見出し画像

音楽と絵画が繋ぐもの

お気に入りの色だという、赤青黄の鮮やかなネックホルダーを首から提げている。東北芸術工科大学(以下、「芸工大」)の洋画コースの卒業生であり、現在、総合美術コースの副手として勤務しながらアーティストとしても活動している飯尾淳太さん(以下「飯尾さん」)にお話を伺った。

音楽と絵画を融合させるという独特のコンセプトを持つ作品には、様々な素材を使用する飯尾さんのこだわりや地域との関わりが反映されている。


──小さい頃から絵を描くことが好きだった


幼い頃はコピー用紙の裏に落書きをする程度のもので、画材にも特にこだわることはなかったが、カラフルな色が好きだというのはもともと変わらない。芸工大への進学をきっかけに様々な表現をする学生に刺激されたことから、キャンバスという固定概念から離れ、ゴミや廃材、電化製品などにペインティングをするようになると、美術を心から楽しむことができたのだった。


──自分を形成しているものから表現する


大学3年生になった頃、自分の周りに何があるのか考えたときに思い浮かんだのは、友達や家族、音楽や絵画作品の制作をすることだった。

当時は山形市内のお店などでライブペイントを行なっており、お店の方からの声が掛かると時間を作ってお店へと向かう。DJが交代で音楽を流しているような賑わいの中で行われるライブペイントでは、地域の方との新しい出会いや交流があり、それが楽しみでもあったのだという。

音楽と絵画をコンセプトに制作を始めたばかりの頃は、友達と撮影した思い出の動画から音声のみを抽出し、既存の音楽とのMIX(複数の音源のバランスを調整しながら一つの楽曲にする作業)をすることで、新しい音楽を作り上げた。そして、その作品が学内での講評会で高く評価されたことが自信に繋がり、音楽とアートを融合させた現在のスタイルが確立することになる。


──もっと自由になれる空間


飯尾さんの所属する共同アトリエ「STUDIO CORE'LA」では、2021年11月6日〜7日の2日間でオープンスタジオを行った。

周囲の人との関わりの中で、秩序やルールなどのしがらみに囚われて苦しんでいる人が多いのではないかと感じた飯尾さん。それらを取り払い、冗談を言い合えるような、心から楽しめるような空間をテーマに作品を制作した。

画像2


今回制作した作品にはチェーンが用いられていて、その長さは20メートルにも及ぶ。アトリエがもともと車のガレージだったことから、チェーンという素材が合っていると感じたのだという。壁に掛けられた作品とテーブル上のCDジャケットの絵はリンクしていて、ソファに座ってくつろぎながら、CDに収録された音楽も実際に聞くことが出来る。

また、芸工大の工芸棟で不要になっていた廃棄前のこたつの天板や、古いテレビは知り合いから貰ったものだという。大学時代からこれまでに築いてきた沢山の繋がりが、飯尾さんの作品となって姿を変えている。

画像1

取材当時、「来年は勝負の年だ」と飯尾さんは語ってくれた。これまでに制作してきた音楽を発信していくため、準備を進めているそうだ。CDジャケットのアートワークも自身で手がけるため、まさしく飯尾さんの集大成といえるものになるだろう。

音楽と絵画。ふたつのアートが繋いできた飯尾さんと地域の繋がりの輪が、広がろうとしている。


──────────────────────────────────

菅原未来
東北芸術工科大学

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?