カバーの騒動から考える、VTuberと独自プラットフォームの必要性とは
こちらの件でカバーの対応に関しては他でも散々と語られているので、私はこの件から次に来るスタイルに関して考えてみたいと思う。
■今だから、『Magical Stone』を振り返る
さて、『Magical Stone(マジカルストーン)』というゲームをご存じだろうが。後で語るがVTuberとはある意味では縁が深いタイトルである。
e-sportsが今ほど普及していない中で『ぷよぷよ通』をe-sportsとしてようとして、紆余曲折あり開発されたパズルゲームである。ただ、その背景は開発経緯からやや複雑で、発売される前にゲーム自体だけではなく多くの問題を抱えていたことでほぼ世に出ることはなかったゲームである。
ただ、これがなければ『ぷよぷよeスポーツ』は世に出ることは無かったと考えている。それは公式的な声明ではないが、『Magical Stone』の存在、背景を知っている人にはそう思うのは難しいことではない話である。
色々な問題や背景があるから、明らかでない部分もある。そのため推測を交えて話す事になるが、e-sportsがまだ普及以前でゲーム会社すらe-sportsに懐疑的な時代、「ぷよぷよ」というコンテンツを借りて大々的な大会を開くことは色々と問題があった。
そうなれば独自のプラットフォームを作り、e-sports化の弊害をなくそうとしたのがこの『Magical Stone』が持っていた意味の一つであった。
つまり、この点だけピックアップすれば一々版元に確認を取る必要なく、個人でもゲーム配信、大会を開けるような自由に遊べる夢のようなタイトルになるはずだったのだ。
今回、カバーが正式に声明を出しているが『権利者様の許諾を得られていない著作物使用』とあるだけで何を指しているのか分からない。ただ、別方面の情報で散々に言われているようにゲーム配信がYouTubeの権利者申し立てで消されていることから、答えは「ゲーム配信」とされている。
ようやく、『Magical Stone』とカバーの件が結びつくのだが、私が言いたいのは「独自プラットフォームの必要性」である。
今回の件で大量に動画が非公開になったのは「権利者様の許諾が必要となる著作物使用」をしていたからである。VTuberという独自のコンテンツは実は他社のコンテンツを使用して成り立っていると、運営自ら認めた瞬間であったのだ。
そもそも、VTuberはYouTubeというプラットホームを活用しての活動なのだが。
これから、VTuberはより大きくなる中で、このような他社コンテンツの借用は活動の弊害となっていくだろう。
しかし、ゲーム配信という人を集めるのに便利なジャンル、コミュニケーションの場も捨て難い。なら、どうしたらいいのだろうか。
■「プラットフォームの提供」と「宣伝媒体のVTuber」
ここで任天堂の包括的使用許諾契約締結へと話を持っていきたいが、ひとまずは後回しとする。
しかし、ゲーム配信を自由にできる場はYouTuber、VTuber側だけの話でもない。ゲーム会社にとってもゲーム配信はメリットがある。
ただし、従来のゲームスタイル、特に国産ゲームのスタイルではこのメリットは薄い。ゲーム配信だけ見て、ゲームの持つコンテンツが完結してしまう場合が多々あるからだ。
逆にゲーム配信者を求めるゲームもある。例えば『Apex Legends』、『League of Legends』などのe-sports化を狙っているゲームである。シェアを広げる意味で、ゲーム内容、ユーザー間の戦略性の共有、対策でもゲーム配信は重要な要素でなる。
だから、こういうゲーム会社はゲーム配信をする者を欲している。当然、ゲーム配信自体を推奨する文面すら出している。ただ、無条件ではなくガイドラインの上での形にはなるが。
だからこそ、ゲーム実況を生業とするYouTuber、またVTuber側のマッチングが今後はより求められるとことになっていくと思う。
つい先日も『Apex Legends』ではVTuber限定大会「VTuber最協決定戦 ver.APEX LEGENDS」が大々的に開催されるほどである。『League of Legends』も同様のイベントは開催している。
そういった意味でも『雀魂 -じゃんたま-』もVTuberが結びついている。
こちらもプラットホームを提供する側、宣伝媒体と活動する側のマッチングである。
ただ、別に批判的に言うわけではないが、『雀魂』にいたっても『Apex Legends』、『League of Legends』も海外タイトルである。
ここは国産と海外タイトルの戦略の差かもしれない。
後、違った意味でゲーム配信を求めているのは作品として、チラズアート『The Ghost Train | 幽霊列車』が上げられる。
過去作からホラーゲームを作っている所である。そして、ゲーム配信でも多くされていることから有名である。
これはゲーム配信する側もリアクションを出す意味でも、ホラー需要があるからだ。
そして、こちらはインディーゲームである。だから、素直にゲームを宣伝してくれる媒体を求めている。その双方の結びつきを更に強めたのが、支援の一つとして『The Ghost Train | 幽霊列車』ではゲーム内でユーザーから広告を出せるようにしていた。
これに多くのゲーム実況者、VTuberが広告を出して、他のゲーム配信する者がネタにされることで双方向のコンテンツに結びつく。そして、ゲームタイトルの名前も売れると一石何鳥にもなっている。
ただ、この点が身内感を出してしまったために不満点となって、このゲームの賛否を出している部分でもあるが…
■だからこそ求められる、「独自プラットフォーム」
先にも語った通りVTuberは「権利者様の許諾が必要となる著作物使用」を使用して盛り上がっている。それはこの騒動で動画が非公開されたことで証明されている。
しかし、「権利者様の許諾を必要としない著作物使用」であれば問題ない。BGMとして使われるフリーの音源がそれに当たる。
そもそも、冒頭で触れた『Magical Stone』も同じである。プラットフォームを提供して、e-sportsとしてプロ達が活動する場を作ろうとしていた。
こういった権利に左右されない「独自プラットフォーム」といった考えは以前からあったのだ。
『Magical Stone』に携わったメンバーの一人にれそ氏がいる。その後、VTuber業界で「ゲーム部プロジェクト」に携わった人物である。
そこもいろいろと問題は抱えていたことだが…
ただ、こういった「独自プラットフォーム」という考えが、この界隈になかったのかと思うと少し疑問である。大体、この考えがあればゲーム配信で消される事態には到っていないとも思う。
何も「独自プラットフォーム」といっても自ら作らなくとも、宣伝媒体を求めているプラットフォームに頼ればいいことである。現に『雀魂』がいい例である。
ただ、余り他社との結びつきが強くなれば癒着の原因ともなる。だが、そういった関係すら築けていない中では癒着以前の話でもあるが。
■素直に喜べない、任天堂からお墨付き
ただ、カバー騒動の数日後には真逆な声明がカバーから出された。
しかし、これはめでたいことではない。しこりを残す結果になっているかもしれない。
カバーは任天堂とは交渉していたが、権利者申し立てした会社とは話し合っていなかったから、今回のような騒動に発展した。
任天堂以外の主要ゲーム会社、もしくはゲーム配信で使われたのみのタイトルだけでも問い合わせ確認していれば今回のケースは避けられたはずだからだ。
むしろ、水面下で任天堂だけに交渉していたことから、カバーに不信感を持って別のゲーム会社が権利者申し立てしたのかもしれない。こちらには使用許可の話を聞いていないぞ、と。
正直、自分は真相は知らないが、この2つの件が同タイミングで起きていることは、そう考えさせるには十分ではある。
ともあれ、こちらの声明の最後でも「コンプライアンス教育」、「ガイドラインの制定」などを整備を早急に進めるといった文で締められている。包括的使用許諾契約締結というお墨付きを貰っておきながら、このような締め方は少し変に感じないだろうか。
当然、包括的使用許諾契約締結を結んだから、何をしていい権利を貰ったわけではない。だから、そういった教育、ルールは必要だ。
ただ、この先日からの騒動でカバーではこれらの教育、ルールがないがしろにしていたと受け取られない状況でもあった。
あの騒動が一発目ならまだ周りも許容できただろうが、ただ数ヶ月前からここは改善することは声明でも出されていたからだ。
だから、これらの件を総括して考えても、包括的使用許諾契約締結を結んだ任天堂すらカバーの対応には懐疑的かもしれない。いや、そう捉えられても仕方がない。
コンプライアンスは徹底しています、ガイドラインもあります、社員、所属タレントも分かっていますから使用許諾の契約を結びましょうと話し合っているはずだ。そして、書面上でも確認した上での契約は結ばれるはずだろう。
しかし、声明の最後にはこれからと記され、その上、他の会社に対しては守られていないと分かれば、その印象は良くはないだろう。
そもそも、この話し合いの切っ掛けとて半ば失言から始まっていると、大概の人の見方だろう。
任天堂の件はユーザーにとってめでたい話だが、声明から読み取っても数ヶ月前の騒動から何一つ変わっていないことが示されたと言ってもいい。
もはや、カバー自体が大規模な改革がなければ三度目は避けられない。
それにこの騒動だけでなく、不可解なタレントの契約終了も直近であった。運営としてのユーザーから信用性は元からかなり失っていた。
この上で、もし三度目が起きれば、会社間での信用も大幅に失うことにもなりかねない。
■なら、今後の方向性とは
今回の件はカバーのずさんさが露呈しただけではある。反面、色んな業界の「独自プラットフォーム」と結びつけるチャンスとも思える切っ掛けでもあったと思った。
ここを有効活用できることで、VTuberとその業界は大きく伸びるかも知れない。
また、VTuber界隈からだけではなく、ゲーム会社からもよりゲーム実況、そして、e-sportsを前提としたガイドライン作りは早急に求められていくと思う。
あくまで今のe-sportsは限定的で狭いコミュニティでしか成立しない構造である。国内に限っても賞金とて変則的な方法で支払われる。それゆえ、アマチュアという肩書きではe-sportsに参加できても、賞金は出ないのである。
そういった面からも分かるように、ゲーム会社(インディー、フリーゲーム等も含め)自体も作品以外の面でも何かしらな発信していくことが求めらていると思う。
実際、最近ではネタバレ禁止の側面からゲーム配信ではここまでは許可すると明言している作品も多い。それが結果として、作品性を守る切っ掛けとなる。
ただ、この明言もゲーム配信が盛んな海外では反発を招き、海外でのみ配信条件が緩和されている。
だからこそ、余計にゲーム会社自身が発信する意味合いが増えていくと思う。
今まではゲーム配信側も黙認ベース、グレーの部分に頼っていたが、ゲーム会社側も同様にユーザーの性善説に頼っていた部分がある。
ただ、海外ではゲーム配信の考え方でも性善説に頼っていた部分は成立しにくい。
そして、e-sportsがスポーツ化する中ではユーザーの性善説という観点では成り立たない。特に賞金など栄誉が発生すれば特にだ。
話は逸れるが、アメリカとイギリスのスポーツに置いて明確な違いがある。
それは審判の数である。
アメリカの場合は興業としての「見せるスポーツ」といった考えが強いのもあるだろう。そのためには公正を期すために、ズルしないための監視を大事になってくる。
反面、イギリスはスポーツマンシップ、競技する者の精神性を問われる。ゆえにプレイヤー自体がズルをしない前提から教育されている。
今回の一件は私はカバーのずさんさだけを問う機会ではないと思っている。また、皆の襟元をただすだけでなく、ビジネスチャンスの可能性でもあると思っている。
そして、ゲーム配信に関わる全体が考える場でなければいけない。この騒動は今のままでは再び起こる。何しろ黙認ベース、グレーゾーン、ユーザーの性善説といった曖昧の概念で成り立っているからだ。
言い換えれば、気持ち一つでどうとでもなるのだ。
また、海外ではゲーム配信者の力が強く、ゲーム会社の方針すら変えざる負えない状況も出ている。
そういった曖昧な状態ではリスクを考慮すれば、従来の規制に縛られない「独自プラットホーム」の必要性、運用はVTuberだけに限った話ではないのかもしれない。
読んで頂き、もし気に入って、サポートを頂ければ大変励みになります。 サポートして頂けると、晩ご飯に一品増えます。そして、私の血と肉となって記事に反映される。結果、新たなサポートを得る。そんな還元を目指しております。