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【cinema】バベットの晩餐会

この映画の存在を知ったのは、大学時代、同じようにミニシアター系の映画が好きで、それぞれが映画を見てはメールで映画通信なるものを作って送り合っていた仲の友人が、相当オススメだ!と言ってきたからでした。ただ、その時は授業やらバイトやらで見ることはできず、ずっと頭の片隅にあった作品でした。今回リバイバル上映で劇場で観ることが叶い、とても嬉しくなってその友人にも久々に連絡を取ったりしました。

20世紀のデンマークを代表する女流作家カレン・ブリクセンの同名小説を映画化した群像劇。19世紀後半、デンマーク辺境の小さな漁村に質素な生活を送る初老を迎えたプロテスタントの姉妹がいた。そこにパリコミューンで家族を失ったフランス人女性バベットがやってくる。その後、彼女は家政婦として長年姉妹に仕えるが、宝くじで大金を手にいれると、村人のために晩餐会を開きたいと申し出る。(映画.comより転記)

相当端折ったあらすじです。マーチーネとフィリッパの美人姉妹はその容姿から様々な男性の目に留まるも牧師である厳格な父の影響もあり、誰からの求婚も受けず年老いてしまう。しかし、彼女たちに悲壮感は一切なく、敬虔なルター派として慎ましい生活を丁寧に送ってきたのが感じられる。こんな人が昔はいたのねと思うくらいに。そして、19世紀のユトランド半島とはそういうところだったのだと。

しかし、シリアスなのに笑いあり。コメディ的要素も見受けられ、ところどころにクスッと笑えるシーンや言葉があったりする。
特に信者のうちの一人、ハレルヤ!を連呼するおじいさん。
それにしても男性陣の諦めの早さったらない。もっと強引に行けよ、マーチーネ、ローレンスに惹かれていただろうがよ、と言いたくなりましたが、そこはこの映画の主題ではないんですよね。

パリコミューンとか世界史で習ったきりだけど、バベットはそれで家族を失い、祖国には何も残さずユトランド半島へ渡ってきた。彼女の作る料理は姉妹の心を解きほぐし、素朴ながらもユトランドの寒々とした光景とは裏腹に温かい日々は過ぎていく。そんなバベットが祖国フランスの宝くじで大金を当てて、彼女に頼りきっていた姉妹は困惑するもバベットの選択に委ねることになって…。

いつのまにか互いにいがみ合うことしかしなくなっていた信者同士のとげとげしい心をほぐしたのもまたバベットの盛大な料理だった。料理がメインテーマの作品は数え切れないほど見てきたけれど、匂いまで感じられて、作り手のこだわりや想いがこんなふうにじーんと伝わるのってなかなかないです。彼女がどうしてここまで姉妹や信者たちのためになれたのか。それもまたわからない。行く手のない自分を置いてくれたからという恩だけでここまでできるんだろうか。

繰り返しますが、この老姉妹の佇まいがかなりいいんです。こんな清い人たちがいたんでしょうか。本当に見ていて清々しくなります。部屋の中の調度品や彩りなんてろくにないけれど、こんな暮らしがあったのだと。

友達がいいよと薦めてくれた理由がわかる気がしました。まさか劇場での観覧が叶うと思わなかったので先にDVD買って放置していたんですが、買っておいてよかったです。素敵な映画でした。

※ポスター画像がイタリア語なのは、イタリアの映画サイトから拝借したからです。日本やフランスのにはキレイなのがなくて。

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