T(私)の小学生時代①
小学生時代、私は周りの子とは少し違っていた。
ただしそれは、別に天才だったとかいう訳ではない。
勉強能力、運動能力共に平均かそれより下くらいのものだった。少なくとも、小学校高学年くらいになるまでは。
何が違ったかというと、私は所謂、子供タレントというものをやっていた。
当然、私の意思などではない。母か祖母か、あるいはその両方かが芸能事務所に応募して、その結果として私は子供タレントとなった。
小学校を休み、オーディションや番組出演の為に様々な場所へ行き、幼いながらに様々な経験をしたのだと思う。
どこか他人事のように語ってしまうのは、私にとって小学生時代の記憶とはかなり朧気なものであり、当時の感情や経験など何一つとして現在の私の身になっていないと感じてしまっているからだ。
当時の私にとって、芸能活動自体が決して楽しいと思えることではなかったのも要因の一つかもしれない。
当時の私は今以上に人見知りだったし、朝早くに起きて現場に行くこと、レッスンに行くこと、大人を含めた見知らぬ人々と接すること、オーディションを受けること、その全てが苦痛とまではいかずとも好きとは言えないものだった。
当時の私にとっては、小学校で友達と遊んだり、好きな女の子と話したり、給食を食べたりする、皆が当たり前にしていることの方が幸福なものだったからだ。
それに正直言って、私は子役としてはレベルが高くなかった。
前述の理由から意欲は低く、人見知りという点から明らかに適性が無かった。
そんな有様なので体感で言うと、出演番組の8割以上はチョイ役、エキストラだったように思う。
当時の私は年相応の精神年齢であったことから、何がやりたいとかやりたくないとか、やりがい等は深く考えることもなかったが、漠然と自分の無力さを感じ取っていたのだろう。
中学生になる少し前くらいには、私は子役を辞めた。
晴れ晴れとした気持ちだった。私は私らしい、普通の中学生としてこれからを生きられるのだ、と。希望に満ち溢れていたのは、今でも思い出せる。
...…最も、今更ではあるが、その選択に少しの後悔がある。
結果論でしかないが、様々な道程を経て、それからの私には意欲と適性が備わってくることとなるからだ。
その話はまた、どこかのタイミングで綴るかもしれない。
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