見出し画像

なろう系作品の海外タイトルとは ~「Arifureta」で定着した作品名

【カクヨムで2019年9月23日に掲載した記事をベースとしています】

『ありふれた職業で世界最強』のアニメを見ていた際、EDのスタッフロールに「海外ランセンス」という項目があって気になった。海外展開をしているのは間違いないため、そのため海外でのタイトルは何になっているかと気になった。

ただ、これは『ありふれた職業で世界最強』だけではなく、最近のアニメならスタッフロールにこういった「海外ランセンス」に近いモノが含まれている。

さて、海外タイトルの答えを出す前に『ありふれた職業で世界最強』をもし英訳するとしたら、どうするだろう。「ありふれた」と意外に日本が持つイメージが多いため、言葉の響きから考えると英語に訳すことは意外に難しい話だ。

別のタイトルにはなるが、『ドラえもん』の英語タイトルはそのままのだが、カタカナ・ひらがなを大文字と小文字で再現した「DORAemon」となっている。中国語表記も発音に近い、「哆啦A夢」の表記が1997年以降の正規出版物は使われているとのこと。
『ドラゴンボール』も『DRAGON BALL』とそのまま。こちらは元から英語であるから問題はない。

なら、タイトルも近い『ドラゴンクエスト』はそのままかと思いきや、『DragonWarrior』である。これは既に『DragonQuest』という言葉が使われていたための権利回避とのこと。
ただ、近年の作品では国内と同じ『DragonQuest』のタイトルになっている。調べると、8から欧米において『DragonWarrior』をやめて、『DragonQuest』の名で発売された初のタイトルであると記載があった。

と話は大きく逸れましたが、『ありふれた職業で世界最強』はどうなっているのか。
ちなみに日本のタイトルロゴを見ると「Arifureta Shokugyou de Sekai Saikyou」と、ただローマ字で書かれている。

それで海外でのタイトルを発表すると、『Arifureta: From Commonplace to World's Strongest』。直訳ではあるが、「ありふれた」の冠もそのままで海外展開に使われている。

むしろ、これならローマ字の「Arifureta Shokugyou de Sekai Saikyou」のままでも通じそうである。それでもタイトルロゴにこの表記は残っている。

ちなみにスピンオフである、『ありふれた職業で世界最強 零』は『Arifureta Zero: From Commonplace to World's Strongest』。「ありふれたゼロ」と日本と同様な、省略系である。

公式ツイッターでもつぶやかれるタグには「#ありふれた」、「#ARIFURETA」と二つ同時に記入している。「#ARIFURETA」で見てもらえれば、海外の方もこのタグを使用している。

そして、海外のファンが作った「ありふれた」シリーズのwikiの情報量が半端ではない。こちらも「Arifureta Shokugyou de Sekai Saikyou」のタイトルが紹介されている。

さて、いろいろと状況を出したが、海外のファンでも原題である日本語、「Arifureta Shokugyou de Sekai Saikyou」で通じている節がある。

推測となるが、日本文化に精通した、海外の日本アニメファン等が正式に海外展開する前から「ありふれた」を日本語で触れており、そのまま、「Arifureta」でファン間で定着したのではないだろうか。
そうでもなければ、直訳であるタイトル「From Commonplace to World's Strongest」だけで十分だ。英語圏にわざわざ、「Arifureta」という日本語を付ける必要はない。「Sushi」、「Wasabi」とタイトルに付けるようなセンスである。
そう、その方が広く認知されているから、商業展開でも日本語が付けられているのだろう。

比較のため、他の作品タイトルも出して行こう。調査方法は「Wikipedia」のEnglishページで、日本語のタイトルそのままで検索。それで原題の方で引っかかるため、それで海外でのタイトルが調べることができる。
そのタイトルをamazon.comで検索して、書籍を確認できれば間違いないと判断できる。

■賢者の孫
Wise Man's Grandchild

■魔王様、リトライ!
Demon Lord, Retry!

■うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。
If It's for My Daughter, I'd Even Defeat a Demon Lord

■通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?
Do You Love Your Mom and Her Two-Hit Multi-Target Attacks?

■小林さんちのメイドラゴン
Miss Kobayashi's Dragon Maid

■Re:ゼロから始める異世界生活
Re:Zero − Starting Life in Another World

■無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜
Mushoku Tensei Jobless Reincarnation

『無職転生』はまさかの「Arifureta」同様、日本語そのままである。続く「Jobless Reincarnation」にしても、「ジョブ レス リンカネーション」と直訳であり、「無職転生」の意味を補足しただけである。

これらのタイトルは基本、直訳ではある。
変わり種として、次のタイトルを。

■異世界料理道
Cooking with Wild Game

こちらも直訳といった印象である。この作品はタイトル通り、異世界にいって猪に似た『ギバ』を料理する。あくまでこれは作品の一部だが。

それで「wild game」にはジビエ、狩猟肉の意味がある。
そして、本タイトルは大文字の「Wild Game」、ゆえに「野生のゲーム」の意味が強いだろう。だから、原題にもある異世界の意訳となろう。

この事からジビエと異世界のダブルミーニングを狙って、「Wild Game」と訳しているのだろう。「Re:ゼロ」では異世界を「Another World」とそのままで訳しているので、これは本当にセンスのある訳し方である。

ちなみに「J-Novel Club」という、日本のライトノベルを英語で出版するデジタル出版会社が扱った作品一覧が「Wikipedia」に乗っているため、こちらを見るのが手っ取り早い。

次に、気になるタイトルがこちら。

■異世界チート魔術師
Isekai Cheat Magician

『異世界チート魔術師』に関しては英語「Wikipedia」自体に「Isekai Cheat Magician」として載っている、または"Fantasy World Cheat Magician"ともある。
ただ、このタイトルでamazon.comで検索しても、DVDはヒットするも英語での書籍はヒットしない。「Takeru Uchida」と作者名でも検索したが、ヒットするのは日本語のオリジナルのみ。

しかし、「Isekai Cheat Magician」で調べても海外の記事(Netflix等の配信など)にも引っかかるため、これが正式なのだろうか。ただ、この名前でも海外のファンの間で普及していることは間違いないようだ。
(含みを持たせないと責任が取れないので、多分、恐らくなどを多用しています)

ただ英語版は確認出来なかったが、台湾の青文出版社から翻訳版が出版されている。タイトルは「異世界超能魔術師」。
普通にすごいに魔術師にしか見えない。

ここに関しては少し思うのは、案外「Cheat」と名が付くタイトルは英語圏では展開しにくいのでないかという点だ。「Cheat」は英語圏ではネカティブな言葉である。そもそも、浮気といったニュアンスにも使われる。

ハーレムとチートが同じタイトルに使われれば、単にスーパーパワーの意味ではなく、浮気から複数の相手と関係を持っているだけの意味に取られるかも知れない。
まあ、ハーレムはトルコ語が由来だが。

そして、『異世界チート魔術師』が台湾から発刊されている点も考えると「ドラえもん」と同様で「チート」はアジア圏では受け入れやすく、欧米諸国では受け入れがたい構造なのではないか。
「チート」をドラえもん同様と考えると色々と納得する点がある。

ちなみにこの点は国内でも見て取れる。なろう系小説では「チート」を多用されているが、アニメ化されたなろう系、異世界作品では「チート」が出てくるタイトルは意外にも、この『異世界チート魔術師』ぐらいである。

---■追記(2020/9/27)---

次に同じ傾向な作品を。

■八男って、それはないでしょう!
The 8th Son? Are You Kidding Me?

この作品に関してはアニメは海外でも吹き替えで配信されている。
ただ、調べてみると書籍の方は今のところ英語版は出ていないようだ。

『異世界チート魔術師』と同様なケースという事で追記して載せておく。

----------------

そういう流れで、もう一作品。

回復術士のやり直し

こちらは私が調べる限り海外での書籍はヒットしなかった。やはり、作者自ら作品内容にエロが多かったと認めるだけあって、海外展開が難しいのだろう。

それでも海外のコミニティがあり、どうであれ有志によるモノなのか漫画版の英訳画像が出てくる。海外でも知られた作品では間違いないようである。
また、月夜涙氏による『魔王様の街づくり!』に関しては英語版がamazon.comで確認できる。

しかし今後のアニメ化によって、どのように海外展開するのかは注目したい作品である。

『回復術士のやり直し』にいたっても、正式に海外展開してなくとも知れている。そこからも「Arifureta」同様に海外でも日本語から日本文化そのままで受け入れられているようである。
ただ、あくまでタイトルだけの話なので中身に関しては、どこまで海外で理解されているか分からない。

それでも、海外の反応は日本からでもまとめられているし、YouTubeでも海外の人が感想を言っているので直に知ることはできる。
それでも、それは日本文化にわりと精通した人での話ではあるが。

読んで頂き、もし気に入って、サポートを頂ければ大変励みになります。 サポートして頂けると、晩ご飯に一品増えます。そして、私の血と肉となって記事に反映される。結果、新たなサポートを得る。そんな還元を目指しております。