【cinema】エル・クラン
今から30年前のアルゼンチンにて、実際にあった話。とにかくこのプッチォ家の父アルキメデスの目ヂカラが全てを表していると言っても過言ではない。これは、絶大なる力を持った父親に支配された息子の話。恐ろしい出来事に知らず知らずのうちに加担していた家族の話…。
そもそもこの原題をカタカナにしただけのタイトルが安易すぎる。エル・クランて。私たち日本人はこれをどう収拾つけたらいいのさ。と思って、ネットで意味を調べてみたら、スペイン語で「一族」って意味だそうです。映画の内容からしても、わかる、わかるよ。それなら、もう某有名な邦画タイトルに擬えて、「プッチォ家の一族」はダメだったんだろうか。そこまで壮大な物語でもないから、ダメか。
あらすじ…
1983年アルゼンチン。プッチォ家は父と母、5人の子どもたちのいるごくフツーの中流家庭。ある日、長男が通う学校の友達が誘拐され、姿を消す。以降、金持ちだけを狙った身代金事件が多発し、近所の住民たちが不安な毎日を送っていた。そんな中、プッチォ家の主のアルキメデスは、妻の作った夕食をなぜか2階にある鍵のかけられた部屋に運ぶという不審な動きをしていた。(映画.comより引用しましたが、一部誤りがあったので修正しました)
こんな簡単にはすまされないあらすじなんですが、まー、見てみたらわかります。でもあの頃の南米なんて、何が起こってもおかしくないなというのが正直なところで、アルキメデスみたいな「任務」を遂行している輩は少なからずいたんでしょう。
でもこの映画の宣伝の仕方はビミョーで、家族全員がまるで加担しているかのような描き方ですが、そこは違うと思ってください。全員が狂ってるわけではありません。一家の主に付き従わざるを得なかった息子の苦悩が描かれています。「悪の凡庸」に拐かされた妻の姿が描かれています。何しろ諸悪の根源が、自分の犯してきた罪を罪とも思っていないところが、恐ろしいところだと思います。
それにしても実際の彼らのその後が凄まじい。よくもまぁいけしゃあしゃあと無実を訴えられるな、おぬし(アルキメデスのことです)、と言いたくなります。ラグビーのスーパースターだったアレハンドロは、常に苦しんでいた。鼻呼吸ができず、口呼吸しかできなかった所以はそこにあるんだと思う。子供は親を選べない。悲しい事実があったことをこの映画で思い知らされました。まぁご覧ください。退屈はしないです。
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