人生に再び輝きを取り戻していく。(映画.comより転記)

単なる男3人の昔を懐かしむストーリーじゃない。男ウケするジョークシーンは多々あったと思うけど、あの頃は良かったよな、よりはあの頃の辛い思い出をどう消化しようかと、過去に決別してきた男たちが30年経った今、もう一度あのときに向き合おうするストーリーだと思う。

それでもこの作品に暗さはない。ドクの息子が本当は「戦死」ではないことがわかっても、30年前に起こった出来事がまだ彼らの重荷になっていても、暗さはないのだ。

だけど、アメリカという国を肯定はしていない。決して。

あくまで戦死扱いでドクの息子を葬ろうとする軍の上層部の姿勢は、昔からずっと変わらないアメリカという国の姿だ。ベトナム戦争の兵士であろうとイラクやアフガニスタンに駐屯する兵士であろうとなんら変わりはない。

こんなふうに言ってしまうと、この映画自体、戦争批判がメインテーマの、固く、刺々しくて、近寄りがたいものに思われるかもしれないけど、そこは、リチャード・リンクレイターの手腕が発揮され、男たちの友情とともに笑いあり涙ありの物語になっていて、見た後は、ああ見てよかったなと思えるのだ。

戦争そのものへの批判というより、過去にどう折り合いをつけて、他人と、そして自分と向き合うかを考えさせられた話だった。

あと、自分の身に重大な出来事が起こった時に、ふと思い返して、何年も会ってないあの人に連絡してみようって思える人、私には居るのかなって。

2018年73本目。シネリーブル神戸にて。

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