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【140字小説】和子さんと月 1,2,3話 


1話


和子さんは良い香りに気づきます。
「あれは月の匂いさ」
お兄さんが教えてくれたので、窓を開けてズット丸い月を眺めました。
翌朝、和子さんはスッカリ風邪ひきさんに。鼻も詰まって何の香りも嗅げません。
庭の金木犀も花が終わりました。
風邪が治った和子さんは月を眺めますが、何も香りません。


2話


「すっぱいからやるよ」
寝しなに、お兄さんが食べかけの蜜柑を窓辺に置いていきました。
夜中に目を覚ました和子さんは、月明かりに光る蜜柑を口に入れてみます。
「美味しい。お月様の光で甘くなったのね」
実は、お兄さんは練り歯磨きで歯を磨いた後だったので、蜜柑を酸っぱく感じたのですがね。


3話


土をかけ終えると、和子さんの目から自然と涙がこぼれました。
「カナリアは今夜から月の裏に行って歌いますよ」
とお祖母さんが教えてくれました。
「お隣のポチも、庭に来ていたミー子もね、皆行くの。月の裏に」
「人も?」
お祖母さんはうなずきます。
その夜から、月は和子さんの故郷になりました。


お月様と猫といっしょに



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