T(私)の小学生時代③

私の思春期は早かった。

下の毛が生えるのは自分の知る限り誰よりも早かったし、声変わりも同じくらい早くに訪れた。だからだろうか? 異性に興味を持つ、ということも周りの人間の中では早かったように思う。

好きな子と付き合いたい、デートしたい。何なら、キスしたい。
小学四年生くらいの頃には、その明確な意思を持ちながら人を好きになっていた。

彼女の名前はK。
苗字はTで、実際には苗字呼びをしていたのだが、Tだと私の名前と被りややこしいので、Kとする。

Kは転校生だった。愁いを帯びた二重に、儚げながらも澄んだ声。
一目惚れだった。可愛いと思ったから、好きになった。私の恋愛観が成熟していないということもあり、中身のことなど気にもしなかった。

私とKはよく話すようになった。
席は近かったし、クラブ活動も一緒だったから。
それなのに、林間学校で行われたキャンプファイヤーで手を繋いで踊る時は、不思議と二人とも口数は少なくなった。
周りから冷やかされて、必死に二人で否定したりもした。
意識しあっていた時期は、間違いなくあったのだと思う。

しかし、私は振られた。
休日のある日、彼女を呼び出して手紙を渡した。
週明けにもらった返事の手紙の内容はもはや記憶に残っていないが、付き合えないという答えは覚えている。好きだった時期もあったけど、今はそうじゃない、というのを直に聞いたことも。
そして何故か、その後しばらくの間、文通が続いたことも。
その文通の中で、あるいはそれ以外で何かを間違えてしまったのか、私はその後、彼女から蛇蝎の如く嫌われて、クラス問わず彼女の友人達に悪評が振りまかれた。

トラウマとまではいかずとも、私が恋愛に対して臆病になる要因としては十分な経験となった。
その後も好きな子は出来たが、その時の経験から直接的に告白というものをする気にはなれなかった。
私がKに告白したという事実はクラス問わず女子に広まっていたから、動きづらかったというのもある。ここまで書くとKが最悪の腹黒女のように感じてしまうかもしれないが、正直、当時から今に至るまで私はKに対して恨みを抱いたことはない。

何故なら、私は何もわからなかったからだ。
告白後しばらくして、私はKが泣いてしまったことを知った。
それが何故なのか?私が何か傷つけてしまったのか?
道理に沿う理由があったのか? それとも理不尽な理由だったのか?
私と彼女のどちらに非があったのかがわからない以上、私の心は、何故?の疑問で埋め尽くされるばかりだった。

結局、その謎が解けることはなかった。
彼女は私を明らかに嫌悪していてたから、私は近寄ることに怖さと負い目を感じてしまって、その謎について問いただす勇気が出せなかった。
そうしている内に月日は流れ、中学二年生に上がる前にはKは再び転校してしまった。

こうして私の恋は、私にとって、不完全燃焼の未解決恋愛となった。
生涯解けない謎の完成である。もしも彼女に再び出会える奇跡が起きたとしたら、今度こそ、その謎の答えが知りたいものだ。……今の彼女が、私のことを覚えているかも怪しいものだが。

とにかく、小学四年生の時から私は異性からの愛に飢えていた。
恋多きキモ男、といったところか。小学四年生の時からしばらくの間、私は恋愛脳だった。
それは自分に自信がない私を特別視してくれる人を見つけることで、承認欲求を満たす為の行為だったのだろうか?と今にして思う。
恋愛対象をアクセサリーか何かととらえる、傲慢な考えだ。
自信を満たしたい、という考えは今も昔も私の中に根付いているのだろうか。

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