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【cinema】VIVA

キューバ映画。

美容師を生業としながらもドラッグクイーンとして歌い踊ることで生きる喜びを見出したヘススというゲイの青年が主人公のこの物語。慎ましい生活を送りながらも独りで暮らすことに不自由していなかった彼のところに突然現れたのは3才の時から生き別れになっていたムショ帰りの父親アンヘルだった…。

なんかね、この父親がろくでなしなんですよね。若い頃は腕っぷしの強さが自慢でボクサーとして活躍していたんだけど、呑んだくれて、人を殺して刑務所に入ってて。よくヘススの母親も殴っていたんだとか。で、ヘススがクラブで女装して踊ることには大反対で、暴力沙汰起こして止めるんです。けど、ムショ出の中年オヤジに稼ぎ口があるわけでもなく、ヘススも美容師の仕事だけでは、父親まで養うことができない。で、どうするか。体を売るしかない。

見ていて、とてもとても苦しくなるのに、この父と息子は反発し合いながらも寄り添おうとする。お互いに思ったことは口にする、態度で示す。これってすごく重要なことなんだなぁと思いました。ろくでなしのオヤジだけど、弱さを垣間見せて少しかわいく思えたり、だからヘススは追い出すことはできなくて。

途中、クラブのママがヘススを救いに来るんです。余程か彼(彼女か)の方が、ヘススのことを子供同然に真剣に考えてくれているんだけど、ヘススは父親と生きることを選ぶんです。何でか、あ、わかる、と思いました。そんな経験はないけれど。

何度か泣きそうになったシーンがありました。
ヘススがショーで本当の自分をさらけ出せた瞬間。
ママが店で熱唱して、どん底だったヘススを抱き寄せたとき。
ヘススが自分の想いを諦められなくて、父の反対を押し切って歌ったときに、父親がそれを受け入れた瞬間。

キューバって二面性のある国だと思います。大らかで、明るくて、貧しくてもそんなもんさと受け容れる国民性がありながら、カストロ政治(共産主義)を忌み嫌ってアメリカに亡命する人々もいる。キューバへ旅行した人は、多分その両面を目の当たりにすると思うけど、それでも心惹かれるのは何でなんだろう。不思議な国だなと思います。

私もこの映画を見て、キューバに無性に行きたくなりました。苦しい内容なのに、とても心温まって、いつかこの空気を肌で感じてみたいなと。

因みにタイトルのVIVAは、ヘススの源氏名です。VIVAになった瞬間、彼は解き放たれた。同じような境遇の人が、みんな彼のように感じられる機会を得ることができたら、世界はもっとよくなるのにと思いました。いい映画でした。

ラテンビート映画祭にて。

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