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アントレ教育交流の礎石を置く in シンガポール|2023夏シンガポール出張記

夏休み真っ盛り。8月も早くも中盤に差し掛かり,ここから出張あるいは学会報告が続くシーズンに入りました。

その第一弾として,今回は8月13日から18日にかけてシンガポールに行ってきました。今回はその出張録です。シンガポールは今年2月に訪問して以来,2回目。前回の出張録はこちらの記事になります。

今回も前回に続いてシンガポール国立大学(National University of Singapore:NUS)を訪問し,同大学の起業支援の考え方,研究との接続について学ぶ機会を得ることができました。加えて,こちらでもたびたび書いている「スプラウト」(高大連携アントレ教育プログラム)の高校生に対して実施した教育効果測定研究を報告したのも前回でした。今回はそれからブラッシュアップした分析と,こちらの共同研究者の発案で始まった「kAIware」(AIを用いたビジネスプラン作成を行うワークショップを中心にしたアントレ教育プログラム)の進捗報告を兼ねての訪問。

さらに,同大学に高速道路を挟んで隣接した起業支援施設「Block71」や,15-24歳の若者を中心にアントレ教育を行う「Reactor School」を訪問することにしています。

今回はゼミ3年生の5人とともに行った出張について,そこでの学びとそのふりかえりをまとめました。

1日目:とにかく元気な大学生は国際交流に熱心

8月13日朝。8時に福岡空港に集合し,10:50のベトナム航空ホーチミン行きで今回の旅はスタート。4年前,当時担当した大学院生と学生との研究出張は,トラブル(あとで笑い話)が続出したのに比べれば静かな滑り出し…。

この色使いは好き。

今回同行しているのは全員女子学生。これから始まるとあるプロジェクトチームのメンバーそのままであり,彼女たちはスプラウトやkAIwareプロジェクトでも中核的な役割を果たしてくれている。今回の出張の趣旨を伝え,シンガポールに行きたいと真っ先に手を挙げた学生たち。

どこにいっても元気な女子学生たち

行きは福岡からホーチミンまで4時間半のフライト。そこで2時間半の乗り継ぎ時間を経てシンガポールまで1時間半ほどで着く旅程で向かうことになった。

見るもの見るもの真新しいからか,どこに行っても好奇心が止まらない。乗り継ぎ時間でフォーをシェアしながら食べ,売店に行けばおみやげものを眺め,キャッキャ言いながら楽しそうに過ごしている。過去の出張ではどうしても男性陣が多かったこともあって,なかなか珍しい光景だ(笑)

しばしの交流

シンガポール着は19:30。そこからMRT(地下鉄)を乗り継ぎ,ラッフルズ・プレイスで下車。車内ではインド系の起業家と話が盛り上がったようで,記念写真を撮影していた。どうやら機内でもいろんな人と交流していたようで,ある学生はホーチミン→シンガポールの機内で隣の席のベトナム人と日本のアニメ話をしていたようだ。楽しそうで仕方ない。素晴らしい積極性。

とは言え,移動での疲れはあるようで,なんだかんだでホテルのチェックインは21時を回っていた。もうぐったり(笑)

2日目:いよいよNUSを訪問!

8月14日は終日NUSを訪問。前回と同様,学生向けの食堂やジム,寮などが集まるUniversity Townで待ち合わせることに。

University Townの入口で記念撮影

ここでMike先生と待ち合わせをしてランチと構内見学。ちょうど同日から新学期が始まったということもあり,構内には学生たちが溢れていた。前回は学生がこれほどでもなく,大学の学食が持つ独特の雰囲気を味わうことがなかったので新鮮であった。

ビジネススクールの入口には新しくNUSのロゴが置いてあった。

そして,今回主張のメインイベントの1つ。研究会のスタート。前回報告のアップデートと今後の研究方針(kAIwareプログラムの方向性)についての議論を行う。

分析結果を報告する私

まずは一通り,前回研究からのアップデートを報告。サンプルの特徴を削り出すためにある分析手法を使って説明。ただし,今回の報告で最も期待していた調査結果(アントレ教育を通じて上昇した自己効力感が高校生の起業家的意図に影響を与えるかどうか)については芳しい結果が得られなかった。そこで議論を重ねながら,仮説設定と他の分析手法にトライしましょうというコメントをもらえた。先行研究読み直さねば。

Mike先生からの講義

また,2023年は2つのプログラムを同時並行で進めながら,高校の協力を得て調査が実施できている旨を説明した。まだ,1校のみであるが,2023年度の調査を開始しており,kAIware,スプラウト,統制群(Control)の3つのグループの授業実施前調査を行った結果を報告し,(クラス構成の問題があるものの)若干サンプル間に特徴が見られるという話をさせてもらった。

Business Schoolの中を彩る壁画。"Innovation"

その後,しばしのディスカッション。特にkAIwareプログラムの教育効果測定においてはどのようにプログラムを運営していくべきかについて議論ができた。こうして研究会は終了した。

しかし,その後市内に戻るにも猛烈な雨が降っていて,しばらく大学内を雨に濡れないように移動。図書館にある売店でNUSグッズを購入。前回購入できなかったグッズをいくつか手に入れて私は満足(笑)

シンガポールチキンライスを食べられなかったものの,それぞれ食べたい物で舌鼓。

夕食はマクスウェル・フードセンターへ。しかし,この日はお目当てのシンガポールチキンライスのお店が月曜日休日のためおやすみ…。別日に行くことを期してこの日は解散。

3日目:アントレ教育系スタートアップ企業を訪問

8月15日は午後からNUS近くのスタートアップ企業が集積する施設を訪問することになっていたため,午前中はゆっくり目のスタート。13時前にKent Ridge駅に集合し,Reactor Schoolがかつて入居していたBlock 71にあるコワーキングスペースへ。

Block71全景

ある記事によれば,Block71にはシンガポール国立大学(NUS)などが運営する施設が入居しており,IT系を中心に250 社超のスタートアップが集積するとされている。Reactor Schoolも当初はこの中に入居していたそうだが,今では規模が拡大したことと,入居期間が5年と定められていることもあって,すでに退去しているという。

Reactors Schoolの北東アジア担当のRyanとミーティング

しかし,今回は隣接するシンガポール政府が設立した起業支援施設であるJTC Launchpad周辺も案内して頂けるということで,北東アジア担当のRyanの指示により,ここでミーティングを行った。短い時間ではあったが,私たちが今回何のためにここに来たのか,ある程度深い議論ができた。

すでに先行者として愛知県がシンガポール政府と連携した起業家支援を始めており,Block71を冠した施設を名古屋に作っていたり,某帝国大学がここにオフィスを構え,2週間の研修ツアーを組んでいたりとしている。そうした事例を参考にしながら,今後の調整を進めることに。

Block71入居企業のリスト

ミーティング後はスタートアップ支援施設を見学。残念ながら建物内部まで入ることはできなかったが,どんな政府からの支援のあり方などを中心にじっくり施設を見て回ることができた。

この周辺はもともとAyer Rajah Crescent 71にある産業地域の名前に由来していて工場が林立していたが,ここをNUSやその他のパートナーがイノベーションと起業のハブへと作り替えたという場所。福岡で言えば大名小学校のFGNのようなもの。

Launchpadについて説明をするRyanとそれを聞く学生

中には,ホーカー(屋台)を学生が運営して,その売上競争をしながら経営を学ぶプログラムがあったり(創Pやん!),choco zap的に貨物コンテナを利活用したジムのプロトタイプ施設があったりと,面白い施設も紹介してもらった。こうして約2時間程度の訪問は終了した。

マーライオン見た。お遊びも少しした。

次のスケジュールである夜の会食までは多少時間が取れたので,一旦観光をしようとマーライオン公園へ。

そして,再び地下鉄を乗り継いでニュートン・フードセンターの会食会場へ向かった。

山賀さんとの会食

今回の夕食は,ツアーに参加している女子学生が関わるプロジェクトでお世話になっている方からの紹介で,現地で事業を営むYamagen MT&T Singapore Pte Ltdの山賀さんと。祖父の代から東京で事業を営み,父親がシンガポールで創業。その事業を引き継ぎながらも,時代に合わせて新規事業を展開する経営者。

ここで経営者としての話を伺うとともに,進路を考え始める3年生らしく,いかにしてキャリアを築いていくかの話に。18時にスタートした会食は盛り上がって帰る頃には22時になっていた。

4日目:海外で企業人として働く先人と出会う

実質的最終日の8月16日。この日もゆっくり目の活動でスタート。昼食にシンガポールに展開する一風堂を訪問。海外のラーメンは高い高いと聞いてはいたが,果たしてどんな感じなのだろうか。

定番の白丸元味が17シンガポールドル程度と,感覚的には日本の倍。ここで私は小ラーメンと唐揚げ,ドリンクのセットを注文。16.80ドルだった。まだ出国から4日しか経っていないが,そろそろ日本の味が恋しくなる頃。あっという間に食べ終わった。

働く女性としてのロールモデルに話を伺う

食事後,学生たちは今回対応してくださった戸田さんの話をしばし伺う。北九州の公立大学で中国語を学び,それを使える仕事として一風堂の運営会社である力の源カンパニーに入社。新型コロナウィルスの影響などで不便な時期はあったが,現在はシンガポールを管轄する立場として充実して仕事に取り組まれているとのこと。

ここで公式行事はほぼ終了したので,学生とは明日(最終日)に搭乗口で会うことにして,ホテルでの仕事に取り組みつつ,少しだけ観光に出かけた。前回2月は繁忙期の中,無理やり来たこともあってマーライオン以外見ることはできなかったが,今回ようやくガーデンズ・バイ・ザ・ベイを訪問。到着時にちょうどショーが始まったのもあり,壮観なショーを見学することに。

ショーが始まる直前のガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

約15分のショーを見るために多くの人が集まり,園内は人混みで溢れかえりそうになっている。中には黒天の空を見上げるように地べたに寝転がり,真上で光る「スーパーツリー・グローブ」を見ようとする人たちも。こうした人工庭園を無料で訪問し,多くの人を引き付ける仕掛けを作れるのだから,人間の力は偉大である。

最終日:再会と日本食バンザイ

8月17日。あっという間に最終日。

この日の夕方に帰国の途につくことにあり,近くのホンリム・フードセンターで朝食の後,パッキングをしてホテルを出発。1時間ほど地下鉄に乗車して,シンガポール・チャンギ国際空港に到着した。

Jewelの滝は壮観

ここで前回見られなかった「ジュエル」を見に。空港内に設置された人工庭園で,周辺にはショッピングモールがある。そして,建物中心には巨大な滝が設置されていて,轟音を立てて水が落ちてくる。日本ではお目にかかれない人工物だ。

その後,香港に本店を持つ添好運(ティム・ホー・ワン)で今回最後の昼食を取り,15:50に中継地ハノイに向けて出発。行きのホーチミンはベトナム南部にあることもありシンガポールまでは近かったが,今度のハノイは福岡までちょうど中間のイメージ。3時間半ほどのフライトでハノイに到着した。

ここでトランジットのため担当していた空港職員に質問。

「向こうに教え子がいるんだけど,一時入国ってできるもの?」

今回のトランジットは6時間半あったため,もし可能であればかつて大学院ゼミを担当し,新型コロナウィルスの間に帰国したホァンくんと会う約束をしていた。しかし,ネットに一時入国の情報は出ていない。入国審査官の判断に委ねるしか無いという記述もあったので,恐る恐るパスポートコントロールに向かった。

するとなんてことはない。入国があっさりと認められた。

大学院ゼミOBのホァンくん(左)

ハノイ市内に住む彼だが,在宅勤務のため,仕事はどこでもできると少し早めに空港に来てくれていたそうだ。私は彼と研究会のためオンライン上で2週に1回ほどのペースで会っているが,対面で会うとまたちょっと違う。

仕事をし始めると男は太るのだろうか,少しふくよかになった彼と夕食と歓談。日系企業に勤めており,ソフトウェア開発の計画を顧客と調整しながら作成している仕事に就いているのだそう。

しばしの再会を楽しんで,すぐに出国。そして,出発までの時間を過ごして1:30(日本時間3:30)に出発。日本には翌朝7:30頃に到着した。

出国するとそこに待ち受けていたのはテレビ局の取材。学生がバッタリそれに出会って,取材を受けることに。そして,今後のスケジュール確認をして解散した。

帰宅後はランチに近所のお寿司を頂いた。これで1,000円を切るコスパ。シンガポールで物価の高さに目をくるくるさせていたことを思えば,日本は食べ物が美味しいし,安すぎる…。これで生活ができていることが不思議なくらいだ。

お昼は近くの寿司屋で。

なお,空港で取材を受けた学生たち。ちゃんとテレビに出演しておられました。

旅の続きはまだ:帰国から大分へ

しかし,私はこれを見ることはできませんでした。なぜなら,昼食後,私は大分県豊後大野市での講演会でお話をすることになっていたからです。

5月以来のcocomio

目的地は豊後大野市関係人口交流拠点施設cocomio。ここで「cocomioローカルビジネススクール」での講演会を依頼され,14時のソニックに乗車し,小倉駅での方向転換に気づくことなく爆睡。大分駅到着後,レンタカーで現地に向かい,先程講演会を終えた。

世界トップを競う大学であり,起業支援を行う都市への出張のあと,山間部にある小さな街でローカルを対象とした起業支援の話をする私。そのギャップが無いと言えば嘘になる。

が,ビジネスを興す目的,それを通じて何を成し遂げるのか,自分はどうやって生きていくのかを考えるのに優劣はないし,本当に一生懸命話を聞いてくださった。この街で長く事業を営む人,移住してライターをしながら食事を販売する複業を積極的に行う人,地域おこし協力隊として将来的な起業を見据えている人,さまざまな立場の人がいる。ポジティブでとても良い空気が流れていたような気がする。良い時間を過ごすことができました。

それをさらに彩ったのが,そのお弁当でした。

地元の食材を使ったお弁当とスープ。夕食に頂きました。

目まぐるしく変わる自分の周囲の環境に頭が追いついていないですが,この1週間はとても濃厚な時間に。明日は久しぶりに佐伯を訪問して,昨年の創Pのお礼をお伝えしつつ,新しい展開が始まっている船頭町の様子をのぞいてくる。

いやー,疲れた。が,心地が良い。残っている仕事がたんまり。でも,今日はもうまぶたが重い。そろそろ寝よう。おやすみなさい。

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