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できない→できる への道は2通り

はじめまして。トレーナーのもっちです。

以前、こんなツイートをしました。

【スポーツ科学小噺】
技術には

①分からないし出来ない
②分かるけど出来ない
③分からないけど出来る
④分かるし出来る

の4つの状態が存在する。

①→④になるために練習すると
②か③のどちらかを通る。

どちらを経由する方が良いかは人によって異なる。

これだけでは漠然としているので、運動機能学の側面からもう少し説明しようと思います。


「できる」と「できない」はグラデーション

当たり前のことですが「できる」と「できない」は 0 or 1 ではないという、割と忘れがちな事実があります。

ボールが台に入れば「できる」なのか。
どんな確率で入れば「できる」なのか。
どんな威力が出れば「できる」なのか。

などパラメータは無限にあります。

目標設定も画一的にはできないもので、例えば卓球なら競技を始めて1年目の生徒なら、ワンコースのドライブが7~8割ほど安定して打てればかなり「できる」側に入ります。

対して、レベルが上がってくるとドライブが1本打てるだけでは点数に結びつかなくなります。
全国大会に出るようなレベルの子でも技術への意識は人によってかなり違います。


「理解」と「習得」は別

図にするとこんな感じになります。

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イメージとしては左下から右上に向かっていきます。

しかし、

「分からないけどできる」
「わかるけどできない」

は基本的にどちらかしか通れません。

ごくたまにいきなり①→④に飛び級してステップアップする例外もありますが、多くの人は地道に進みます。

例として数学の授業をイメージします。

授業で理解したはずがなぜかテストで解けないのは「分かるけどできない」状態です。理解はしているけど習得は出来ていません。

逆に、なんとなく覚えてる方程式を使って正解しちゃうパターンは「わからないけどできる」状態です。
もちろんこれは例えなので理解も習得も本当の意味ではできてないとも言えますが。

今回は出来たからOK!ではなくほぼ毎回同じようにできることが習得ですので、その前段階には大まかに先ほどの2通りがあります。


自分に合う道はどちらなのか

「分からないけどできた」の積み重ねでレベルアップする人も世の中には結構いて、天才肌なんて呼ばれたりもします。

言葉にはできないけど毎回こうしたら絶対できるんだ!
みたいな習得の仕方もあるからです。

しかし残念ながら私たちは凡人なので、自分に合う方法じゃないとなかなか上達しません。ちゃんと自分の特性を理解しておいた方が安全です。

4スタンス理論を知っている人は、これって明らかにタイプごとに傾向があるよな、と分かるかもしれませんが、そんなに理屈っぽく考える必要はないとおもいます。

今までの自分はどうだったか思い返して、習うより慣れろが好きだったのか、たくさん調べてから実行する方が好きだったのか、気楽に比べてみてほしいです。


何度やってもうまくいかない人の共通点

実は、何度やってもうまくいかない人の共通点は「何度もやってるから」の場合があります。真面目で動作の再現性が高い人ほど、いつまでもうまくならないという落とし穴があります。

「真面目で反復練習を怠らず、同じ動きを何度も繰り返せる人」は良いことに聞こえるかもしれません。
しかし言い換えると「間違った動きに違和感を持たない人」の可能性もあります。

専門的な言葉でいうと「保全性」が高い人にこのような特徴があります。勉強ならコツコツ秀才タイプ、仕事なら無駄のない正確無比タイプです。

保全性の高いタイプは思考の幅が広がりにくい傾向にあります(その分、幅の内側への集中力がすごい)。そして不安な状態になればなるほど、その傾向は顕著になると言われています。

特に今までの積み重ねを捨てる事にはつよい抵抗があります。サンクコスト効果とかコンコルドの誤謬と呼ばれる現象です。一度走り始めたらもうやめられない。
行政がムダを削減できないのは保全性の高い秀才タイプが公務員に向いているからと言われています。

ほとんどの人は反復練習とは「試行錯誤のなかで少しずついい動きを作り上げていくこと」だとちゃんと理解しています。
理解していなかったとしても再現性がそこまで高くないので、毎回微妙に違う動きをして自然といい動きを見つけて覚えていくことができます。

しかし保全性タイプは、自分の体に合わないタイプの動きでも再現性高く繰り返してしまいます。うまくいかないのは反復回数が足りないのであって、やり方は合っているはずだという謎の自信があるかもしれません。

ちなみに私も秀才ではないですが振り返ってみると保全性が高いタイプでした。平日は5時間・土日は9時間、365日欠かさず無駄に再現性高く間違った動きで練習を繰り返した結果、卓球を始めて1年で腰椎と足首の分離症(疲労骨折)になりました。

間違ったタイプの動きを正確に繰り返すと、これだけ効率よく体を破壊することができるという典型例です。ちなみにこういうことをやらかしてしまいがちなのは4スタンス理論でいうとどのタイプが多いか、詳しい人なら想像がつくかもしれません。


指導者は何を知っておくべきか

生徒一人ひとりをしっかり見るのが大事で、同じ人は誰一人といないとよく言われます。でも、あらかじめ大まかなタイプを知っておくほうがいいと考えています。

知識がない状態では、それが個性によって生まれている差なのかわからないからです。
たとえば中国ではご飯を少し残すことで満足を示すのが礼儀(今はそうとも限らないですが)という知識を知らなかったら無限におかわり地獄に陥るかもしれないのと似ています。

指導でもすごく極端に言うと、先にやり方を教えてもらってから実践のほうが向く人と、細かいことは後にしてとにかくたくさん試行錯誤した方が向く人の両方がいます。

まとめ

指導者は膨大な知識とパターンを体系的に知っておく必要があり、その中から相手に最適な手段を用意すると、その組み合わせは無限にあるので結果的にオーダーメイドになります。
と一文で言える程度の簡単な話なのですが、運動機能学的に分解すると意外と細かいというお話でした。


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