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【cinema】さざなみ

やっとこれの感想を書く気持ちになりました。これとグランドフィナーレは腰を据えて、じっくりと書きたい気持ちの作品で。とてもとてもいい映画なので、片手間に書くことはできず。とはいえ月並みな言葉が並ぶとは思うけれど。

土曜日に結婚45周年の記念パーティを控えるジェフとケイト。しかし月曜日に手紙が届き、山岳事故で死んでしまったかつての夫の恋人のゆるぎない存在が、突如として夫婦の関係に入りこんでくる。夫は過去の恋愛の記憶を日毎に蘇生させ、妻は存在しない女への嫉妬心を夜毎重ねていく。それはやがて夫へのぬぐいきれない不信感へと肥大に変わり、夫婦の土曜日までの6日間が、45年の関係を大きく揺るがしていく。(映画.comより転記)

もうこのとおりの内容なんだけどね。ケイトの心模様の描き方が抜群なんです。シャーロット・ランプリングが巧いのかな。彼女は、昔「まぼろし」という映画に出てからこういうイメージの女優さんになってしまった(言い方に語弊があるかもしれないけど、でもそうなんです)ように思います。静かに、ヒタヒタと、感情を押し殺しながらも内に秘める思いは誰よりも強い女性を演じると右に出る者はいない。

私は彼女の目元と口元が好きです。ともすれば塗りたくって、足しまくって、老いていることをより強調してしまいがちですが、彼女の薄化粧は上品で、いい年の重ね方だなぁと思えるのです。西洋人ぽくない目元と薄い唇。とても色っぽくて、70才とは思えません。

45年連れ添ったジェフとケイトには子どもがいない。それも二人の関係が微妙に揺れ動く一因だと思う。そして、写真で明らかになるジェフとカーチャの決定的な過去。これがこの映画のキモだと思います。

私なら、昔のことは昔のことだし、夫の心が死んだ恋人の元へ舞い戻ってしまったとしても割り切れそうな気がする。でもケイトは違う。どこか冷めていて、誰よりも理性的で落ち着いて見えて、本当は夫のことをただひたすら愛してきた、一人の女なんだと。

気のおけない友人にも話せない夫の過去。パーティーでの彼の「感動的な」愛の言葉。恐らく彼自身がそれに酔いしれているなと感じたのは私だけでなく、ラストのケイトの表情と仕種で見てとれる。多分ケイトが思っているほどジェフは昔の恋人に思いを馳せているわけではない。けれど。どんなに長く一緒にいても、その時間だけでは図りしれない男女の隔たりがあるんだなと思いました。

決して万人受けする内容ではないと思うけれど、私は好きだったな。

IMDbで見てたら、面白いトリビアが書かれていた。気づかなかったやー。以下原文。

Seasons seem to change during the sequential days in the movie. On Tuesday, it appears to be late winter; all trees are bare and the oaks have brown leaves. While on Wednesday, on the paddle boat, it appears to be early Spring; the shrubs in the field wear fresh leaves. Similar to Thursday, where the fruit tree at the entrance of the factory is blooming. On Saturday, it appears to be winter again, the trees are bare and the oaks have brown leaves.

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