「ほろ酔い」あいみょん
40代半ばにもなると、若い世代の人たちが作る音楽が自分の中に入ってくることなど、無い。
50代に入るともう、何が何なのかも分からない。
「この方は何をされている方なの?」という言葉を口に出すか出さないかの世界になってくる。
あいみょんの「ほろ酔い」という曲。
「浮気はしたさ 数え切れないほど」
「タバコはやめれず灰皿は溢れ」
等、現在の価値観に合わない歌詞がたくさん出てくる。
昭和の歌手に河島英五という人がいた。
河島英五という名前を知らなくとも「酒と泪と男と女」という曲は聴いたことがある人は多いかも。
なぜなら、オッサン達はカラオケでこの曲を歌いたがるので。
今はそうでもないと思うけど。
「飲んで〜 飲んで〜 飲まれて〜 飲んで〜」という歌詞の曲。
いい具合のニッポン・ブルース曲だ。
「またひとつ 女の方が偉く思えてきた」という歌詞をこの時代に書いてるのがスゴイ。
この曲は1976年発売の曲らしく、俺が社会人になった90年代前半には既に「オッサンがカラオケで歌う曲の定番」と化していた。
河島英五は2001年に亡くなっていて、その娘が歌手活動をしている、ということを何かで知った。2016年頃だと思う。
売れなさそう、と思った。
だが、「河島英五には娘がいて、歌手をやっている」ということだけ脳に刻まれた。
数年前、2020年頃からだろうか、この「河島英五の娘」の曲だと思われる音楽が耳に入ってくるようになった。
イオンの中の店とか、ファミレスみたいな場所で流れている。河島英五の娘の曲が。
いやぁ、良かったな、売れて。河島英五の娘。
お父さんより売れてるんじゃないか?お父さんの遺伝子を感じる、いい曲だなあ。
新しい音楽には興味を持てなくなったが、河島英五の娘なら…聴いてみるか!
曲名はなんていうんだろう。今はホラ、スマホに聴かせたら曲名が出てくるらしいし。
SHAZNAというやつに聴かせてみた。
曲名が表示された。
君はロックを聴かない / あいみょん
「あいみょん」という名前は知っていた。
紅白出場者一覧をツイッターで見た時に「あいみょん(初)」という文字を見て「あいみょん?何か分からんが…何かだろう」と思ったので。
ただその頃、俺は紅白を見てなかった。
河島英五の娘が「あいみょん」という名前で活動してるのか?…と調べて顔を見ると、若い。
河島英五の娘にしては、若すぎる。
いやもう、河島英五の娘のことはいいや。
この「あいみょん」というやつを聴いてみよう。
今はタダで聴けるだろうし。
Spotifyであいみょんを聴いた。
歌詞が聴き取れる。50歳を過ぎた俺にも聴き取れる歌詞だ。
福祉か?
歌詞に「ブラウン管」とか入ってる曲もある。
いや…知らんだろう。今の若い人が。ブラウン管とか。液晶テレビがデフォルトだろう。
あいみょんの曲を聴いていくうちに、こんなことを思うようになった。
自分の娘が、あいみょんだったらいいな。
父親の影響で音楽が好きになった。もちろん、好きな音楽は父親が聴いていた曲。父親にギターも教えてもらった。お父さん大好き。
…そういう、老害ロックおじさんが夢描く「娘」の具現化・商品化が、あいみょんである。
つまり、あいみょんは特殊詐欺である。
俺にも娘がいるが、現実の娘はヒップホップ系のダンスをやっている。
そんなのやってたら…いつかクラブとかいう場所に入り浸り、首まで入れ墨が入った男達から違法薬物を……
そういう、現代のことを分かってない中高年にあいみょんはひとときの夢を見させてくれる。
題名の「ほろ酔い」という曲はあいみょんのアルバムを幾つか聴いて、一番刺さった曲。
俺と同じように、この「ほろ酔い」が刺さり、海岸で歌ってるオッサンを見つけたので貼っておく。
俺ではないですよ。
知らんオッサンだが、気持ちは分かるぞ。
50代にもなると、新しい音楽なんか一切入ってこないが、「誤認」してしまうと入ってくることもあるんだな。
河島英五の娘だと思って聴いてたのに…
河島英五は、一般的には2曲しか知られていない。
前述の「酒と泪と男と女」と、
「時代おくれ」という曲である。
自分らの時代は終い、表から身を引き、ひっそりと生きてゆく。
1日2杯の酒を飲み。
そんな歌の後に「いい生き方ですね〜」と出てくる武田鉄矢が邪魔だ。
この曲の作詞は意外にも、河島英五ではなく、阿久悠です。
作詞家として1つの時代を築いた阿久悠も80年代に入ると松本隆や秋元康の台頭により仕事が無くなる。
その阿久悠が手がけた最後のヒット曲の題名が「時代おくれ」というのも、皮肉な話だ。
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