見出し画像

ノーゲームとか。

わたしは高校野球が大大大好きなのであーーーる!
父の叔母が神戸に住んでいて、甲子園球場まで20分というなんとも素敵な立地にいるから。いるから?子供の頃の夏休みは神戸に行きたくて仕方なかった。その頃はもちろん甲子園などという目的はなく、三ノ宮の地下街(サンチカ)とikariのスーパー(今ほど高級でもなく)と、大丸のお買い物に連れてってくれる大叔母が大好きだったから。

だって何でも買ってくれるんだもん!

子供ながらにまだ高貴な仕事をしていた大叔母の家にでぱーとのひとがきて、きれいなはんかちをくれるのがとってもうれしかった。

そして大叔母は大の野球好きで、ナイターに連れてってくれる。もちろんプロ野球、もちろん阪神戦。田舎暮らしは夜のお出かけなんて食事くらいのもので、車で行って車で帰る。知らない人にはほぼ会わない、のとは違い田舎にはないタクシーに乗り甲子園にいき、明るいライトの中で知らない人たちと膨らまして飛ばす7回裏の風船のいろんな色とナイターの灯りは本当に楽しいの一言に尽きた。

野球が好きだわ〜と思った。

それから夏の楽しみも宿題に追われる年頃。神戸に行くことも少なくなり田舎で過ごす夏休み。楽しみは高校野球になった。小学生の頃は沖縄水産と仙台育英の切り抜きを集めて自由研究を出した。Numberという雑誌を、父をそそのかして買い漁った。高校生のお兄ちゃんたちがかっこよかった。

高校に進学したら、なんと野球の強い学校だった(それが理由で決めた学校ではなかったけど)公立に行けない頭の悪さが功を奏し、わたしを甲子園に連れて行ってくれた。
憧れの、懐かしの甲子園球場。たしか初戦敗退!

そして大人になった7年前。ふと時間の空いた私は母校が出るのをいいことに、当時の同期たちと甲子園を観に行った。「母校だから」はいい理由になった。
たまたま行った母校の3回戦。野球好きを忘れかけていた7年間の私は小学生に戻ったかのように観入ってしまう。
県内ではそこそこでも甲子園までいくとまるで弱小校になってしまう我が母校が勝った!まさかのベスト8になった。まさかの笑。

母に電話する。「帰れない気がする」帰れないのではない、帰らない、が正解。誰も止めてないし。
でも次で負ける!と、まるで願掛けのように決めつけて「次の試合観たら帰るから」と言って電話を切る。
一緒に行っていた同期も残りたがったけど、この歳になるとヒトの親。独身自由人の私の唯一の特権。残れる!
そして大叔母に電話する。「今日勝ったから泊まる!」
何十年ぶりの電話に驚くよりも早い返事は「勝ったね!」

さすが野球好き!

優しいが過ぎるほど優しい大叔母は「夕飯どうする?」
手料理の上手い大叔母は魚を焼くのすら上手い。
ししゃもの焼いたのと茶碗蒸しを注文して帰宅。
その二品は父が好物だったから笑。ひとの家でご飯を食べたがらない父も、大叔母の家でだけは食べたがった。

翌日の試合はたしかvs沖縄尚学。必ず負けるはず。
着替えもない。のに勝ってしまった笑。なんでやねーん。
大叔母に電話する「今日も泊まる!」ご飯はししゃも。
心の中ではすき焼き。
心の声を聞き取る力を持つ大叔母は、歓び勇足で肉屋に走っただろう、すき焼きだったー(ばんざーい。)

なぜか。なぜだか決勝戦まで来た笑。

迎え撃つは大阪桐蔭。必ず負ける。勝っても家に帰れる。
5泊くらい神戸にいたわたしは何なら少し帰りたい笑。
大叔母の手料理もひと通りたべたし。着替えもない。
対桐蔭戦は負けこそしたものの素晴らしいものだった。
5泊が報われた。4時起きのアルプス席取りの日々。

甲子園って何が素晴らしいって。テレビには映らないけど開戦までに相手校の応援をする。フレーフレー桐蔭!と。
すっかりおばさんの私はそれだけで泣けてくる。
4対3で負けたその試合は素晴らしすぎた。ホームの桐蔭、アウェイの三重。勝った優勝校の西谷監督は、アウェイの三重県勢の応援をインタビューの大画面で讃えてくれた。

三重は兵庫に、日本全国の中では近い方だから?とにかくたくさんの応援が集まり(決勝戦なんて滅多にないし)高校のある松阪から大阪難波までの電車は日頃貸切り状態の鉄道にもかかわらず切符が取れなかったらしい。5泊が報われた。
観客席3/4がアウェイの応援で埋められた。

「声援に負けるかと思いました」

ここでも泣ける。さすが貫禄の西谷監督のお言葉。
相手を讃えることが勝者の貫禄でもありホンモノの証。
心の底から高校野球の素晴らしさを実感した。
帰ったら秋子に怒られることはさておき。

そして2020を飛ばした球児たちの夏2021
台風で延期になった開会式と初日の三試合。
今日に至っては、今季一番楽しみだった秋田明桜のピッチャーの名試合(になるはず)途中から大雨。

5-0で4回まで来たとき、ノーゲームの文字が電光掲示板に映し出された。え?ノーゲーム…。
5点とってる方も、5点とられてる方もノーゲーム。
規約に書いてあるかもしれない、天候などの理由によりノーゲームの場合、再試合はゼロからのスタートです、と。

にしても。

相手の帯広農にとっては好機がめぐったのかも。
にしても。これはこれで再試合で帯広が勝ったとしても、それも辛いことかと考えたりする。
相手を思いやる気持ちが感動を呼ぶ甲子園で、果たして5点差を帳消しにして勝ったとして。選手たちの気持ちはどこへ向かうのだろーか。勝ち進むことで相手を思いやれるのか。雨が降らなきゃ負けていたかも知れない。もちろん5点差をひっくり返していたかもしれないけれど。
もちろんどちらが勝つともまだわからないけれど。

恵みの雨になって欲しい。

というインタビューが耳に残る。どちらが勝っても素晴らしい試合になることは解っていても、今日の途中までの経過はまったく帳消しになるのだろーか。観戦者はどーでもいい、選手たちにとって悔いのない試合になるのか。

ノーゲーム。重たい5文字。

とにかく明日は雨が止んで、熱い気持ちのままで再試合開始のサイレンが聞きたい。
何にせよ球児は素晴らしい、高校野球は素晴らしい。
ノーゲームが悔いの残る結果にならないで欲しい。
風間くんのボールが明日も楽しみ。
帯広農の打開策も明日が楽しみ。

そして明日もテレビの前から動かないわたしに秋子は
「明日の試合は?」と聞いてくれるようになった。
どの試合とどの試合の間にご飯にしようか、と。
引き寄せられるように一緒に座って観てくれる。
野球がどーの、高校生がどーの、を差し置いても球児たちの頑張りと熱意は誰だって魅了されるんだとよくわかった。

「二回戦終わったくらいに徹子の部屋ね」
とも言ってたけどさ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?