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現実はおさまりのいい記憶をズタズタにする。

ベロニカとの記憶

コレ、めっちゃ雰囲気いいオトナのラブストーリー的なイメージがあるけど(私はそう思い込んでいた)、実際は、こじらせ男子の恋愛模様を回想シーンで見せる話ですねん。しかもそこにポップさや、爽やかさはなくて、結構暗い。青暗い雰囲気が漂っている。

2011年のブッカー賞を受賞したジュリアン・バーンズの小説「終わりの感覚」を、ヨーロッパや日本でもヒットを記録したインド映画「めぐり逢わせのお弁当」のリテーシュ・バトラ監督が、「アイリス」のジム・ブロードベント、「さざなみ」のシャーロット・ランプリングらイギリスの名優を迎えて映画化したミステリードラマ。(映画.comより転記)

だそうです。たしかに小説っぽい話運び。

60歳を過ぎ、ひとり静かに引退生活を送るトニーのもとに、ある日、見知らぬ弁護士から手紙が届く。それによれば、40年前に別れた当時の恋人ベロニカの母親だという女性が、トニーに日記を遺しているという。思いもよらない遺品から、トニーは長い間忘れていた青春時代の記憶が呼び覚まされていき、若くして自殺した親友や初恋にまつわる真実をひも解いていく。(これも映画.comより転記)

『ストーリーテリングの巧さに感服。回想シーンと現在が混在するもそれが混乱することなくスルッと頭に入ってくる感じ。男の激情に駆られた失意は友もかつての恋人も追いやることに。記憶って都合の良いように塗り替えられて皆の中に息づいてる。哀しいけど救いのある話』

と見終えてすぐにつぶやいた。

色々レビューを見ていると、主人公トニーに寄り添えるかどうかで、評価が分かれるようだ。

私は…わりと寄り添えた。しかし、ヴェロニカやら元妻マーガレットからしたら、トニーは、なんて言うか「お子ちゃま」だ。そして、記憶は自分の都合の良いようにいくらでも塗り替えられるし、古き良き思い出にできるんだなぁと痛感した。無意識のうちに、塗り替えて、人はそうやって日々生き抜くのだと。

この映画が、全体的にしっとりした雰囲気で包まれているのは、まさに、リテーシュ・バトラ監督と、俳優陣ジム・ブロードベントとシャーロット・ランプリングらの力量によるものだ。題材や結末自体は、なんて言うかネットリしてると思うのだ。これが、舞台や俳優陣を変えると、絶対に違う作品が出来上がったと思う。スペインとかイタリアとか南欧で作ったら、ベッタベタだ、マジで。

ということはさておき、この話はトニーを主体として進み、彼はなぜ亡き親友エイドリアンの日記が、かつての恋人ヴェロニカの母親の遺品として自分に遺されたのか、それを辿っていくわけです。それが「ミステリー」と称されるのかもしれないけれど、ヴェロニカの気持ちを慮ると、何とも言えない気持ちになる。そこだけは苦しくて、苦しくて、堪らない。

トニーはどちらかというと身勝手で、自分のことしか見えてないどうしようもない初老の男だけど、多分彼女の現在を思い知ったことで、ほんの少し変わることができたのだ。だから、救いがある、と思えた。人が変わるキッカケって、ちょっとしたことだと思う。今まで見向きもしなかったポストマンに挨拶をし、声を掛け、お茶をどうぞ、と言うまでになった彼は、変わった。

それは、かつて敵いっこなかった親友エイドリアンと、愛していたヴェロニカに対する罪滅ぼしでもあるのかな…。

それにしても本国のポスターと日本版ポスターの違いに驚き。

まさにコレだよ、この感じ。

日本版が爽やかにしすぎている。私はコレに騙された。

2018年21本目。シネ・リーブル神戸にて。

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