【昭和歌謡名曲集31】思えば遠くへ来たもんだ 海援隊
題名を見れば、勿論中原中也である。10代の私は、フォークソングふぜいが、近代詩の名作を勝手に歌に使うなんてと、題名見ただけで憤りましたね。歌は海援隊。金八、私大嫌いで、当然鉄矢も大嫌いで、JODANなんか、フォークの風上にも置けないって、思ってました。後に、ヤな刑事役の鉄矢を見て、私の理解は間違うとったと反省するんですが。鉄矢って、まったく嫌な人間やらせたら右に出るものがない名優です。勿論、黄色いハンカチの鉄矢も良かったが、あれは山田洋次がよかったんであって、鉄矢が良かったんじゃない。鉄矢はあくまでも根性ひん曲がった偽善の男だと思ってます。でも、だからこそ、役がハマった時は、無双です、
その点、「獅子の時代」の岡本信人にも通じます。嫌な人間やらしたら、鉄矢と信人にかなう役者はおりませぬ。
あ、なんの話でしたっけ。そうそう「思えば遠くに来たもんだ」。鉄矢嫌いの私が、聞いて一発でやられましたな。18で東京出てきて、知り合い一人もいなくて、アルバイトの保証人の欄にも苦労して。当時、セブンイレブンのアルバイトするのにも保証人の欄があったんですよー!
そんなこんなで、お盆に実家に帰ったら、全く合わない、他人の方がよほど仲いい、みたいな兄貴のカセットテープ見つけて、勝手に聞いたら、この曲が入ってました。実家には盆と正月だけは帰りましたけど、東京から故郷に逃げ帰ることはすまい。そう固く誓ってた自分に、この歌、なんか響きましたなぁ。6年どころか、もう何十年も故郷を後にして、もう帰る算段は無しにして、何十年も東京で過ごした私には、今でも刺さる歌詞です、今でも。
当時、18の私は東京へ行きたかったんです。何がなんでも。で、東京に出たからって、何事もできなかったんです、18の私は。とほほ、です。この曲、聞くと、あの頃の、東京に行けば何かある、何か変われる、みたいな、ただただ馬鹿な思い込みの若い青春の日々が思い出されて、泣ける歌です。ああ、馬鹿な私の青春。でも、愛しかった私の青春。