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授業の満足ってどうすれば得られる?|2023スプラウト&kAIware 福岡女子商業高校③

10月も中盤に差し掛かってきました。

専門ゼミの活動的には「創業体験プログラム(創P)」と呼ばれている模擬店を擬似会社組織に見立てて会社経営を学ぶプログラムであったり、4年生はもちろん卒論執筆と忙しい時期に突入します。

しかも、福岡女子商業高校(女子商)の今回の授業は翌日に柳川で行うイベント出店の前日ということもあり、学生は出店準備に授業準備にと大忙しであるに違いありません。そんな中でも決めたスケジュールでそれぞれのプロジェクトをやり切る。ここが勝負どころかもしれません。

さて、女子商と言えば、校長が30歳代と若く、積極的な改革で知られている学校ですが、1ヶ月ぶりに学校に行くと「生徒ともに学校を作っていく」という姿勢が垣間見える掲示がありました。

生徒全体に行われたアンケート

また1年生の教室前にはたくさんの張り紙が。担任のあり方をどうしていくか、生徒それぞれの反対賛成の意見が貼ってありました。

どんな形にせよ自らの意見を発揮することは大事だね

こういうところに学校の変化を感じつつ、女子商でのスプラウト&kAIwareの授業は第3回を迎えます。授業は中盤に差し掛かり、今回もワーク中心の授業となっていきます。

果たしてどんな雰囲気で進んだのでしょうか?これまでの女子商の授業の様子は下記のマガジンをご覧ください。

あなたは誰?私は誰?:組織と個人の関係を学ぶスプラウトの講義

まずスプラウトから。アントレプレナーシップ教育を行うスプラウトは1年生の進学クラス、3年生の2-4組の合計5クラスで実施されている。時期的なものもあるだろうが、回を追うごとに授業は安定的に実施できるようになってきた。ここまで各地で授業を展開してきたこともあって、聞く人が誰かによって授業構成を少しずついじるということが当たり前にできるようになってきた。

活発な1-1のみなさん

現在の女子商は認知能力もさることながら、非認知能力を伸ばす方向に舵を切っており、アントレ教育とは親和性が高い。が、一方でスプラウトの授業では知識をしっかりと押さえながら、それを日々の生活にどう生かすかを意識した授業設計にしている。結局は認知能力を同時にどう伸ばしていくかも大事だと。

生徒が輪を作って学生が中入るスタイルの1-2

とりわけ授業そのものの密度を上げていくために、ここではずっと反転授業を導入してきた。つまり、事前にある程度予習として授業内容をインプットし、それをベースに授業を進めていくというものだ。

進路選択が迫ってきた3年生。こちらは2組。

しかし、この視聴率が悪い。というか、課題が実施されていない。直接学生がグループなどで投げかけているにも関わらず。そして、そのことに悪びれる様子もない。正直、ここは(授業をリードする学生に申し訳ないので)しっかりと取り組んで欲しくところだし、それあっての授業だからこそ、授業時間前にしっかりと取り組んでもらいたいところ。先生方、おなしゃす!

こちらは3-3。

さて、今回の授業はDISC分析と組織、そしてリーダーシップを学ぶ回。構造が(高校生にとっては)複雑な場面。まずDISC分析で自らの志向性を知り、ついで組織とは何かを学び(共通目的・コミュニケーション・協働)、(普段組織的な活動を明確に意識していない)高校生に自分の志向性をもとに属する組織やマルシェでの自分の仕事の進め方を考える。そこには下級生を導くリーダーシップもあってねみたいなてんこ盛りの内容だ。

3-4の様子。

まず引っかかるのはDISC分析の問いの言葉がわからないという問題。これはどうしても出てくる。ここで適当に回答すると自分が感じているそれとは異なる答えが出てくるのでモヤモヤした感じになる。まさに今回もそうしたクラスが出てきたようだ。クラスによっては用語集を作って対応している場合もあったようだが、これでは授業を行う方もしんどい展開になる。事前動画と踏まえてグダグダになるのは想定外だし、わからない言葉があるなら調べて欲しいなぁということもあり…。難しいものです。

結果、自分に置き換えて組織やチームでどう力を発揮するかというワークもなかなか難しいものになっていく。クラス内で理解度もバラツキがで始めてしまうのも仕方がないのかもしれない。こうしたことを除けば90分の授業は大きな問題を抱えることなく終了した模様。ようやく学生と高校生の息が合ってきたということだろうか。さて学生のふりかえりはいかに。

タスクとスキルと限られた時間との狭間で:バリュープロポジションを作るkAIwareの講義

一方、生成型AIを活用してビジネスプランを作るをテーマにしたkAIware(カイワレ)はどのような状況だったのでしょうか。

今年度kAIwareプログラムの対象クラスは3つ。3年生唯一の進学クラス3-1と、2年生の進学クラス2クラスだ。今年度から始まったカリキュラムということもあり、試行錯誤の連続。しかも、授業設計者が途中で離脱するというアクシデントもあった中で多少不安の残る状況での授業。が、ここではそれぞれのクラス担当を中心に踏ん張りが見えた回になった。

トラブル続きで進捗進まぬ3-1

3-1はここまで生成型AIに関わるトラブル続きもあって、授業進捗が遅れていた。前回まで作成終了予定だったペルソナ作りまでいかず、この直前に事後復習課題として「インタビュー調査の練習」を出していた。つまり、ペルソナ=自分たちのサービスの顧客像を作るためにはインタビュー調査を丹念に行う必要があるからだ。ただし、闇雲にやるのではなく、聞くべきことを聞きつつ、その内容からその人や製品・サービスについて「あなただけが知っている真実」を掘り出すことを目指して行うものだ。

が、これが簡単には進まない。高校生から出てきた課題を深掘りしようにも、なかなか深くまで進まない。ここはゼミでのプロジェクトを同時並行で進めている中での調査手法がどれだけ腑に落ちてるかもあるだろうが、それを簡単に自分のものにして教えることはできない。結果、それなりのペルソナはできあがるが、なんかモヤモヤの残る展開。ここで得た結果を生成型AIに放り込んだところで、そこで出てくる課題解決やバリュー・プロポジション・キャンバス(VPC)をどう読み取れるか。やはりここでも「読解力」であったり、生成型AIを活用するための基礎的学力の問題が出てくる。

トラブル発生!2-2。

また、2年生はインターネット環境のこともあって教室を移動しての授業。学生の持ち込みPCによるのでスライド画像がなかなか映写されないというトラブルに10分ほど巻き込まれ、授業のスタートが遅れる。が、今やそれくらいのトラブルでは引かないゼミ生。顔色ひとつ変えずに淡々と授業再開。

グループごとのテーマ

2年生でもこの時間帯のテーマは内容深掘り→ペルソナ設定→VPCの策定という当初予定の内容が組まれている。上の画像のようにある程度テーマが決まれば、今度はVPCの作成に進む。ここで生成型AIのご登場をお願いする。

今回のワーク課題。

ここからの展開がこの授業の肝だと言える。いかなる問いを入れれば、適切な答えが導けるか。その答えをいかに汲み取るか(取捨選択するか)でそのあとのプロセスが変わる。そして、学生からすれば、ここから先は予定調和のない、不確実性の高い状況に進んでいくということだ。

高校生にせよ、大学生にせよ生成型AIを使用する際に痞えるのは「どんな問いを立てれば良い?」という問いの力の部分だ。問題に答えることが勉強だとしか定義していなければこのワークはしんどい。で、やっぱり案の定ここで痞える。

穏やかに議論が進む2-1のグループワーク

あるいはVPCの顧客側のニーズ部分についてはペルソナを議論していく過程の中である程度顧客像が見えてきたので埋めやすい一方で、それに対するソリューション部分はなかなか埋められないという意見が多く出てきたようだ。

これに加えて、生成型AIを使わずに自分たちで議論を進めた方が早いというグループも出てきたという。先の問いが立てられないことだけが問題ではなく、生成型AIから出された回答の吟味ができないことから起きる問題のようだ。つまり、読んでわかった内容だけを取り上げ、わからない内容については忌避してしまうという姿勢。それは取捨選択か。それでもOKとするのか。自分たちがわかっていない情報とどう向き合うべきか。解に辿り着くのは自分が知っていることから構成していくのも1つのやり方だろうが、それでは「イノベーティブな新しいアイデア」は出てこない。思いつきの根拠のないアイデアしか出ない。それもまた大事なのだが、高校生からすれば聞かなくても自分たちで考えたほうが早いということなのだろうが、果たしてそれで何が得られるかという問題。

3-1のワーク終盤戦。

高校生自身で議論しようというのだから、それはそれで歓迎するべきだろう。が、生成型AIに問いを立てるのは、その問いの立て方を学ぶだけでなく、出てきた回答から視点を広げることでもある。Web検索とは異なり、自分が知っている事柄だけをもとに新たな知を得るばかりか、知らなかったことを教えてくれるという知の拡張ができる。そのメリットを高校生に感じさせるところまで引っ張れるか。大学生の力量が試されることになりそうだ。

授業は残すところ実質1回。ソリューションが出てこなければビジネスプランは形にならない。果たして次回はどのような方針で進めるか。判断が難しいところだ。

おわりに

スプラウトも3回目となり、講師役の学生と授業を受ける生徒との間の関係性は徐々に築けてきているように見える。未だスイッチが切り替わらない生徒もいるにはいるが、授業が始まればやがて落ち着くようにはなった。

ふりかえりの様子

ここまでくれば学生に求めるのは、「満足度」をどこに求め、どう図るかという問いへの回答をどう測るかである。そもそも誰のための「満足度」なのだろうか。

次回の授業では満足度を講師役の学生で設定できるように、個々のクラスの状況にフィットした内容にできるかがポイントだよねと。

自分たちで授業をコントロールすることだけで精一杯だったフェーズから改めなきゃいけないし、そもそも自分らの満足だけで授業は成立しない。はたまた高校生の満足度といっても、聞いてればいいのかと言えばそうでもないし、「わかる」という状況がそもそもどういう状況なのかというのもある。

で、これは商売も一緒だよねという話。経営理念→戦略→計画と来てって話をするけれども、それは顧客のため?、自分のため?、誰のため?はたまたそういう○○のためってのが、そもそも時代錯誤?

だから学生に問うてみた。この授業の先に何が見えたらいいのだろうかって。

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