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【cinema】ジュリエッタ

11/18鑑賞。
ペドロ・アルモドバルの作品ということは頭に入れず、観に行ったら、全てがアルモドバルワールドで彩られていた。
とは言っても、私はそこまでアルモドバルに詳しくない。観ていない作品もあります。それでも、これぞ彼の作品だと思うのは、赤を基調とした鮮やかな色彩で描かれているからです。彼独特の表現だと思うし、それが観る者の心を鷲掴みにしてしまう。

さて、この映画は、アリス・マンローの短編小説3編を一つにして映画化されたものだそうです。
12年間行方知れずの娘アンティアの近況を思いかけず知ることになった母フリエタ(英語だとジュリエッタ)の苦しみと、娘をそんな状況に追い込んでしまった母の過去が回顧録となって描かれています。

数々の映画を見てきた身としたら、目新しさはなく、「よくある話」なんです。フリエタとアンティアの父ショアンの電車の中での印象的な出会い。貪り合うかのように愛し合ってできたのがアンティア。けれどちょっとした諍いから、彼を永遠に失ってしまったフリエタは、まだ十代の娘にすがりつくかのように罪悪感に苛まれながら鬱と闘って生きてきた。そんな彼女の前から、アンティアは消えてしまった…。

けれど、いつもアルモドバルの映画を見ていて思うのは、母の子に対する想いや眼差しの深さを強く感じることができるということ。単に温かいと言い表すには惜しい、余韻みたいなものがあります。うまく言い表せないけれど。女性に対する愛に満ち溢れている。どの作品も。本当に。

それと独特の世界観。今回だと、ショアンとフリエタの仲を取り持ちつつも、壊した一因でもある家政婦の女性マリアンの存在。いかにもな「ザ・スペイン」の顔立ちの女優さんが演じていて、ある種の怖さも感じられて、巧いなぁと唸らせられた。見てもらえたら、わかるかと思います。彼女だけ、何となく異質な感じがするから。

アルモドバル特有のフェティシズムも健在で、電車の中でのあの寝方はあかんやろー!と心の中でツッコミながら見ましたが、それでもとても美しい作品です。こんなにパキッとした色彩で、心安らぐ作品も滅多にありません。久々に彼の作品を見て、とてもとても落ち着きました。ラスト、アンティアに会いに行くとか、もうどうでもいいんです。彼の世界にどっぷり浸かることができて、良かったです。

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