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世界はどんどんアップデートされていくところで私は一体何をしている|2023シンガポール国立大学視察記②

読者の皆さん(って誰も読まないnoteなんですが),ご無沙汰しております。新年度が始まって1ヶ月半が経過していますが,この間,その対応やら,新ゼミ生の面談やら,大型連休での家族サービスやらで何もかもが滞っておりました。

もうシンガポールに行ってから約3ヶ月が経過しようとしていますが,他のSNSで投稿した記事などを参考にしながら,今回は2月の出張記事の更新進めていくことにします。

なお,シンガポール出張の記録前半はこちらから。

ぜひ合わせてご一読ください!

2日目:シンガポール国立大学で各所を訪問

爆速成長スタートアップのオフィスを見学する:Shopeeを訪ねて

この日はNUS(シンガポール国立大学)の横にある東南アジア最大のネットショップサイトの運営会社「Shopee」の本社訪問からスタート。

Shopeeとは名前を聞いたことはあるけれども,日本では楽天,Amazon Japanがすでに市場を支配している感があって,ここにどう食い込んでいくのかが非常に気になったところ。今回はあくまでもオフィスの見学がメインだったので,戦略的な話を聞くことはできなかったのが残念。

オフィス入口にて記念写真撮影

それでもさまざまな国籍の社員がより良く働くためにフラットな組織形態、コミュニケーションを円滑にするための施設の工夫など、いろいろとお話を伺いました。まだ2月だったこともあってか,社内はほとんどのメンバーがリモートワークをしていることもあってガラガラ。そういう状況でいかに組織成員を惹きつけるマネジメントを行っているのかという観点で興味津々。

Shopeeの価値定義(Value)

エクスキューズだろうが,「もし研究で聞きたいことがあったら,いつでも質問どうぞ!」なんて言われたので,爆速成長ユニコーン企業がどうやって成長してきたのか,そのマネジメントシステムはいかなるものなのかをいつか尋ねてみたい。

世界トップ大学の起業家支援プログラム:GRIPの展開

午後からはNUSのインキュベーション施設「NUS Enterprise」を訪問し、GRIPプログラム(https://nus.edu.sg/grip/)についてご教示頂く時間に。

NUSのスタートアップ支援は20年前からスタート。すでに950社以上の起業を支援した実績がある。

その中で,現在の代表的な支援プログラムであるGRIPは2021年からスタート。まず3ヶ月でプロトタイプの作成までブラッシュアップし、一定のレベルに達したグループには500万円(5,000シンガポールドルの資金とハンズオン、大学からの出資までを行うもの)。すでに8回のプログラムが回っていて、40チームの支援が実施されたのだそう。

アクセラレーションプログラムGRIPのこれまでのポートフォリオ

今でこそ華々しい活動だが、当初は相当に苦労したそうだ。世界的なネットワークを使いながらタレントの発掘、ロールモデルの誕生、保守的な思考から許容可能なリスクを取れるようなマインドセットの切り替えと話を聞く限りではよく聞く支援。が、それを土台から作ったからこそ言えるわけで、NUSで20年なら…。ふぅ…。教員も院生・学生も限られた時間を費やして、自らの技術を事業化し、実装して、社会をより良い方向にプッシュしようとしている。経済的に豊かな国なのにこうも違うのか。

NUSの支援プログラムは世界各地に展開。日本では愛知県主導で名古屋に誘致。

ここ数年で愛知県との関係が深くなり、NUSは名古屋にインキュベーション施設を作るのだそう。いやはや。

ただし,ここでの支援対象もやはり技術系のスタートアップがメインなわけで、具体的に社会実装する技術的なバックグラウンドがあるかないかは非常に大きいという当たり前のことに改めて気付かされる。

GRIPでのミーティング

昨日のビジネススクールでのコメントもそうだったが、スタートアップ=最新技術との親和性が重要という意識が相当に強い。当たり前っちゃ当たり前なんだけれども、自分の問題意識とその当事者を見ている限りでは相当な距離があるようにも思う。ここどうやって埋め合わせていけば良いのだろうか。

もちろん,NUSがシンガポールだけでなく,世界のトップ大学であり,まさにシンガポールが国家として進みたい方向を科学的に支援する,成果を得ることを要求されている大学でもある。だからこそ,最新テクノロジー云々に関わらず,シンガポールが抱える国内事情,対外的な関係の中で戦略的に研究が位置付けられざるを得ないという側面もあるようだ。

ミーティング終了後はチャイナタウンを散策

ミーティング終了後はホーカーズで念願のシンガポールチキンライスを夕飯に。現在こちらに研究訪問されている理学部の先生(今回は何から何までありがとうございました!)と同行しているゼミ生3人で。いろんなことを語りながら未来の展望やシンガポールから見える今の世界事情についてディスカッション。

ホーカーズで念願のシンガポールチキンライス!

3日目:シンガポールの文化に触れる

シンガポール在住の友人パトリックとの街歩き

3日目。2月22日夜にシンガポールに到着し,翌日からNUSを訪問してきた。そして,この日が実質最終日の滞在(到着は26日早朝のため)。

この日の午前中はシンガポール在住の友人,パトリックと再び合流して、シンガポールで食べられる地域の食べ物ということでHeap Seng Leongに。

ローカルの喫茶店でコピとサンドウィッチの朝食

ここではシンガポールのローカルフードであるコピ(コンデンスミルクを入れた甘いコーヒー)とカヤトースト(ココナッツミルクを使ったジャムを挟んだサンドウィッチ)を頂く。シンガポール・ローカルの人たちがどのような食べ物を食べているのか,とても興味津々だったが,周りにいるのは観光客と思しき欧州人,韓国人,そして私,日本人。美味しいものにはどこでも人が集まるのですね(笑)

その後,オーチャードロード周辺を散策。デパートが立ち並ぶ目抜き通りを男2人でふらふらと。彼曰く「日本にあるものと同じでしょ」と。確かに。

オーチャードロードでアイスクリームを食べたくなったパトリック

ランチを食べようと入ったショッピングモールのビルには日系のお店が結構入っていて、日本人を多く見かけた。聞けば近くは日系企業に駐在員が多く住む場所だそうで、こんな企業もテナントとして入っていた。

シンガポールにある福岡の有名塾には子どもを出待ちする親がたくさん。

確かにここに駐在できるような日本人であれば、いわゆる一流企業に勤めているだろうし、帰国後子どもをどういう学校に進学させるかは重要なテーマだと言えよう。日本人学校に行っていても、中学受験をさせるような親であれば、子を学ばせるのにこうした塾は必要不可欠なのはわかる。

そういえば、シンガポールに行く機内でこれ読んでたんだ。日本以上に教育熱が高いシンガポールの親は子の教育をどう考えているのか。それを日本人からどう捉えたら良いのかと。ちょうど娘氏の小学校受験の結果が出てからのことだったし、今後のことを考えてちょっと憂鬱な気分にもなった。

ランチは初体験のマレー料理。これだけ盛り付けられて1,000円(10シンガポールドル)は安い。

そんなことはさておき、パトリックが連れてきてくれたマレー料理の店へ。初体験のマレー料理。何をどう頼んで良いのかよく分からずにプレートを注文したのだが、これが大正解だった。基本はスパイス料理なのだけれども、タイ風とも、中華風とも、インド風とも言えそうな複雑味のある味わいで、大変美味しく頂きました。これは間違いなくリピートしたい。

投資ファンド氏との対面

昼食後、再びNUS近くへ向かうため、バスでシンガポール西部へ。パトリックの家と方向が一緒だったので、バスに乗って向かう。パトリックは途中で降りて、しばしの別れ。

午後からは、コロナ中に多くのスタートアップ企業の経理・財務担当者をご紹介頂いた某投資ファンドに在籍する投資ファンド氏にお会いしてミーティング。

待ち合わせたショッピングモールには公文の塾が

投資ファンド氏との出会いは2021年春に上梓した『経営管理システムをデザインする』を通じて。その時の様子はこちらの記事に残しています。

以来、その投資ファンドのCEOが福岡に在住であること、そしてその投資ファンドが九州大学の起業家教育を担うQRECと深い関係にあることなどというご縁もあって、投資ファンド氏が福岡に来る時に会ったり、投資先企業へのインタビュー調査が続いていたりと、ありがたいご縁を頂いている。

今回はゼミ生がインターンでお世話になったお礼と今後の展開について諸々ディスカッション。たまたま今回のツアーに同行していたゼミ生もインターンとしてお世話になっていたこともあり、同席して色々な話をした。

投資ファンド氏はこのコロナ禍の間にさまざまな大学の無料コンテンツを視聴しまくったそうで、ちょっと環境を扱うビジネスやってみたいということでオランダ移住を決意。アムステルダムに初任地大学の教え子が住んでいることから彼を紹介してみたりしながら、互いに近況報告。優秀な人は考えることがデカい。

さらに、NUSに何しに来たのって話になったので、先のプレゼンテーションの話をしたところ、その投資ファンドの投資先でもあるスタートアップ企業「Reactor School」をご紹介頂いた。

サイトを見る限り、指向している方向はよく似ていて、それを事業として行うか、教育中心に行うかという立ち位置の違いはあるかもしれない。が、こうしたディスカッションをしていく中で視点、アプローチ、機会の認識は間違えていない。そんなことを確認できた時間になった。

シンガポールツアーのふりかえり:研究がさらに進む?

すでにシンガポール出張から3ヶ月が経過しており、今さらふりかえりというのはさすがに厳しいが、帰国後ちょっとした動きがあるので紹介しておこう。

この前編ではNUSのビジネススクールにおいて、高大連携アントレ教育プログラム『スプラウト』の教育効果測定についてプレゼンしたと述べたが、これがなんと面白かったようで先方から共同研究のオファーを頂いている。ただし、実践機会をレモネードスタンド(お店の経営)ではなく、Chat-GPTのような対話型AIを用いて実施した場合に高校生はどのような教育効果を得るのかという視点ではどうだろうかと。

これはなるほど面白い。この話をもらってから『スプラウト』にご協力頂いているいくつかの高校に協力打診を行い、この夏の授業から一部の高校でこれを実施する方向で調整を進めている。と同時に、5回の教育カリキュラムを設計しなければいけないのだが、それこそChat-GPTからは次のようなカリキュラム案が提示された(笑)

このままやるつもりはないけど、外してもない。

また、別の研究者とは、このAIを使ったプログラムの間に高校生たちはどんなコミュニケーションを取り、どんな学び方をしていくのかを調査してみたいという研究アイデアも出てきた。

何はともあれ,このシンガポール出張は2023年度の私の活動を形作るであろう重要な機会になった。あれからまもなく3ヶ月が経過するが,この直後にイタリアへ出張,Babson CollegeのFDプログラムの受講,プライベートでも仕事でも卒業式,入学式と続き,あっという間に連休。そして,今を迎えてしまっている。この間に少しだけでも進めようと,2022年調査結果を論文にしようと取りまとめてはいるが,なかなか進まない。

が,とにかく書くのだ。書くしかない。書いた先に次の研究につながるのだ。そういう意味で,今日このタイミングでこの記事を書いたのは,きっと何かの導きであるに違いない(笑)。

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