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工業高校生が手作り製品を売って学んだこと|2022博多工業高校×とびゼミコラボ授業⑦

12/3-4に行われた「女子商マルシェ」から約1週間。ほんと師走は日々が流れるのが早いですね。あっという間に新年になりそう。

高大連携の教育プログラムも終盤戦に差し掛かり始めています。ここでも紹介してきたように、飯塚高校、福岡女子商業高校、上智福岡高校と博多工業高校とこの2週間で一気に4つの高校で販売実践が終わりました。

また、残りの壱岐商業高校も今週末の12/11(日)には壱岐・勝本浦でのマルシェで終わり。あとはふりかえりをして、どのような学びを得ることができたのかを言葉にしていくプロセスを残すのみとなりました。

高校生がデザインの基礎をやって、勝本まち協のSさんがポスターに仕上げてくださいました。

正直それぞれの高校のプログラムが終わっていくのは寂しい気もします。プログラムの準備は学生にとってメチャクチャ負担になっているでしょうが、それを受けての授業での生徒の反応があれば嬉しいし、思い通りに行かねば悔しいし。そういうやりとりの中で大学生も高校生も互いに学び合う環境が創れているのだとすれば、それはとても喜ばしいことのように思います。

ポエム的な話は置いておいて、今回は(本来であれば最終回の)博多工業高校での第5回講義での様子をお伝えします。

これまで、同校の「インテリア科ビジュアルデザインパート」の皆さんと一緒に約4ヶ月間に『メメント森』ブランドの構築、商品化案をともに練り上げ、(恐らく初めて)自分たちが企画・製造した製品を販売することになりました。第5回はふりかえりとして、女子商マルシェでの販売実践で得た学び、頂いたお客様の声や反応を起点に改めて企画書を作ろうという授業を行いました。

果たしてどんな授業になったのでしょうか。なお、これまでの博多工業高校での授業の様子は下記のマガジンをご覧ください。

販売実践で得られたお客様の声から得た学び

女子商マルシェから数日が経過。博多工業高校インテリア科ビジュアルデザインパートの生徒6人はいつもと変わらない様子で教室に集まる。

今回の授業は実質的には最終回。製品を作って終わるのではなく、お客様の声を聞いてさらにブラッシュアップするにはどうすればいいか。担当の先生が「アートは表現だけど、デザインには意味がなきゃいけない」とおっしゃる通りで、自分たちが企画した製品がどれだけ受け入れられるか、それに当初考えていたメッセージを載せて伝えられたのか。そして、その価値を感じて頂ける価格でお客様は納得しているのか。

「作って売る」実践を行っている学校は多々あれど、モノづくりを学ぶ工業高校でそれをしたらどうなるのか。今日は高校生主導で当日販売に立った4人の生徒の声を拾いつつ、メンバー6人でのふりかえりを始めた。

メメント森。企画商品の1つ一輪挿し。

すると,彼・彼女たちの瑞々しい記憶が蘇ってくる。

製品そのもののこと,製品にまつわるストーリーのこと,女子商での販売イベントなのに博多工業が出店している理由,デザインやアイデアのこと…。

あるいは,これまでの授業で考えてきたペルソナと実際に購入したお客様とが一致しているのか。していないのか。当初予定していた価格より下げたから売れたのか,それとも当初予定価格でも良かったのかどうか。

試作品(10月撮影)

今回の製品は油山から切り出した檜を使ったけれども,色目からすれば「もう少し濃い色のほうが良いね」という声もあったそうだ。また,丁寧に作られた試作品を見て「これが欲しい!ないの?」という声も。お客様の声を聞いたから論点がいくらでも出てくる。

今回作った製品が売れたのは良かったけど,まだまだ課題はたくさんあるというポジティブな印象を持って,販売実践を終えることができたようだ。

次へ、後輩へいかにつなぐ?

今回、このプロジェクトに取り組んでいたのは3年生。日々、卒業が近づいてきている。そうした中でも「メメント森」には引き合いが来ていて、年明けには新たな企画が立ち上がるかもしれないという。しかし、今は2月に行われる卒業制作展に向けた準備もあるし、このプロジェクトだけに注力することはできない。

また、ロゴを商標登録し、油山を舞台にした活動を継続していくことを考えるのだとしたら、現3年生が培った知識やノウハウをうまく後輩たちに移転していく仕組みづくりも準備しておかねばならない。売っておしまい、学んでおしまいではなく、この学びを次世代に引き継ぎ、どうブラッシュアップさせていくかが大きな課題になっている。

学生によるこれまでの授業の復習

そこでふりかえりのあとはこれまでの授業で話してきた内容を総復習し、課題の抽出をしながら、商品企画案を練り直すワークを行うことにした。

「できた=できない/意図した=意図してない」ワーク

課題抽出はゼミ生にとっては毎度お馴染みの「できた=できない/意図した=意図してない」ワークを使って行われた。

プロジェクトスタートからここまで、自分たちの活動を振り返って「できた、できない」だけでなく、その結果は「意図したものか、意図していないものか」に分けることで、その精度を確認する。特に「意図していない」偶然性をどう理解するかが重要で、計画がある、そもそも意図があることが柱としてあるから偶然をうまく活用できるという感覚を養うことを狙っている。偶然を必然にと言えば良いだろうか。

ただ、実際に事業化するには製品ラインナップ、生産数量の確保、人員確保、洗練されたデザインなど、課題が多いのも確か。それもお客様の声を聞いたから実感として理解できるようになった部分でもあり、マルシェでの販売体験がポジティブに影響したとも言えそうだ。

この点、彼・彼女たちは筋が良くて、先に行ったふりかえりから得た自分たちがやってきたこと、お客様の反応をまとめていた。

「メメント森」の商品企画書

そうして小1時間。生徒同士が学生のサポートを受けながらできがった商品企画書がこちら。ターゲットや競合も改めて設定し直して、とりあえず今回販売した製品をベースにこの学年が作り上げた商品企画が形になった瞬間だった。

商品企画をプレゼン

そして、最後に高校生から企画書のプレゼンが行われ、今回の授業は終了した。これで次に、未来につなぐために必要だった現高校3年生のプロジェクトが紙(言葉であり、絵として)に残されることになった。

「メメント森」プロジェクトの第1期はこうしてゴールが見えた…???

ふりかえり

この「メメント森」プロジェクトは、実際に製品を企画して作って販売するという一連のプロセスを構築する中で、実際に手を動かせる、モノを作れる高校生たちにビジネスの視点を教えることで「価値を生み出す」過程を学んでもらおうという位置付けでスタートした。

会計の強みは貨幣的価値で事業活動を測定し、生み出した「付加価値」をいかに分配するかを表現できることにある。つまり、事前の計画と事後の評価を行うことには強い。しかし、そもそもの計画も貨幣的価値に表現できる段階まで表現可能になって初めて機能するもので、計画以前の段階で会計が直接機能を果たすことは稀だといえよう。ただ、会計がなければ事業性を評価することも難しく、どこまでリアリティを追求するかが難しい。

今回はプロジェクトをサポートしてくださる先生が「デザイン」を考えておられ、課題解決と存続可能性を高めることを理解してくださる方だったということも大きい。実際、授業を進める中で「生徒にどうやって顧客の存在を理解してもらえるように導くかを苦労している」というお話もあった。生徒が学んだモノづくりを技術として終わらせず、社会的に一定の影響力を出せるようなプロジェクトにするにはどうするか、限られた時間の中で議論をしながら進めてきた。

わたしたちは会計をベースに付加価値の最大化を、高校生は価値を生み出せる技術をベースに、マーケティングという互いが必ずしも深く理解しているわけではない領域を学ぶという試みだったとも言えよう。

その過程の中で、先生がゼミ生の中学時代の部活の顧問だったということで距離感がさらに縮まり、学生が先生が悩んでおられたペルソナ設定の授業に一定の解を提供するような形になったりと、良い方向に授業が進んでいったという幸運もあった。

この機会で得たことが彼・彼女たちに何をもたらすのか。それは遠い未来に答えが出ることになるが、この経験がその未来の一部を構成するものになれば望外の喜びだ。

と終わるかと思ったら、もう1回授業が加わることになりました!次回は1月!(なんだそれ)

余談

女子商マルシェにくっついてた娘氏。カッティングボードを見て「何に使うの?」としきりに聞いてくるので「そうだね、お寿司乗せようか?」と聞くとノリノリになっていた。先日たまたまそのタイミングが来たので、お寿司をこれで出してみた。

カッティングボードにお寿司(笑)

そしたら、もう大喜び。おかずももりもり食べて大満足だったようです。木の香りも彼女にとっては満足ポイントだったようで、花といい、檜といい、高校生のおかげで我が家のQOLは爆上がりです。ほんと周りに支えられております。ありがとうございます。

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